ヒルクライム・ラバーズ ~初心者トシヤとクライマーの少女~

すて

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刮目! 夏のコーデのハルカとルナ

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 顔を洗い、朝食を終えたトシヤは水着やバスタオル等をバッグに詰め込み、ハルカからの連絡を今や遅しと待っていた。もちろんそれはマサオも同じで、トシヤに『ハルカちゃんからの連絡はまだか?』と質問のメッセージを送りたい衝動を必死に抑えていた。

 そしてお昼前、トシヤのスマホにハルカからメッセージが入った。

『お待たせ~ 補習終わったよ~』

 補習が終わったとは言え、今すぐ集合出来るわけでは無い。ハルカは学校に行っていたのだから制服姿なのだから、一度家に帰って着替えなければならない。それを考慮すると集まれるのは午後一時ぐらいか……となると昼ご飯はどうする? などと考えるトシヤのスマホにまたメッセージが入った。

『これから帰って着替えるから、十二時半に駅集合で良いかな?』

 そのメッセージを読んでトシヤは首を捻った。ハルカが昼ご飯を食べる時間を忘れているのではないかと。そこでその旨を確認するメッセージを送ったところ、すぐに返事が来た。

『大丈夫。私のせいで遅くなっちゃんたんだから、お昼なんて食べなくても平気! トシヤ君達はお昼食べといてね』

 こんな風に言われて自分だけ昼ご飯を食べる男など存在しないだろう。もちろんハルカはそれを狙ったわけでは無く、本気で言っているのだが、トシヤは極々当たり前な反応を示した。

『じゃあ、みんなでご飯食べようよ。マサオには言っておくからルナ先輩にはハルカちゃんから言っといてくれるかな』

 皆で昼ご飯を食べようというのだ、たとえ時間が少々遅くなっても……いや、それどころか家で既に昼ご飯を食べ始めてしまっていたとしてもマサオは喜んで箸を置くだろう。それよりもルナがまだお昼ご飯を食べていなければ良いのだが……などと考えながらトシヤがマサオにメッセージを送るとマサオからすぐに『了解した』と返事が返って来た。後はルナがまだ昼ご飯を食べていない事を祈るだけだ。まあ、もしルナが昼ご飯を済ませていたとしてもお茶でも飲んで付き合ってくれるとは思うのだが。

          *

 十二時十五分、トシヤは集合場所である駅に着いたのだが、そこには既にマサオの姿があった。

「おう、早いな」

 トシヤが声をかけるとマサオは『何を言ってるんだ』と言わんばかりの顔で答えた。

「バカ野郎、十分前行動は紳士として当然だろうが」

「何が『紳士として当然』だ、こんな時だけ紳士ぶりやがって……」

 トシヤが呆れた顔で言い返すが、マサオも負けてはいない。

「お前こそ何を言ってるんだ、俺はいつも紳士だろうが」

 などとトシヤとマサオが不毛なやり取りをしているうちにハルカとルナが現れ、二人に気付いた様だ。

「おっ待たせー」

 昨日遊べなかった事もあってかハルカはご機嫌な顔で手を振り、ルナは対照的にたおやかな笑顔で詫びる様に言った。

「ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

 こう聞かれてバカ正直な答えを返す男は恐らくいないだろう。マサオも当然のごとく答えた。

「いやー、今来たトコっすよ」

 言いながらもマサオの視線はルナに釘付けだ。ルナの私服姿を見るのは少し前の雨の日曜日にロードバイクのショップに行った時以来、二回目だ。ちなみに今日のルナの服装は白いTシャツに八分丈のスキニーデニムを合わせ、『清楚な夏のお姉さん』という言葉がピッタリだ。

 トシヤはそんなマサオを「また調子の良い事を抜かしやがって……」と思いつつ、視線は当然ながらハルカに向いていた。ハルカはパンチの効いた黄色のTシャツに裾をロールアップしたデニムのショートパンツで太腿を惜しげもなく顕にしている。
 だが、今日はプールに行く、つまりこの後は水着姿を拝むことが出来るのだ。ショートパンツごときで動揺していては神経が持たない。そこでトシヤはハルカから目を逸らし、ルナに尋ねた。

「ルナ先輩、お昼ご飯どうします?」

 ハルカはトシヤが自分より先にルナに声をかけたのが少々気に入らなかったが、この質問は学年が上のルナにするべきだという事ぐらいは分かる……トシヤがハルカから目を逸らした本当の理由は分かっていない様だが。

「そうね、せっかく『しらパー』に行くんだから、向こうで食べましょうか」

「ルナ先輩もお昼食べるの、待っててくれたんですよね」

 どうやらルナも昼ご飯を食べずにいてくれていたらしい。嬉しそうに言うハルカにルナは恥ずかしい様な困った様な顔で言った。

「そんなに大袈裟に言わなくても……せっかく皆で遊びに行くんだから、それぐらいするわよ」

 まあ、それはそうだろう。だが、マサオはまた調子の良い事を言い出した。

「さすがはルナ先輩。やっぱ人格者は違うっすね」

 言うまでもない事だがお昼ご飯を食べずに待っていたのはルナだけでは無い。トシヤも、そしてマサオ自身もだ。だがそんな事はどうでも良い。マサオにとって大事なのはただ一つ、ルナの気を引く事のみ。それ以外は取るに足りない事でしかないのだ。

「嫌ね、マサオ君。本当に大袈裟なんだから……」

 照れ臭さを振り払う様に歩き出したルナをマサオが慌てて追いかけ、トシヤとハルカも二人の後を追った。


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