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ヨル・シュナルダス
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ただ、夜の街と言っても治安は良く、騎士団のパトロールは昼夜を問わない。何なら人気が減った分騎士団達が増えた様に感じる程。
「ワイゼルでは酷い目に遭ったからなぁ・・・」
嘉武は歩いて王宮近辺まで散歩していた。ワイゼルとはまた違った煌びやかな街路に何処までも歩けるような気がする。時折、黒の学生服を着た歳下や、同い年位の存在が気になっていたがこの世界にも学校が有るのだろう位にしか受け止めなかった。
そんな中、学生服の男子が肩を掴まれて大柄な学生服を着た生徒に連れて行かれる所を嘉武は見てしまう。
只事では無い雰囲気とはまた違うのだが、見ていて気持ちのいいものでは無い。
(イジメ・・・か? 最悪の事考えて一応、見ておいた方が良いよな・・・)
嘉武は自分の持つどこにでもいる存在感を上手く使い、尾行してみる。
「それにしてもよォ、こんな奴がホントにSクラスかよ?ビビってんのか黙りこくってるしよ」
「分が悪いんじゃねぇの?んまあ、チビの癖に調子乗ってっからこうなるんだよ」
「だよなぁ、結局の所物言うのは実践力だからな。分かってんだろ糞チビ?」
嘉武はギリギリ聞ける距離を歩く。生徒二人から糞チビ扱いを受けている生徒は身長が低い。外套を羽織っていても分かるほどに線も細いが、三人とも同じ学生服だ。体格差はかなりある上、クラスがどうこうは良く分からないがきっと優秀なのだろう。
目の前の生徒がどの様にして彼らに目を付けられたのか、理由は分からないが、流石に見逃すことは出来ない。嘉武はこの世界へ来る前にも正義感を奮ってきた。この世界では、きっと上手くいく。今度こそ上手くいく。そう嘉武は信じた。
そして、目の前の三人はスルッと裏へ消える。何かの能力を行使したに違いない。魔力感知に集中し、誰かの行使した魔力を感じ取る。
そして、人知れずステルスを行使し、同時に消音歩行をする。これらのスキルは<A>の値に比例して効果が上がる。つまりは、嘉武に打って付けスキルである。
思っていたよりも奥まった所に街灯が消え掛けた小広場があった。金網のフェンスの向こうに、学生服三人の姿。
「あーあ、誰かに見られてるみたいだ」
小さい学生服の子が言う。声はまだ幼いのか男らしくはない。そして、目線の先には嘉武。完全に目が合っている。
(気づ・・・くのか・・・。どういう事だよ・・・)
「なわけ、確かに騎士団は巻いた筈・・・」
「そんなんで逃げようたってそうはいかねえぞ?」
嘉武は息を殺した。大柄な学生服の二人も惑わされる。
「違うね。君達は助かったって事だよ。感謝するなら、そこのストーカーさんにしなよ」
そう言って嘉武を直視する。深い瞳の紅に吸い込まれそうになった嘉武は姿を隠した。奴に完全に見透かされている。
(僕の・・・隠匿スキルを上回っているなんて・・・)
「ストーカー?何処にもいねえよ」と生徒二人は反応している。
「今日はもうダメだ、君達もさっさと帰れ。でなければ、今ここで僕がお前達三人を殺すぞ」
そう、それは嘉武含めた三人を、だ。幻覚を見せつけられているかの様な殺意量が最早、素人のソレでは無かった。
「や、やべぇこいつ・・・ホンモノだぁッ・・・!!」
全身に強烈な殺意を受けた学生二人は一目散に逃げ出した。
時間を置いて嘉武が姿を現す。近くで見てみるとどうやら、男ではなさそうだ。被っている外套からは黒い髪が垂れている。
(背は、僕より少し低いくらいか・・・)
「君が来なければ悪の芽が摘めたと言うのに・・・邪魔してくれたね・・・」
「彼らも同じ学校の生徒だろう?第三者に見られては行けない事でもする気だったのか?」
「たかだか、一冒険者に教えてやる事はない」
「君はそうして人を、殺して来たとでも言うのか」
嘉武は直感する。目の前にいる人間は人殺しだと。
「仮に殺していたとしたら何が悪い?説教を受ける様なヘマはしたこと無いんだけど・・・?」
「殺す以外にも方法があるだろうっ!?」
「無いね。だって・・・クッフフ」
「言ってみろよ!」
嘉武は思わず吠える。何を熱くなっているのか自分でもわからない。そして、目の前の人間は被っていた外套をハラりと外し、顔を出した。
「内緒」と指を口元に当てて一瞬で飛び去る。嘉武には追跡出来ないほどの初速に認識した刹那に振り切られていた。
(黒髪の・・・女・・・)
きっと顔を出した理由は挑発。止められるものなら止めてみろという暗示であることが即座に理解できた。それ故、嘉武は熱くなる。絶対に止めてやる。どんな理由があろうと、殺害を愉しむものなど許してはおけないと。
それから三日で彼女の在籍する学校、教室、名前全てを特定した。
学校は王立グランディア学園、Sクラス。名前はヨル・シュナルダスだと判明。嘉武は気配を殺し、透過スキルを使用し学園へ潜入。さらに遠方確認スキルを活用し彼女の姿を確認した。そしてわかったこと、彼女は至って普通の生徒だった。
夕刻。人気の無くなった頃、嘉武は術式を組み、誘い込む。気配遮断、外観偽造をスキルをフル活用し、人通りの全く無い街路で彼女との接触を試みた。時間がかかったのは場所を用意するためだった。
「ワイゼルでは酷い目に遭ったからなぁ・・・」
嘉武は歩いて王宮近辺まで散歩していた。ワイゼルとはまた違った煌びやかな街路に何処までも歩けるような気がする。時折、黒の学生服を着た歳下や、同い年位の存在が気になっていたがこの世界にも学校が有るのだろう位にしか受け止めなかった。
そんな中、学生服の男子が肩を掴まれて大柄な学生服を着た生徒に連れて行かれる所を嘉武は見てしまう。
只事では無い雰囲気とはまた違うのだが、見ていて気持ちのいいものでは無い。
(イジメ・・・か? 最悪の事考えて一応、見ておいた方が良いよな・・・)
嘉武は自分の持つどこにでもいる存在感を上手く使い、尾行してみる。
「それにしてもよォ、こんな奴がホントにSクラスかよ?ビビってんのか黙りこくってるしよ」
「分が悪いんじゃねぇの?んまあ、チビの癖に調子乗ってっからこうなるんだよ」
「だよなぁ、結局の所物言うのは実践力だからな。分かってんだろ糞チビ?」
嘉武はギリギリ聞ける距離を歩く。生徒二人から糞チビ扱いを受けている生徒は身長が低い。外套を羽織っていても分かるほどに線も細いが、三人とも同じ学生服だ。体格差はかなりある上、クラスがどうこうは良く分からないがきっと優秀なのだろう。
目の前の生徒がどの様にして彼らに目を付けられたのか、理由は分からないが、流石に見逃すことは出来ない。嘉武はこの世界へ来る前にも正義感を奮ってきた。この世界では、きっと上手くいく。今度こそ上手くいく。そう嘉武は信じた。
そして、目の前の三人はスルッと裏へ消える。何かの能力を行使したに違いない。魔力感知に集中し、誰かの行使した魔力を感じ取る。
そして、人知れずステルスを行使し、同時に消音歩行をする。これらのスキルは<A>の値に比例して効果が上がる。つまりは、嘉武に打って付けスキルである。
思っていたよりも奥まった所に街灯が消え掛けた小広場があった。金網のフェンスの向こうに、学生服三人の姿。
「あーあ、誰かに見られてるみたいだ」
小さい学生服の子が言う。声はまだ幼いのか男らしくはない。そして、目線の先には嘉武。完全に目が合っている。
(気づ・・・くのか・・・。どういう事だよ・・・)
「なわけ、確かに騎士団は巻いた筈・・・」
「そんなんで逃げようたってそうはいかねえぞ?」
嘉武は息を殺した。大柄な学生服の二人も惑わされる。
「違うね。君達は助かったって事だよ。感謝するなら、そこのストーカーさんにしなよ」
そう言って嘉武を直視する。深い瞳の紅に吸い込まれそうになった嘉武は姿を隠した。奴に完全に見透かされている。
(僕の・・・隠匿スキルを上回っているなんて・・・)
「ストーカー?何処にもいねえよ」と生徒二人は反応している。
「今日はもうダメだ、君達もさっさと帰れ。でなければ、今ここで僕がお前達三人を殺すぞ」
そう、それは嘉武含めた三人を、だ。幻覚を見せつけられているかの様な殺意量が最早、素人のソレでは無かった。
「や、やべぇこいつ・・・ホンモノだぁッ・・・!!」
全身に強烈な殺意を受けた学生二人は一目散に逃げ出した。
時間を置いて嘉武が姿を現す。近くで見てみるとどうやら、男ではなさそうだ。被っている外套からは黒い髪が垂れている。
(背は、僕より少し低いくらいか・・・)
「君が来なければ悪の芽が摘めたと言うのに・・・邪魔してくれたね・・・」
「彼らも同じ学校の生徒だろう?第三者に見られては行けない事でもする気だったのか?」
「たかだか、一冒険者に教えてやる事はない」
「君はそうして人を、殺して来たとでも言うのか」
嘉武は直感する。目の前にいる人間は人殺しだと。
「仮に殺していたとしたら何が悪い?説教を受ける様なヘマはしたこと無いんだけど・・・?」
「殺す以外にも方法があるだろうっ!?」
「無いね。だって・・・クッフフ」
「言ってみろよ!」
嘉武は思わず吠える。何を熱くなっているのか自分でもわからない。そして、目の前の人間は被っていた外套をハラりと外し、顔を出した。
「内緒」と指を口元に当てて一瞬で飛び去る。嘉武には追跡出来ないほどの初速に認識した刹那に振り切られていた。
(黒髪の・・・女・・・)
きっと顔を出した理由は挑発。止められるものなら止めてみろという暗示であることが即座に理解できた。それ故、嘉武は熱くなる。絶対に止めてやる。どんな理由があろうと、殺害を愉しむものなど許してはおけないと。
それから三日で彼女の在籍する学校、教室、名前全てを特定した。
学校は王立グランディア学園、Sクラス。名前はヨル・シュナルダスだと判明。嘉武は気配を殺し、透過スキルを使用し学園へ潜入。さらに遠方確認スキルを活用し彼女の姿を確認した。そしてわかったこと、彼女は至って普通の生徒だった。
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