仲間に裏切られパーティ追放された元回復職は復讐者になれるのか

アキタ

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奈落へと・・・

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 ディオーネ地方随一の高さを誇る、誰が何のために打ち立てたのか、分からない前人未踏の塔がある。

 塔内部に跋扈するのはアルケー塔外では見ることは出来ないユニークモンスターばかりで予備知識や今までの攻略方法などは一切通用しない。

 たとえ、塔の外に生息する魔物に似ていた所で内部構造が全く違う上に、冗談じみたバネを有している事から意表を突かれ、油断していた者は御多分に盛れず死を持って体感する事となるだろう。

 俺は今仲間達と共に、アルケーの塔第五層に居た。目の前にはこの世のモノとは思えない様々な魔物がギチギチに詰め込まれたようなキマイラが立ち塞がっている。
 体躯は大きく、損傷した箇所は新たな魔物の細胞がうにうにと損傷箇所を埋めていく無敵のキマイラ。

 第四層の踏破をした冒険者である俺達は幾度と無くキマイラに特攻する。仲間のアストやリアンはキマイラに殴られたり、跳ね返されてはなんとか相手の身を削いだり、抉ったりしている。
 ジリ貧過ぎる。このままじゃ俺の魔力が持ちそうにない。

 史上聞いた事の無い、第五層への入口を発見したというのに俺達はあまり力を残していない。
 第四層の踏破だって史上初の出来事だ。
 まずは、全員の命を持って第五層より帰還する事の方が大事に思えて来る。

「もう良いだろ!? 一度帰還しよう! 五層に辿り着けただけも充分だ! ここで壊滅でもしたら五層の冒険がまた夢幻になるんだぞ!?」

「うるせぇ、回復職が指図すんじゃねぇよ!」

 パーティリーダーのアストは脳を沸騰させ、目の前のキマイラに斬りかかるが、ダメージが通る事が無い。むしろ、損傷箇所より、腕の様なものを伸ばし、アストを殴り飛ばした。

 ドガァン!

 岩に体を打ち付け、瓦礫と共に崩れ落ちるアスト。体を庇った片腕が吹き飛んでいる。
 痛覚無効によって冷静を保っているが、生命の灯火は消えかかっている。

 ここで、俺の出番と言う事になる。

 人体の再生術だ。

 爆発的な力を使うが、一気に腕を回復させる。もしくは、魔力を抑えつつ徐々に腕を回復させるか考えていると。

 ドォォン!! と派手に轟音が鳴る。

「ディン! やられた! 早く回復しろ」

「ディン! こっちもだ! 俺が居ないと全員潰されるぞ!」

 弓職のイナビアと盾職のリアンがキマイラの攻撃を受けていた。その中でもリアンは重症で腹部の開放と共に、両足の欠損を起こしていた。

 こりゃ、やりきれないな……。

「もう駄目だ! 俺の力じゃ間に合わない! 戻ろう!」

「ディン! まずは俺だ! 早くしろって言っているだろう!? 俺が死ぬぞ!?」

 アストは階を増す毎に俺の名前を繰り返し呼ぶ回数も増えてきた人使いの荒い奴だ。調子に乗っては被弾し、痛覚無効をいい事に無鉄砲な突撃ばかり繰り返す。
 何度も何度も再生を繰り返すゾンビ戦法でしぶとくここまで成り上がってきた。

 元々、フリーで冒険者をしていた俺は、いつの間にかこいつらに引っ張られ、共に冒険をし気が付けば冒険者としても名を馳せていた。
 正直、現実味の無い日々を過ごしていた。

 奴らは傲慢極まりない。名誉を好きのままに倫理観は徐々に欠落していった。
 俺はそんなアイツらの変貌していく様をずっと見てきた。そろそろ潮時だと思っていた。

 そして俺は今、味方の回復に手を焼いていた。と言うよりは、仲間の命を選択に、迫られていた。

 俺には分かる。

 元々、回復専門じゃないからな。もう、無理なんだ。

 状況を鑑みて、必ずどちらかにしか回復術はかけられないだろう。

「ディン! だから俺を先にしろ」

 再びキマイラの猛攻を受けた、欠損の酷いリアンが叫ぶ。もう、意識を保っているだけで精一杯だろうに。

「ディン! 俺にしろ! こいつを倒せるのは俺だけなんだ!」

「ディン! サポートはしっかりしてよ! いつまで突っ立ってるのよ!!」

 アストが凄んで俺に指図をする。それと共に俺と同じく魔法職であるヒルルが俺を責め立てる。

「なら約束してくれ! 俺ももう魔力が切れそうだ! 皆を回復させたら撤退すると約束してくれ! 一度帰還しよう!」

「うだうだ言ってねぇで早くしろ!」

「俺を見放すのか、ディン!」

 そんな聞かず耳のアストに俺は全力で回復魔法を唱える。リアンは正直、キマイラから距離も近いし間に合いそうに無い。

「リアン、すまない!!」

「なんでだァァァァァァ!! 俺が、いなきゃ、お前らを誰が護れる!! 俺が居なくなったら、お前らなんて、直ぐにコイツに、殺さっ」


 俺は全力で謝った。アストの腕に注力し、俺の魔力は根こそぎ持っていかれた。
 そして、リアンは俺へと向けて叫び続けるが、最期はキマイラに押し潰された。

 その場で、キマイラはもぞもぞと蠢きリアンを飲み込んだ。

「うおおおおっっ!! 化け物め、リアンを返せよ!!」

 アストが無謀にもリアンを吸収したキマイラに突撃する。
 アストもまだ、全力が出せないだろうに無謀にも程がある。イナビア、ヒルルの遠隔組もアストへ続け猛攻を繰り出す。

「お前ら! いい加減にしろよ! 撤退するぞ!」

「あぁ? 動きが止まってる今、チャンスじゃねぇか!」

 やはりか。アストは単細胞極まりない。

「どうしてわかってくれないんだ!!」

「どうしてアストの方針に従えないの!? そんなに帰りたいのなら、一人で帰ったら!?」

 ヒルルが俺へ言い放つ。クソ、アストの腰巾着め。
 それでもまだ、僕はリアンの為に吠える。リアンの死が無駄になってしまうだなんてあまりにも悲しすぎる。

「リアンの死を無駄にする気か!?」

「お前のせいだろうが!!」

 イナビアが激昴する。理不尽すぎる。お前らが馬鹿みたいに被弾するせいで俺達はリアンを失った。
 ただ、リアンが死んだ事も、リアン本人に問題があると言うのに。

 言ってしまえば、俺の能力にかまけて全然盾を構えず、アタックしてばかり。そりゃ、防御する事を忘れた盾職は土手っ腹に穴を開けられて当然さ。
 ただ、それを全て俺の責任にされて黙っていられるほどプライドは捨てちゃいない。

「リアンが死んだ事まで俺のせいかよ!? 今まで俺があいつの命を何度救ったと思ってんだよ!」

「それがお前の仕事だから当然だろ! リアンを死なせたのは全てお前に責任がある!」

「アスト! 今お前が生きていられるのは誰のおかげだと思っているんだ!?」

「お前みたいな回復職が俺達と行動出来ているのは誰のおかげだ!? 回復職ごとき、戦闘しなくてもいい温室職だろうが!?」

 アストはキマイラの身を割いて、キマイラの腕にようカウンター攻撃はヒルルによって防がれる。

 またその欠損部から細い触手が出てきて、アストの脚を掴み取るが、アストは触手を切り裂く。高位から落下するアストを追ってキマイラの新たな腕が伸ばされるがイナビアが撃墜。

 慎重になれば、こいつらはやれる。なのに、回復有りきの戦闘パターンにチームワークが乱れただけなんだ。個としてのポテンシャルは全員高い。それはリアン含めてだ。

 アストは何とか姿勢を取り戻し、俺に言った。

「もうお前はいい! コイツは俺達で殺る!! 使えない奴は目の前から消え失せろ!!」

 リアンが俺へと向けて怒りの斬撃を放つ。アストの殺意はたった今キマイラから俺に向けられた。

「仲間だろう!?」

「たった今、追放した!」

 キマイラが、陥没させた足場に立っていた俺は、足元を崩されてしまった。瓦礫をつかもうと、俺は上に手を伸ばし、指をかける。

「情けないわね」

「お似合いの最期だ」

 ヒルル、イナビアの俺へ向けられた軽蔑の目。

 その目が、強烈過ぎて俺はギリギリ掛けていた指を離す。

 俺は、空へ伸ばしていた腕を、降ろす。

 そして、第五層から落下した。

 俺は生涯、あの目を忘れられそうにない。
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