入れ替わるようになりまして。

天野 奏

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亜貴が幸せになりますように

3

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二階の応援席に着くと、どのコートも大盛り上がりだった。
なお一層大きな声援が聞こえて来たのは、3つあるうちの真ん中のコート…
亜貴たちが試合をしているコートだった。

確か、相手は……今年の優勝候補……!

席に到着すると、相手の大声援に負けじと声を張り上げる、数人の1年生たち。
試合の状況が気になって、誰に聞くわけでもなくコートを覗いた。

亜貴……!

不思議と、点数よりも先に、亜貴の姿はすぐ目に入った。
そして、違和感を覚えた。

あれ…膝にサポーターなんて、付けてたっけ?

今日の亜貴は、両膝に黒いサポーターをつけている。
練習の間も付けてはいなかったのに……大会用なのだろうか?
最近の亜貴のことは知らない。
だから、サポーターについても聞いてない。
スゴく、もどかしく感じた。

「行け~!京野ー!」
「亜貴先輩ー!!」

亜貴は素早いドリブルでコートを駆け抜ける。
何度もパスカットしては、試合の流れを変えた。

凄い。
勢いが、違う。
いつにも増して、コートを駆け回っている。
むしろ、無理している……?

そう思った時だった。

ビーッ。

相手のファールで、亜貴は倒れた。

「っ!」
「うわー…結構勢い良くぶつけたよねぇ」
「相手も、それだけ必死なんでしょ」
「京野の独走止まらないしね、点差もさほど無いし…」

女子達の声が耳に入ってくる。
でも、オレには…今のは亜貴が自分で転んだようにも見えた。
ぶつかる直前、ガクッと崩れたような……。

「でも、さっきからこの調子なんスよ」
「え?」

隣にいた男子の1年生が、深刻な顔でコートを見つめる。

「なんか、第1クオーターでファールされた時も、かなり勢い良く倒れて…そっからずっと出っぱなしなんスけど、何度か転んだりもしてて……」
「……亜貴が……」

あの長身で、無駄が無く隙のない、亜貴が…?

「この試合、勝てるんすかね!?
亜貴先輩、どこか悪いんですかね!?」

眉間にシワを寄せて、不安げに顔を向ける1年に、すぐには答えられなかった。

亜貴が……おかしい?

ビーッ!

またブザーが鳴る。
顧問に呼ばれて、亜貴がベンチへ戻っていった。

「えぇ!?亜貴先輩戻されたのー!?」
「このタイミングって…超ヤバイんじゃない!?」

後輩達の焦り声が後ろから聞こえた。

試合はまだ第3クオーター。
まだある。
でも、亜貴がいないこのクオーターは、こちらに不利だ。
最後のクオーターまで温存するつもりなのか……?

ベンチの亜貴を見ると、タオルを頭にかけ、試合を見ている。
ここからでも、顔の表情がほんの少し分かった。
眉間にシワを寄せ、肩で息をしていて…悔しそうに見えた。

「点差開いてきてるよ……?」
「でもあいつらだって良い動きしてるし!」
「相手は名門だよ?勝つ気なの?」

女子の先輩にも、とうとう不安の声が漏れ始めた。
あまり詳しく知らない男子1年たちは、不安そうに顔を見合わせている。

ダメだ……このままじゃ!
何か、しないと……。

大きく息を吸って、止めた。

「ガンバレェぇええええ!!
負けるなぁぁぁああ!!」

大声で、叫ぶ。
向こうの大声援が止まった瞬間だった為に、全体から大注目されてしまった。

あ……ちょっとハズい。

「ちょっと純!めっちゃ注目集めちゃったよ!?」

隣に来た若葉が、苦笑いした。

「だって、男子って応援歌無いじゃん?
こういうことぐらいしか出来ないかなぁって…」
「プッ、まぁ純らしいけどね……負けたら昼飯抜きだぞぉおおおおお!!?」

え、マジか。

若葉はさりげなく応援に加わって、さりげなく凄いペナルティを叫んでいた。

それってオレらも含まれてね?

「え、先輩それ結構響きますね」
「あ、そう?腹から声出すと良さげだよ」
「それさ、みんなでやらない?」
「え、これ?
女子の応援歌歌った方がまだ…」

いつの間にか近くにいたキャプテンが、フッと笑った。

「そんなんじゃ、あっちの応援と変わんないじゃん!
みんなで合わせて、これで叫ぼうよ!
あたし達の負けたストレス解消に」
「あ、あはは…」

「オフェンスぅぅうううう!!!」
「しっかりしろぉおおおお!!」
「負けんなぁぁぁああ!!」

もう既に男子1年は真似をして叫んでいる。

わー、我ながら恥ずかしい。

けど、なんだか、胸が熱くなった。
言い方も、声の出すタイミングも、セリフもバラバラだけど。
みんなが、1つになっていく。

「勝つぞぉぉおおお!!」

決意にも似た、叫び。

ベンチに座る亜貴がこちらを見て、顧問に何か言っているのが見えた。
亜貴に、考えがあるのだろうか。


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