グッバイ現世、僕は異世界で最強になる。〜才能が全ての世界をヘタレ冒険者が押し通ります〜

アキタ

文字の大きさ
5 / 28

作戦と支援金交渉

しおりを挟む
 翌朝、気の抜けた声と共に体を伸ばす嘉武。
(見慣れない天井・・・。そういえば、僕は今、異世界に居るんだったな)

 ふと、想いを巡らせ寂寥感が広がる。気持ちを切り替えるように着替えに袖を通し、軽く腕を振るう。

「さて、行きますか」
 嘉武は宿を後にし、ギルドへと向かう。

 ギルドの中に入ると、受付嬢が嘉武を見るや否や表情を曇らせた。
「あ、嘉武様、昨日のお手続きの件ですが少々難が有りまして・・・」
「なにか、ありましたか?」
「申請するにはやはり、経歴、アピール等が浅すぎたかも知れません。私も一緒だったのに申し訳なかったです」
「仕方ないですよ、本当の事ですから」
「その、それでなんですが、ギルド長がお呼びなんですよね・・・」

 いきなりギルド長か、人事担当とか居ないのかよと嘉武は思うが、怪しい人間を見極めるのならトップの目を通すのは必要である。ただ気になるのは神妙な口調の受付嬢だ。何か不都合でもあるのだろうか。ミスで凹んでいるのだろうかと推測する。

「そうですか、分かりました。どこへ行けばいいんですか?」
「こちらへどうぞ、上階でお待ちです」

 嘉武は受付の奥へと進み、魔法エレベーターへ乗る。勿論内心は驚きと感動に満ちているがこれ以上田舎者だと思われても哀れみを受けるだけなので静かに乗りあがった。

 絨毯が敷かれたフロアに着き、重厚な木の扉が嘉武を待っていた。
「嘉武様、よろしいですか?」と受付嬢が耳打ちをする。軽く相槌を返し、背筋を伸ばし、受付嬢はコンコンとノックする。

「エルガー様、シルフィです。美濃嘉武様をお連れ致しました」

「入れ」と一言。

「それではどうぞ」と受付嬢が扉を開き、嘉武は入室する。目の前には存在感のある白髪の男、エルガーがどっしりと自席に着いている。

 一応嘉武は目を合わせ、どうもと軽く会釈する。
 そして、自分の仕事を終えた受付嬢のシルフィはそそくさと退室する。
 ギルド長エルガーは嘉武の目を見る。どこまで覗かれているのか分からないほどの重い眼孔。全てが見透かされているようだった。長く感じられる数秒が過ぎた頃、「そこに掛けたまえ」とギルド長の一言。

 革張りのソファに腰掛け、嘉武は膝に手を置く。その対面にはギルド長が腰を掛ける。

「なあ美濃嘉武。俺が、怖いか?」

 エルガーが低い声で嘉武に問う。誰から見てもエルガーは見た目は大柄だし、男らしくある。肩にかけた黒ジャケットはまるでヤ〇ザ、おまけに切れ長の眼に睨まれればどちらかと言えば怖い。前世においては小便をチビっていたかもしれない。だが、それは中身を知らない事による先入観のみ。現在、それらと恐怖は別である。一瞬思考を経て嘉武は言った。

「いえ、怖さは覚えません」
「なら、なんだ?」
「エルガーさんって本当にギルド長ですか?どちらかと言えばマフィアっぽさを感じますよね」
「冗談まで言えるのか、大したもんだな」というエルガーの額の血管がヒクついた。

 続けて、「本音ですよ」と嘉武はニッコリ。エルガーの事を怖くないと心底思えばこのまま打ち解けられるのだろうと思う。変則的でもなさそうだし、このくらいであれば対応できる。

「ナメてる訳じゃないよな・・・?」と軽く睨みを聞かせるギルド長。
 滅相もございませんと返す嘉武。

「実際、丸腰のお前が嘘つきに来たとは思えねぇしな」とエルガーがソファに背中を預ける。

「褒められてるんですかこれ」
「どっちでもない」と答えエルガーは一旦間を開ける。

「美濃嘉武、ここへ呼び出しておいて悪いがとりあえず冒険者としての申請の件は話の後決議する。それでは、早速だが昨日の件といこうか」
「昨日?」
「ああ、どうやって田舎から出てきたばかりの丸腰のお前が、ガヴァルドを倒せたか聞かせてもらおう。それだけは納得が行かなくてな。この目で確かめる必要があると感じてここへお前を呼び出した」

 嘉武は頷き、話しを聞きながら昨日の戦闘を思い出す。
(昨日のゴロツキか?ちょっと手を出しちゃいけないヤツらだったりしたか?)

「あれは、たまたまですよ、ヤツらが勝手に仲間割れを起こして・・・あの時は僕も結構必死でしたしはっきりとは覚えていませんね・・・」と嘉武は嘘をつく。確かに丸腰でガヴァルド達から逃れ、ましてや撃退なんて歪な話だろう。偶然が偶然を呼び、と話すしかあるまい。

 腕を組み嘉武の話を聞くエルガーの目は開かれない。納得がいかないのだろう。

「それなら尚更詳しく聞かせろ。奴らのようなゴロツキはメンツだけで飯を食っている。都合の悪い噂でも流れてみろ。メンツを保つ為に確実に報復に来るぞ」
「それは困りましたね、武器や防具が欲しいところです」

(この余裕は、本物なのか・・・?)
 心底困っている様子もなく恐怖の匂いがしない嘉武のリアクションにエルガーが額を再びヒクつかせ目を開く。

「おいおい、武器防具があったところで次も上手くいくとは限らないだろう。ヤツらだって次は本気で来る。ナァ・・・その意味がわかるか?」
「殺されますかね?でも僕逃げ足には自信あるんですよ」

 嘉武の芯食わないやりとりににエルガーは重く息を吐いた。

「何か、隠している事があるなら言ったらどうだ?」
「特に隠していることはないですよ」と考えず答える嘉武。
「このまま続けても埒が明かねぇな・・・・・・」

 エルガーは言葉を濁しながら続けた。あのガヴァルドはオルディスの街の裏に潜むゴロツキの中でも手を焼く存在であったと。特徴は丸腰と見せかけ、あの身体能力の高さ。追い込んでも爪を使い高所へ逃げる。自慢の脚力で逃亡されれば追うことも困難。マグレでも逃げ切るなんて話、信じ難い。表へはほとんど出てこず、裏をテリトリーにしていて冒険者等も手を付けたがらないのが現実であると。
 先月、ガヴァルドが数人の子供を攫って奴隷商へ売ったとの話が流れ、人身売買の犯罪にまで手を染めているとなればその辺のゴロツキと扱うには難しくなってきた。確実に処罰していかなければならない執行対象者だと。

(そりゃ、僕は疑われる訳だ。勝つどころか、負ける以外の材料がまったくない)
 それらの材料を聞いてしまったのならば嘉武は嘘を続けるのは利口ではないと悟る。

「わかりました、観念します。そりゃ僕みたいな田舎者が無傷でここにいたら気持ち悪いですよね」
「そうか、他言する気はない、何があったのか話してくれ」
「僕、田舎者なので目が良いんですよ。それと腕っぷしには多少、自信があります。マグレなのは本当でしょうが、一発良いところに入ったのでそのままガヴァルドは気絶しました。その後下っ端が気絶したガヴァルドを抱えて逃げていったんです。そんなこんなで僕が今ここで質問攻めに合っている、なんてところでしょうか」
「まぁ・・・話自体は未だに信じ難いが、筋は通った。そこで、だ。・・・近々、ギルドを挙げてガヴァルドを拘束する。その為、オルディス内外問わず手練に要請をかけている。そして、お前は作戦の中でも囮として使えると考えた。お前の余裕を見るに即殺される危険も低いのだろう、ぜひ手を貸してくれないか」

 エルガーの提案に嘉武は首をかしげる。確かにエルガーの言い分は正しい。だが、嘉武にとってのメリットが皆無。協力すれば冒険者になれるとか言われてもそれは話がまったくもって別だからだ。

「うーん、ただ手を貸すにしても今、僕は色々と困っています。取引であれば応じようかと思いますが」
「はぁ、俺ァな、お前一人じゃ殺されるって言っているんだ。身の保証がその対価だとは思わねぇのか?」
「思いませんねぇ、人目の付かないところや裏行かなきゃ良いだけじゃないですか。まず殺されそうな人がいるっていうのにギルド側だって放っておきはしないでしょう?」

 口答えをする嘉武、無音が二人を包む。その数十秒後エルガーが堪忍したように言う。
「わーったよ。それなら、お前の冒険者としての支援金をギルドで全負担する」
「武器防具込ですか?」
「こう言っちまった以上、そのくらいは仕方ねぇよな。ただし、高価なものは駄目だ。冒険者としてのランクも鑑みて購入してもらう」
「わかりました、手を打ちましょう!」と嘉武は笑う。
 一方、小僧に割食わされちまったとエルガーは独りごちる。

 こうして話は嘉武の思い通りにまとまる。
 ギルド長室を後にした嘉武はギルド食堂にて遅めの朝食を摂る。すると朝の手続きが一旦休まったタイミングで受付嬢のシルフィが嘉武のもとへ来て問いかけた。
「先程は大丈夫でしたか?ウチのギルド長、怖い方だったでしょう?」
「そんな事なかったですよ、なんなら結構優しい方でしたね」
「えぇ!?あの無愛想でおっかない方のことですよ。あの目、見たでしょう!?」

 おっといけない、と口を抑え慎むシルフィ。あれはきっと若い頃に悪いことを・・・とブツブツ言っている。嘉武はそんな様子を見て思わず笑ってしまう。
「それなら驚きの報告ができそうですね。なんとあのギルド長さん、僕の支援金全負担してくれるそうですよ」
「なんと!思い切りましたね!」
「武器防具付きですよ」

 まぁ!と感嘆の声を上げるシルフィ。慎んだ意味もなく、周りに人に丸聞こえである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...