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初めての場所
???の誘い2
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…エドは、何をしに来たのかしら。
ようやく腕から開放してくれたと思ったら、今度は隣に座ってニコニコと嬉しそうに私を眺めている。
そんなに私に仕返しできていたことが嬉しいの?ちょっと複雑ね。私ってそんなに迷惑をかけてたかしら?
はぁ、もういいや。エドのことは無視して本の続きを読んでよう…
.........ああ、内容が入ってこない。嬉しいからって、レディーの顔を穴が空きそうなほど凝視するのはいただけないわ。それどころか読書の邪魔をするなんて…
「…ねえ、あきないの?」
「うん?何がだい?」
もう、何も知らないような顔をしても私は騙されないんだからね。
「用事もないのに2年もここに通ってあきないの?って言ってるの」
「ああ、そうだったね。今日は用事があってここに来たんだった。さすがアイシャ、よくわかったね」
えっ?今日は用事があって来たの?いつもは何もないくせに!
それにしても勘違いで褒められるのは、騙しているようで居心地が悪いわ…
「…何の用事?」
私がそう聞くと、エドはどこからか手紙の封筒のようなものを取り出した。
素直に受け取ってみれば、表には王家の紋章が描いてある。
「王家主催の茶会が開かれるのは知ってる?その招待に来たんだ」
もちろん知っている。王族の子供はは6歳になると、年の近い貴族の令息や令嬢を招いて茶会を一度開かなければいけないというしきたりがあるのだから。将来に役立つよう交流を広げる為だろう。
…私はエドの婚約者になってしまったから、絶対参加しなきゃいけないのよね…
エドの誕生日は3ヶ月後だから、確かに今招待状を貰ってもおかしくないわ。
「君の好きなシュランのケーキも用意しておくよ」
シュランとは、今王都で人気のパティスリーで、私のお気に入りの店でもある。
最近は買うのに2時間以上はかかるらしくて、あまり食べられていなかったのだ。
「えっ、本当!?ありがとう!行きたくなかったお茶会も少し楽しみになってきたわ!」
「…本当にどこまでも正直だね?少なくとも王太子の僕の前でそんなこと言うのは君だけだよ」
確かに、こんな無礼なことを言えるのは公爵令嬢の私くらいね。
なんとなく皮肉られてる気はするものの、悪意は感じないので良しとする。
「でも、エドは私の無礼を許してくれるんでしょ?」
「.........ふぅ、無自覚なのが本当に…ああそういえばアイシャ、茶会が終わったら特に誘拐に気を付けるようにね」
まあ、急に話が変わったわね?
「そもそも私は6歳になるまで外に出ちゃいけないのよ?ゆうかいなんて私とは無縁だわ」
えっへん!私は7歳の頃に2度も誘拐されたことがあるのよ!だからもし誘拐されたとしても対処法は把握済みなんだから!
とは私が前世の記憶を持っていることは秘密だから言えないんだけどね。
…うん?あっ、そっか。私は王太子の婚約者だから、誘拐されてしまうかもと思うのも無理はないわね。
「安心して!ゆうかいされたとしても首謀者を捕まえてから帰ってあげるから!」
「…逆に不安にさせてどうするの?」
「大丈夫よ、捕まえられる自信はあるわ!」
「逃げるって選択肢は?」
「そんなの私の辞書にはないに決まってるじゃない!」
するとエドは大きなため息を付いてしまった。
まあっ、信じてないわね?こう見えても私、腕利きの騎士3人が同時に襲いかかってきても魔法で返り討ちにできるんだから。護身術も一通りは身につけているのよ。
「わかった、君に影をつけるよう父上に伝えておくよ」
影とは王家に仕えている、情報収集、護衛または監視を影のように密かに行う者達のことを指している。
「えっ、ダメよ」
そんなの、抜け出すのが面倒になるだけだわ!
「はぁ、どうせ抜け出すのが大変になるとか考えてるのだろうけど、僕のためにも受け入れてくれないかい?」
むむ、なるほど、王太子の婚約者なのに影がついていないとなると、体裁が悪いものね!
というか、何でいつも私の考えがわかるの!?やっぱり道具を使っているんじゃ…?いや、そんなものが存在したらこの世は既に終わっているわね。
「わかったわ。でも、私を見失ったとしても彼らの責任じゃないから罰してないであげて」
「…抜け出す気満々だね。まあいいや。その代わり、僕が君に贈る物は必ず受け取ってね」
「もちろんよ!」
抜け出すことを許してくれたんだから、エドのお願いは聞いておかないと!
「…もう帰らなければいけない時間になってしまったね。じゃあね、また来週に会おう」
「ねえエド、私が婚約者だからって無理しなくてもいいのよ?」
前回の鑑定式の際、エドが歴代最高の魔力保有限度値を持っていることが判明して、ただえさえ王太子だから忙しいのに、魔法の訓練時間も増えてしまった。それなのに変わらず一週間に一回ここに来るのだから、無理しているに違いない。
「逆だよ。ここが僕にとって唯一の癒やしなんだ」
「…そっか」
やっぱり私が気を遣わないように配慮してくれるエドは、王太子としても人としても完璧なんじゃないだろうか。
だけど毎回帰り際に頬へキスしてくるのは、男の子として反則だと思う。
…なんで婚約解消しようと思ってたんだっけな。
ようやく腕から開放してくれたと思ったら、今度は隣に座ってニコニコと嬉しそうに私を眺めている。
そんなに私に仕返しできていたことが嬉しいの?ちょっと複雑ね。私ってそんなに迷惑をかけてたかしら?
はぁ、もういいや。エドのことは無視して本の続きを読んでよう…
.........ああ、内容が入ってこない。嬉しいからって、レディーの顔を穴が空きそうなほど凝視するのはいただけないわ。それどころか読書の邪魔をするなんて…
「…ねえ、あきないの?」
「うん?何がだい?」
もう、何も知らないような顔をしても私は騙されないんだからね。
「用事もないのに2年もここに通ってあきないの?って言ってるの」
「ああ、そうだったね。今日は用事があってここに来たんだった。さすがアイシャ、よくわかったね」
えっ?今日は用事があって来たの?いつもは何もないくせに!
それにしても勘違いで褒められるのは、騙しているようで居心地が悪いわ…
「…何の用事?」
私がそう聞くと、エドはどこからか手紙の封筒のようなものを取り出した。
素直に受け取ってみれば、表には王家の紋章が描いてある。
「王家主催の茶会が開かれるのは知ってる?その招待に来たんだ」
もちろん知っている。王族の子供はは6歳になると、年の近い貴族の令息や令嬢を招いて茶会を一度開かなければいけないというしきたりがあるのだから。将来に役立つよう交流を広げる為だろう。
…私はエドの婚約者になってしまったから、絶対参加しなきゃいけないのよね…
エドの誕生日は3ヶ月後だから、確かに今招待状を貰ってもおかしくないわ。
「君の好きなシュランのケーキも用意しておくよ」
シュランとは、今王都で人気のパティスリーで、私のお気に入りの店でもある。
最近は買うのに2時間以上はかかるらしくて、あまり食べられていなかったのだ。
「えっ、本当!?ありがとう!行きたくなかったお茶会も少し楽しみになってきたわ!」
「…本当にどこまでも正直だね?少なくとも王太子の僕の前でそんなこと言うのは君だけだよ」
確かに、こんな無礼なことを言えるのは公爵令嬢の私くらいね。
なんとなく皮肉られてる気はするものの、悪意は感じないので良しとする。
「でも、エドは私の無礼を許してくれるんでしょ?」
「.........ふぅ、無自覚なのが本当に…ああそういえばアイシャ、茶会が終わったら特に誘拐に気を付けるようにね」
まあ、急に話が変わったわね?
「そもそも私は6歳になるまで外に出ちゃいけないのよ?ゆうかいなんて私とは無縁だわ」
えっへん!私は7歳の頃に2度も誘拐されたことがあるのよ!だからもし誘拐されたとしても対処法は把握済みなんだから!
とは私が前世の記憶を持っていることは秘密だから言えないんだけどね。
…うん?あっ、そっか。私は王太子の婚約者だから、誘拐されてしまうかもと思うのも無理はないわね。
「安心して!ゆうかいされたとしても首謀者を捕まえてから帰ってあげるから!」
「…逆に不安にさせてどうするの?」
「大丈夫よ、捕まえられる自信はあるわ!」
「逃げるって選択肢は?」
「そんなの私の辞書にはないに決まってるじゃない!」
するとエドは大きなため息を付いてしまった。
まあっ、信じてないわね?こう見えても私、腕利きの騎士3人が同時に襲いかかってきても魔法で返り討ちにできるんだから。護身術も一通りは身につけているのよ。
「わかった、君に影をつけるよう父上に伝えておくよ」
影とは王家に仕えている、情報収集、護衛または監視を影のように密かに行う者達のことを指している。
「えっ、ダメよ」
そんなの、抜け出すのが面倒になるだけだわ!
「はぁ、どうせ抜け出すのが大変になるとか考えてるのだろうけど、僕のためにも受け入れてくれないかい?」
むむ、なるほど、王太子の婚約者なのに影がついていないとなると、体裁が悪いものね!
というか、何でいつも私の考えがわかるの!?やっぱり道具を使っているんじゃ…?いや、そんなものが存在したらこの世は既に終わっているわね。
「わかったわ。でも、私を見失ったとしても彼らの責任じゃないから罰してないであげて」
「…抜け出す気満々だね。まあいいや。その代わり、僕が君に贈る物は必ず受け取ってね」
「もちろんよ!」
抜け出すことを許してくれたんだから、エドのお願いは聞いておかないと!
「…もう帰らなければいけない時間になってしまったね。じゃあね、また来週に会おう」
「ねえエド、私が婚約者だからって無理しなくてもいいのよ?」
前回の鑑定式の際、エドが歴代最高の魔力保有限度値を持っていることが判明して、ただえさえ王太子だから忙しいのに、魔法の訓練時間も増えてしまった。それなのに変わらず一週間に一回ここに来るのだから、無理しているに違いない。
「逆だよ。ここが僕にとって唯一の癒やしなんだ」
「…そっか」
やっぱり私が気を遣わないように配慮してくれるエドは、王太子としても人としても完璧なんじゃないだろうか。
だけど毎回帰り際に頬へキスしてくるのは、男の子として反則だと思う。
…なんで婚約解消しようと思ってたんだっけな。
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