82 / 100
亜貴が幸せになりますように
3
しおりを挟む
二階の応援席に着くと、どのコートも大盛り上がりだった。
なお一層大きな声援が聞こえて来たのは、3つあるうちの真ん中のコート…
亜貴たちが試合をしているコートだった。
確か、相手は……今年の優勝候補……!
席に到着すると、相手の大声援に負けじと声を張り上げる、数人の1年生たち。
試合の状況が気になって、誰に聞くわけでもなくコートを覗いた。
亜貴……!
不思議と、点数よりも先に、亜貴の姿はすぐ目に入った。
そして、違和感を覚えた。
あれ…膝にサポーターなんて、付けてたっけ?
今日の亜貴は、両膝に黒いサポーターをつけている。
練習の間も付けてはいなかったのに……大会用なのだろうか?
最近の亜貴のことは知らない。
だから、サポーターについても聞いてない。
スゴく、もどかしく感じた。
「行け~!京野ー!」
「亜貴先輩ー!!」
亜貴は素早いドリブルでコートを駆け抜ける。
何度もパスカットしては、試合の流れを変えた。
凄い。
勢いが、違う。
いつにも増して、コートを駆け回っている。
むしろ、無理している……?
そう思った時だった。
ビーッ。
相手のファールで、亜貴は倒れた。
「っ!」
「うわー…結構勢い良くぶつけたよねぇ」
「相手も、それだけ必死なんでしょ」
「京野の独走止まらないしね、点差もさほど無いし…」
女子達の声が耳に入ってくる。
でも、オレには…今のは亜貴が自分で転んだようにも見えた。
ぶつかる直前、ガクッと崩れたような……。
「でも、さっきからこの調子なんスよ」
「え?」
隣にいた男子の1年生が、深刻な顔でコートを見つめる。
「なんか、第1クオーターでファールされた時も、かなり勢い良く倒れて…そっからずっと出っぱなしなんスけど、何度か転んだりもしてて……」
「……亜貴が……」
あの長身で、無駄が無く隙のない、亜貴が…?
「この試合、勝てるんすかね!?
亜貴先輩、どこか悪いんですかね!?」
眉間にシワを寄せて、不安げに顔を向ける1年に、すぐには答えられなかった。
亜貴が……おかしい?
ビーッ!
またブザーが鳴る。
顧問に呼ばれて、亜貴がベンチへ戻っていった。
「えぇ!?亜貴先輩戻されたのー!?」
「このタイミングって…超ヤバイんじゃない!?」
後輩達の焦り声が後ろから聞こえた。
試合はまだ第3クオーター。
まだある。
でも、亜貴がいないこのクオーターは、こちらに不利だ。
最後のクオーターまで温存するつもりなのか……?
ベンチの亜貴を見ると、タオルを頭にかけ、試合を見ている。
ここからでも、顔の表情がほんの少し分かった。
眉間にシワを寄せ、肩で息をしていて…悔しそうに見えた。
「点差開いてきてるよ……?」
「でもあいつらだって良い動きしてるし!」
「相手は名門だよ?勝つ気なの?」
女子の先輩にも、とうとう不安の声が漏れ始めた。
あまり詳しく知らない男子1年たちは、不安そうに顔を見合わせている。
ダメだ……このままじゃ!
何か、しないと……。
大きく息を吸って、止めた。
「ガンバレェぇええええ!!
負けるなぁぁぁああ!!」
大声で、叫ぶ。
向こうの大声援が止まった瞬間だった為に、全体から大注目されてしまった。
あ……ちょっとハズい。
「ちょっと純!めっちゃ注目集めちゃったよ!?」
隣に来た若葉が、苦笑いした。
「だって、男子って応援歌無いじゃん?
こういうことぐらいしか出来ないかなぁって…」
「プッ、まぁ純らしいけどね……負けたら昼飯抜きだぞぉおおおおお!!?」
え、マジか。
若葉はさりげなく応援に加わって、さりげなく凄いペナルティを叫んでいた。
それってオレらも含まれてね?
「え、先輩それ結構響きますね」
「あ、そう?腹から声出すと良さげだよ」
「それさ、みんなでやらない?」
「え、これ?
女子の応援歌歌った方がまだ…」
いつの間にか近くにいたキャプテンが、フッと笑った。
「そんなんじゃ、あっちの応援と変わんないじゃん!
みんなで合わせて、これで叫ぼうよ!
あたし達の負けたストレス解消に」
「あ、あはは…」
「オフェンスぅぅうううう!!!」
「しっかりしろぉおおおお!!」
「負けんなぁぁぁああ!!」
もう既に男子1年は真似をして叫んでいる。
わー、我ながら恥ずかしい。
けど、なんだか、胸が熱くなった。
言い方も、声の出すタイミングも、セリフもバラバラだけど。
みんなが、1つになっていく。
「勝つぞぉぉおおお!!」
決意にも似た、叫び。
ベンチに座る亜貴がこちらを見て、顧問に何か言っているのが見えた。
亜貴に、考えがあるのだろうか。
なお一層大きな声援が聞こえて来たのは、3つあるうちの真ん中のコート…
亜貴たちが試合をしているコートだった。
確か、相手は……今年の優勝候補……!
席に到着すると、相手の大声援に負けじと声を張り上げる、数人の1年生たち。
試合の状況が気になって、誰に聞くわけでもなくコートを覗いた。
亜貴……!
不思議と、点数よりも先に、亜貴の姿はすぐ目に入った。
そして、違和感を覚えた。
あれ…膝にサポーターなんて、付けてたっけ?
今日の亜貴は、両膝に黒いサポーターをつけている。
練習の間も付けてはいなかったのに……大会用なのだろうか?
最近の亜貴のことは知らない。
だから、サポーターについても聞いてない。
スゴく、もどかしく感じた。
「行け~!京野ー!」
「亜貴先輩ー!!」
亜貴は素早いドリブルでコートを駆け抜ける。
何度もパスカットしては、試合の流れを変えた。
凄い。
勢いが、違う。
いつにも増して、コートを駆け回っている。
むしろ、無理している……?
そう思った時だった。
ビーッ。
相手のファールで、亜貴は倒れた。
「っ!」
「うわー…結構勢い良くぶつけたよねぇ」
「相手も、それだけ必死なんでしょ」
「京野の独走止まらないしね、点差もさほど無いし…」
女子達の声が耳に入ってくる。
でも、オレには…今のは亜貴が自分で転んだようにも見えた。
ぶつかる直前、ガクッと崩れたような……。
「でも、さっきからこの調子なんスよ」
「え?」
隣にいた男子の1年生が、深刻な顔でコートを見つめる。
「なんか、第1クオーターでファールされた時も、かなり勢い良く倒れて…そっからずっと出っぱなしなんスけど、何度か転んだりもしてて……」
「……亜貴が……」
あの長身で、無駄が無く隙のない、亜貴が…?
「この試合、勝てるんすかね!?
亜貴先輩、どこか悪いんですかね!?」
眉間にシワを寄せて、不安げに顔を向ける1年に、すぐには答えられなかった。
亜貴が……おかしい?
ビーッ!
またブザーが鳴る。
顧問に呼ばれて、亜貴がベンチへ戻っていった。
「えぇ!?亜貴先輩戻されたのー!?」
「このタイミングって…超ヤバイんじゃない!?」
後輩達の焦り声が後ろから聞こえた。
試合はまだ第3クオーター。
まだある。
でも、亜貴がいないこのクオーターは、こちらに不利だ。
最後のクオーターまで温存するつもりなのか……?
ベンチの亜貴を見ると、タオルを頭にかけ、試合を見ている。
ここからでも、顔の表情がほんの少し分かった。
眉間にシワを寄せ、肩で息をしていて…悔しそうに見えた。
「点差開いてきてるよ……?」
「でもあいつらだって良い動きしてるし!」
「相手は名門だよ?勝つ気なの?」
女子の先輩にも、とうとう不安の声が漏れ始めた。
あまり詳しく知らない男子1年たちは、不安そうに顔を見合わせている。
ダメだ……このままじゃ!
何か、しないと……。
大きく息を吸って、止めた。
「ガンバレェぇええええ!!
負けるなぁぁぁああ!!」
大声で、叫ぶ。
向こうの大声援が止まった瞬間だった為に、全体から大注目されてしまった。
あ……ちょっとハズい。
「ちょっと純!めっちゃ注目集めちゃったよ!?」
隣に来た若葉が、苦笑いした。
「だって、男子って応援歌無いじゃん?
こういうことぐらいしか出来ないかなぁって…」
「プッ、まぁ純らしいけどね……負けたら昼飯抜きだぞぉおおおおお!!?」
え、マジか。
若葉はさりげなく応援に加わって、さりげなく凄いペナルティを叫んでいた。
それってオレらも含まれてね?
「え、先輩それ結構響きますね」
「あ、そう?腹から声出すと良さげだよ」
「それさ、みんなでやらない?」
「え、これ?
女子の応援歌歌った方がまだ…」
いつの間にか近くにいたキャプテンが、フッと笑った。
「そんなんじゃ、あっちの応援と変わんないじゃん!
みんなで合わせて、これで叫ぼうよ!
あたし達の負けたストレス解消に」
「あ、あはは…」
「オフェンスぅぅうううう!!!」
「しっかりしろぉおおおお!!」
「負けんなぁぁぁああ!!」
もう既に男子1年は真似をして叫んでいる。
わー、我ながら恥ずかしい。
けど、なんだか、胸が熱くなった。
言い方も、声の出すタイミングも、セリフもバラバラだけど。
みんなが、1つになっていく。
「勝つぞぉぉおおお!!」
決意にも似た、叫び。
ベンチに座る亜貴がこちらを見て、顧問に何か言っているのが見えた。
亜貴に、考えがあるのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている
甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。
実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。
偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。
けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。
不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。
真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、
少し切なくて甘い青春ラブコメ。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる