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【SS1】ハイネの譚
第5話-有象無象
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『以上を持ちまして入学生代表の挨拶とさせて頂きます…。』
スピーチを終えた私に当たり障りの無い拍手が送られた。
目線は常に前を向けていた…
声が震える事も無く…最後まで練習した通りに出来た…
しかし…私のスピーチに耳を傾けていた者は半分も居なかった…
他の子息子女達の視線は私では無く殿下に向いていた。
皆、殿下に媚び寄り擦り寄る事に夢中で…私が壇上から降りる頃には誰も私に目もくれなかった。
殿下は…私のスピーチを聞いて下さっただろうか…?
殿下に教えを乞いたい
今日の私のスピーチがどうだったか…
褒められればそれは勿論嬉しい…だけど周りの反応を見るに殿下からお叱りを受けるだろう……
私は殿下の方へ目をやった。
殿下の周りには人集りが出来ていた。
主に下位貴族家の女生徒達が殿下を取り囲み後の王太子妃ならんと愛嬌を振りまいていた…。
中等科に籍を置くフェルリオ王子が下位貴族家の令嬢達とも交友関係にある事から、殿下に対しても自分達にも可能性があると踏んだのか殿下を囲い黄色い声と上目遣いで擦り寄る。
私と言う婚約者がすぐ側に居ながら彼女達は飢えた獣の様に目をギラつかせながら馴れ馴れしくベタベタと…
殿下が…貴方達みたいな慎みも知らない女性を相手にする訳がないじゃない…
私は自身にそう言い聞かせ…心惑わされぬ様に務めた。しかし…
『殿下、御初にお目にかかります。ロレーヌ公爵家のシャリア・ロレーヌでございます。』
雑魚の群れから危険な大魚が現れた
シャリア・ロレーヌ公爵令嬢
アルテア御三家に名を連ねる公爵家の娘だ。
家名の歴史ではラグライア家に劣るが…近年ではその財力も勢力も追い越されてしまっている。
貴族家としての権威ならばラグライア家と対等か…それ以上だ…。
私の心臓はゾクリと嫌な音を立てる
私の立場は…あくまで殿下の婚約者に過ぎない…
つまり正式な婚礼をしていない私達の関係は…殿下の心変わり1つで容易く無かった事に出来る関係にある…。
殿下の心が…私から彼女に移ってしまったらどうしよう…
先程まで自信に溢れた…いや、自信に溢れた振りをしていた私の顔はいつもの何かに怯える負け犬の顔に戻っていた…
『ロレーヌ嬢。東の国ニーチェドルクの国教イベルターナ教の戒律について貴女の意見を頂戴したい』
そんな…
私を試す時に出したテスト
殿下は…ロレーヌ嬢を試していた…
もし…彼女が殿下に答えを返せたら…私は…私は…
『ニーチェドルク…?あの三大国に数えられた国の話でしょうか…?』
ロレーヌ嬢は、殿下の質問に答えを返せなかった…
私は胸を撫で下ろした。
『ふんっ…』
殿下の目から彼女に対する興味が失せた。
殿下は有象無象の肉の壁を掻き分けて席を立つ。
『あの…!宜しければこの後御食事でも如何でしょうか!これから同じく学園に籍を置く者同士御近付きになれれば光栄ですわ!』
『残念ですが…私の一番の女性は既に決まっておりますので…それでは』
『行こうハイネ』
殿下はそう言ってまた私を出口までエスコートして下さった。
------------------------------
『あの…殿下』
『御三家に名を連ねるロレーヌ家の娘でもあの程度の教養なのか…アルテアの学問はレベルが低過ぎる…その他の有象無象等…同じ空気を吸うのも汚らわしい…諂うしか取り柄のない俗物共め…』
殿下は私と共に馬車に乗り込むとブツブツと独り言を始めた。
何故かとても腹を立てている様だった。
殿下は何か不愉快な事が起きるとよく独り言を呟く。こうなると私が何か言っても無駄だ。
殿下の気が済むまで待つ事にする。
数分後…漸く殿下の気が収まったのか一息ため息を吐くと
『やはりハイネ…お前が俺の一番の女だ…今日それが明らかになった』
そう言って私の頬を撫でてくれた…
しかし私は手放しで喜べなかった。
殿下の言う"一番"とは唯一無二では無く暫定一位に過ぎない…
今日はなんとか凌げたが…
もし次…殿下の目に留まる女性が現れたら…
私は…いつまで怯えれば良いのだろう…
どれだけ努力すれば…この人の心が手に入るのだろう…
もっともっと…努力が必要だ
あなたの一番で有り続ける為に…
スピーチを終えた私に当たり障りの無い拍手が送られた。
目線は常に前を向けていた…
声が震える事も無く…最後まで練習した通りに出来た…
しかし…私のスピーチに耳を傾けていた者は半分も居なかった…
他の子息子女達の視線は私では無く殿下に向いていた。
皆、殿下に媚び寄り擦り寄る事に夢中で…私が壇上から降りる頃には誰も私に目もくれなかった。
殿下は…私のスピーチを聞いて下さっただろうか…?
殿下に教えを乞いたい
今日の私のスピーチがどうだったか…
褒められればそれは勿論嬉しい…だけど周りの反応を見るに殿下からお叱りを受けるだろう……
私は殿下の方へ目をやった。
殿下の周りには人集りが出来ていた。
主に下位貴族家の女生徒達が殿下を取り囲み後の王太子妃ならんと愛嬌を振りまいていた…。
中等科に籍を置くフェルリオ王子が下位貴族家の令嬢達とも交友関係にある事から、殿下に対しても自分達にも可能性があると踏んだのか殿下を囲い黄色い声と上目遣いで擦り寄る。
私と言う婚約者がすぐ側に居ながら彼女達は飢えた獣の様に目をギラつかせながら馴れ馴れしくベタベタと…
殿下が…貴方達みたいな慎みも知らない女性を相手にする訳がないじゃない…
私は自身にそう言い聞かせ…心惑わされぬ様に務めた。しかし…
『殿下、御初にお目にかかります。ロレーヌ公爵家のシャリア・ロレーヌでございます。』
雑魚の群れから危険な大魚が現れた
シャリア・ロレーヌ公爵令嬢
アルテア御三家に名を連ねる公爵家の娘だ。
家名の歴史ではラグライア家に劣るが…近年ではその財力も勢力も追い越されてしまっている。
貴族家としての権威ならばラグライア家と対等か…それ以上だ…。
私の心臓はゾクリと嫌な音を立てる
私の立場は…あくまで殿下の婚約者に過ぎない…
つまり正式な婚礼をしていない私達の関係は…殿下の心変わり1つで容易く無かった事に出来る関係にある…。
殿下の心が…私から彼女に移ってしまったらどうしよう…
先程まで自信に溢れた…いや、自信に溢れた振りをしていた私の顔はいつもの何かに怯える負け犬の顔に戻っていた…
『ロレーヌ嬢。東の国ニーチェドルクの国教イベルターナ教の戒律について貴女の意見を頂戴したい』
そんな…
私を試す時に出したテスト
殿下は…ロレーヌ嬢を試していた…
もし…彼女が殿下に答えを返せたら…私は…私は…
『ニーチェドルク…?あの三大国に数えられた国の話でしょうか…?』
ロレーヌ嬢は、殿下の質問に答えを返せなかった…
私は胸を撫で下ろした。
『ふんっ…』
殿下の目から彼女に対する興味が失せた。
殿下は有象無象の肉の壁を掻き分けて席を立つ。
『あの…!宜しければこの後御食事でも如何でしょうか!これから同じく学園に籍を置く者同士御近付きになれれば光栄ですわ!』
『残念ですが…私の一番の女性は既に決まっておりますので…それでは』
『行こうハイネ』
殿下はそう言ってまた私を出口までエスコートして下さった。
------------------------------
『あの…殿下』
『御三家に名を連ねるロレーヌ家の娘でもあの程度の教養なのか…アルテアの学問はレベルが低過ぎる…その他の有象無象等…同じ空気を吸うのも汚らわしい…諂うしか取り柄のない俗物共め…』
殿下は私と共に馬車に乗り込むとブツブツと独り言を始めた。
何故かとても腹を立てている様だった。
殿下は何か不愉快な事が起きるとよく独り言を呟く。こうなると私が何か言っても無駄だ。
殿下の気が済むまで待つ事にする。
数分後…漸く殿下の気が収まったのか一息ため息を吐くと
『やはりハイネ…お前が俺の一番の女だ…今日それが明らかになった』
そう言って私の頬を撫でてくれた…
しかし私は手放しで喜べなかった。
殿下の言う"一番"とは唯一無二では無く暫定一位に過ぎない…
今日はなんとか凌げたが…
もし次…殿下の目に留まる女性が現れたら…
私は…いつまで怯えれば良いのだろう…
どれだけ努力すれば…この人の心が手に入るのだろう…
もっともっと…努力が必要だ
あなたの一番で有り続ける為に…
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