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本編【表】
第1話-求婚
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『お前を我が妃に任命する。』
周囲の人間は皆、彼の藪から棒な発言に驚いた表情を隠しきれていない。
王宮の客間にて、椅子にふんぞり返り口を開くこの男はリフェリオ・ソルガデス
雪国アルテアの王クランツ・ソルガデスの第一子にして王位継承権第一位の王太子だ。
『喜ぶがいい、俺ほどの男はおらんぞ』
王太子は続けて傲慢な言葉を自身に挨拶の礼をする女性に吐く。
求婚とは呼び難い言葉を投げかけられた彼女は一瞬 困惑した表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し。
『王太子殿下。お戯れはお辞め下さいませ。』
王太子の発言を冗談で片付け様とする。
この女性はセリア・フェレネス伯爵令嬢
アルテア屈指の武家フェレネス家の生まれであり
アルテア一の才女として名高く。
アルテア人特有の白い髪は誰よりも美しい純白さを持ち"アルテアの華"と称される程の器量の持ち主である女性だ。
そんな彼女を凛々しい顔立ちながらも冷たい目付きで見る王太子は再び口を開く。
『俺は冗談は言わん。』
端的な言葉でセリアに言葉を返し
続けて口を開く。
『セリアよ。お前は俺が知る貴族令嬢の中で完璧に近い女だ。女でありながら学問に通ずるお前を快く思わぬ人間もいるが、俺はお前をかっているつもりだ。』
褒めているのか 見下しているのか分からないが
少なくとも彼は終始上から目線だ。
『お褒めに預かり光栄です。』
セリアは目線を下げ、必要以上に言葉を返さない。
王太子は歴代のアルテアの王達が避けて来た外交に熱心な人物だ。
他国の王族や貴族達と言葉巧みに交渉して来た彼に言葉尻を捕えられる様な事を言えば、それを逆手に自分のペースに話を運ばれてしまうと考えての事だ。
『本来武家の生まれの女を王家の一族に迎える事を俺は好まないが、お前は国教であるアルテルシオ教会と深く密接しアルテア屈指の聖騎士団を率いるフェレネス伯爵家の長女である。その血筋は王太子妃に迎えるに申し分ない。それも俺がお前を選んだ理由だ。』
王太子の発言は回りくどい。
彼の言葉を単純に分解し言い直すなら
戦う事しか脳がない武家の娘等、本来王太子妃に相応しくないが、フェレネス家はアルテアで長い歴史と影響力のある一族だから特別にお前を選んでやった。
そう言っているのだ。
つまり頭から彼はセリアを見下し恩を着せる様な態度で承諾を要求している。
なんでもない様な発言から、"お前に断る権利はないぞ"と言っているのだ。
困ったものでこの王太子は一度言葉に出した事は必ず実現させなければ気が済まない性格をしている。
彼の尊大な自尊心が自分の発言を覆す事を許さない。
その自尊心に見合うだけの能力が彼に備わってしまっている事が更に厄介だ。
王太子の横暴な振る舞いは王族として愚者その物だが、それを周りが糾弾出来る程、彼は愚かではない。
寧ろ王太子として彼は優秀の部類に入る。
アルテアの歴史は数百年続いている。
その歴史の中で戦争はアルテアと切っても切り離せない物であった。
資源が乏しいこの大陸では、水源を求めての近隣国との諍いが耐えない。
そんな中、彼は干ばつに苦しむ隣国のサラバドに労働力と水源の一部を提供し荒れ地の開拓を提案した。
その変わりに開拓後の暁には発展した農地の何割かをアルテアと共有すると言う条約を立案したのだ。
言わば、アルテアとサラバドが同盟を結ぶ事となる。
アルテアも食料難問題に頭を悩ませていた。
水源に恵まれていても、極寒の雪国であるアルテアでは農作物は寒さに強い一定の作物しか育たない。
一方サラバドは干ばつにより水源に乏しい国であり毎年何百人もの餓死者を出し水源問題はサラバドにとって死活問題であった。
長い目で見れば両者が得をする合理的な政策である。
しかし今まで歴代の王達は歴史や国教の教えからアルテアが他の種と繋がる事を極端に嫌い、外交も閉鎖的であった。
その点、彼は近隣国は元より他の国の技術や文化に深い関心を持ち、王族ならば必ず入学する事が習わしの王立学園ではなく、技術力においては大陸屈指の力を持つ大国デラガドにアルテア初の留学生として4年間単身で留学しデラガドの造船技術と他国高位貴族の子息達との友好関係を土産に帰国した。
彼が持ち帰った技術は大国から見て100年遅れだったアルテアの造船技術に改革を起こし、沖合漁業の収穫量が何倍にも飛躍した。
続けて彼は留学で結んだ他国の貴族達との友好関係を使い交易のパイプや他国との同盟を結ぼうと画策している。
サラバドとの同盟は王太子のアルテア国交政策の記念すべき第一号になるのだ。
彼はアルテアの長い鎖国状態を断ち切ろうとしている先駆者である。彼が王位を継承する事に誰も異議を唱えられる者がいない程の傑物であった。
故に誰も彼の横暴に異論口出しが出来ずにいた。
王太子に誰も口出し出来ない理由はもう1つあった。
アルテアにはもう一人 王位継承権を持つ王子がいた。
フェルリオ・ソルガデス第二王子
クランツ王の実子であり、リフェリオ王太子と6つ歳の離れた弟君にあたる。
が…彼は正に王子として愚者その者だった。
王太子とは打って代わり怠け者として名高い彼は王立学園での成績は下から数えた方が早い有様。
第二王子の役割は王位継承権第一位である王太子の補佐。優秀な人物ならば公爵の称号を与えられ王都周辺の領地を納める事となる。
武芸に長けた者ならばアルテアの軍部中枢 将軍職に任命され地方に点在する武家を束ねて統括しアルテア領の守備や遠征を司る最高指揮官の任を任される。
不出来な者は、公爵家かどんなに悪くても侯爵家に婿入りし、その家の当主らに指南を受けながら間接的に指導者としての器を磨き婿入りした家の家督を継ぐか…当主補佐を務める事となる。
しかしこの第二王子には今婿入りする家がない。
公爵家は勿論。侯爵家すらどの家も首を縦に振らない。
第二王子は不出来なだけでなく、女癖の悪さも有名だった。
王立学園では、『君を僕の妃に迎えたい。だから僕を受け入れておくれ』と誑かし下位貴族令嬢に手を出した事は数しれない。
高位貴族令嬢達は彼の言葉に誠意がない事や、彼に王位継承は有り得ない落ち目である事を知っている為、相手にしないが下位貴族令嬢達は違った。
皆、王子の言葉を信じ王家と縁談を組めば実家の地位が向上し玉の輿に乗れる。
そう彼を信じた結果、騙される形となってしまう。
アルテアでは婚姻前の純潔を重んじる文化があり、これに絶望した下位貴族令嬢達は自ら命を絶とうとした者が続出、下位貴族達が結託し王に訴えを起こした。
普段 威厳あるクランツ王だが、息子の不貞にはぐうの音も出ない。
王は下位貴族達に謝罪し莫大な慰謝料を支払った。
王が下位貴族に頭を下げるなど、恐らくアルテア史史上初の失態だろう。
しかしクランツ王は普段賢王として名高く、国民からの信頼の厚かった。
そんな国王の異例の謝罪と、下位貴族達に相応の保証をする事を約束しなんとか丸く収まったのだ。
この時王は第二王子にこう言ったと言う。
『例え天変地異が起ころうとも、お前に王位は譲らん』と…
この事件により、王位継承権を継ぐ者の変わりがいなくなった事で王太子は益々 増長した。
名実共に 我こそが次代のアルテア王であると。
周囲の人間は皆、彼の藪から棒な発言に驚いた表情を隠しきれていない。
王宮の客間にて、椅子にふんぞり返り口を開くこの男はリフェリオ・ソルガデス
雪国アルテアの王クランツ・ソルガデスの第一子にして王位継承権第一位の王太子だ。
『喜ぶがいい、俺ほどの男はおらんぞ』
王太子は続けて傲慢な言葉を自身に挨拶の礼をする女性に吐く。
求婚とは呼び難い言葉を投げかけられた彼女は一瞬 困惑した表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し。
『王太子殿下。お戯れはお辞め下さいませ。』
王太子の発言を冗談で片付け様とする。
この女性はセリア・フェレネス伯爵令嬢
アルテア屈指の武家フェレネス家の生まれであり
アルテア一の才女として名高く。
アルテア人特有の白い髪は誰よりも美しい純白さを持ち"アルテアの華"と称される程の器量の持ち主である女性だ。
そんな彼女を凛々しい顔立ちながらも冷たい目付きで見る王太子は再び口を開く。
『俺は冗談は言わん。』
端的な言葉でセリアに言葉を返し
続けて口を開く。
『セリアよ。お前は俺が知る貴族令嬢の中で完璧に近い女だ。女でありながら学問に通ずるお前を快く思わぬ人間もいるが、俺はお前をかっているつもりだ。』
褒めているのか 見下しているのか分からないが
少なくとも彼は終始上から目線だ。
『お褒めに預かり光栄です。』
セリアは目線を下げ、必要以上に言葉を返さない。
王太子は歴代のアルテアの王達が避けて来た外交に熱心な人物だ。
他国の王族や貴族達と言葉巧みに交渉して来た彼に言葉尻を捕えられる様な事を言えば、それを逆手に自分のペースに話を運ばれてしまうと考えての事だ。
『本来武家の生まれの女を王家の一族に迎える事を俺は好まないが、お前は国教であるアルテルシオ教会と深く密接しアルテア屈指の聖騎士団を率いるフェレネス伯爵家の長女である。その血筋は王太子妃に迎えるに申し分ない。それも俺がお前を選んだ理由だ。』
王太子の発言は回りくどい。
彼の言葉を単純に分解し言い直すなら
戦う事しか脳がない武家の娘等、本来王太子妃に相応しくないが、フェレネス家はアルテアで長い歴史と影響力のある一族だから特別にお前を選んでやった。
そう言っているのだ。
つまり頭から彼はセリアを見下し恩を着せる様な態度で承諾を要求している。
なんでもない様な発言から、"お前に断る権利はないぞ"と言っているのだ。
困ったものでこの王太子は一度言葉に出した事は必ず実現させなければ気が済まない性格をしている。
彼の尊大な自尊心が自分の発言を覆す事を許さない。
その自尊心に見合うだけの能力が彼に備わってしまっている事が更に厄介だ。
王太子の横暴な振る舞いは王族として愚者その物だが、それを周りが糾弾出来る程、彼は愚かではない。
寧ろ王太子として彼は優秀の部類に入る。
アルテアの歴史は数百年続いている。
その歴史の中で戦争はアルテアと切っても切り離せない物であった。
資源が乏しいこの大陸では、水源を求めての近隣国との諍いが耐えない。
そんな中、彼は干ばつに苦しむ隣国のサラバドに労働力と水源の一部を提供し荒れ地の開拓を提案した。
その変わりに開拓後の暁には発展した農地の何割かをアルテアと共有すると言う条約を立案したのだ。
言わば、アルテアとサラバドが同盟を結ぶ事となる。
アルテアも食料難問題に頭を悩ませていた。
水源に恵まれていても、極寒の雪国であるアルテアでは農作物は寒さに強い一定の作物しか育たない。
一方サラバドは干ばつにより水源に乏しい国であり毎年何百人もの餓死者を出し水源問題はサラバドにとって死活問題であった。
長い目で見れば両者が得をする合理的な政策である。
しかし今まで歴代の王達は歴史や国教の教えからアルテアが他の種と繋がる事を極端に嫌い、外交も閉鎖的であった。
その点、彼は近隣国は元より他の国の技術や文化に深い関心を持ち、王族ならば必ず入学する事が習わしの王立学園ではなく、技術力においては大陸屈指の力を持つ大国デラガドにアルテア初の留学生として4年間単身で留学しデラガドの造船技術と他国高位貴族の子息達との友好関係を土産に帰国した。
彼が持ち帰った技術は大国から見て100年遅れだったアルテアの造船技術に改革を起こし、沖合漁業の収穫量が何倍にも飛躍した。
続けて彼は留学で結んだ他国の貴族達との友好関係を使い交易のパイプや他国との同盟を結ぼうと画策している。
サラバドとの同盟は王太子のアルテア国交政策の記念すべき第一号になるのだ。
彼はアルテアの長い鎖国状態を断ち切ろうとしている先駆者である。彼が王位を継承する事に誰も異議を唱えられる者がいない程の傑物であった。
故に誰も彼の横暴に異論口出しが出来ずにいた。
王太子に誰も口出し出来ない理由はもう1つあった。
アルテアにはもう一人 王位継承権を持つ王子がいた。
フェルリオ・ソルガデス第二王子
クランツ王の実子であり、リフェリオ王太子と6つ歳の離れた弟君にあたる。
が…彼は正に王子として愚者その者だった。
王太子とは打って代わり怠け者として名高い彼は王立学園での成績は下から数えた方が早い有様。
第二王子の役割は王位継承権第一位である王太子の補佐。優秀な人物ならば公爵の称号を与えられ王都周辺の領地を納める事となる。
武芸に長けた者ならばアルテアの軍部中枢 将軍職に任命され地方に点在する武家を束ねて統括しアルテア領の守備や遠征を司る最高指揮官の任を任される。
不出来な者は、公爵家かどんなに悪くても侯爵家に婿入りし、その家の当主らに指南を受けながら間接的に指導者としての器を磨き婿入りした家の家督を継ぐか…当主補佐を務める事となる。
しかしこの第二王子には今婿入りする家がない。
公爵家は勿論。侯爵家すらどの家も首を縦に振らない。
第二王子は不出来なだけでなく、女癖の悪さも有名だった。
王立学園では、『君を僕の妃に迎えたい。だから僕を受け入れておくれ』と誑かし下位貴族令嬢に手を出した事は数しれない。
高位貴族令嬢達は彼の言葉に誠意がない事や、彼に王位継承は有り得ない落ち目である事を知っている為、相手にしないが下位貴族令嬢達は違った。
皆、王子の言葉を信じ王家と縁談を組めば実家の地位が向上し玉の輿に乗れる。
そう彼を信じた結果、騙される形となってしまう。
アルテアでは婚姻前の純潔を重んじる文化があり、これに絶望した下位貴族令嬢達は自ら命を絶とうとした者が続出、下位貴族達が結託し王に訴えを起こした。
普段 威厳あるクランツ王だが、息子の不貞にはぐうの音も出ない。
王は下位貴族達に謝罪し莫大な慰謝料を支払った。
王が下位貴族に頭を下げるなど、恐らくアルテア史史上初の失態だろう。
しかしクランツ王は普段賢王として名高く、国民からの信頼の厚かった。
そんな国王の異例の謝罪と、下位貴族達に相応の保証をする事を約束しなんとか丸く収まったのだ。
この時王は第二王子にこう言ったと言う。
『例え天変地異が起ころうとも、お前に王位は譲らん』と…
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