思い出クリーニング

プラチナまりん

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思い出クリーニング

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ミ~ン  ミ~ン    ミ~ン  ミ~ン !

ミ~ン  ミ~ン    ミ~ン  ミ~ん !     ミーン  ミ…ン  ミン   み…ン    …  

木陰が佇む ベンチ に座り ハンカチで汗を拭いながら 
ぼんやりと見ていた 蝉 が 目の前で 息絶えた。
この暑さでは 蝉の寿命も例年になく短いのでは …なんて事を 男 は思った。
なにせ 今年の夏は 記録的な猛暑 もはや 〈災害〉レベル である。
熱中症で すでに 何人も 亡くなっている。蝉とて たまったもんじゃないはず。
何年も何年も地中の中で暮らし やっとの想いで 地上に 出てきたと思ったら この暑さ。
蝉の哀れさと 今の自分が 妙にリンク しているようで 男は その亡き骸を 
しばらく 見つめていた。

外回りの仕事を職にする 男 にとって 毎日が 地獄の様な日々である。
汗びっしょりの ワイシャツ で お客様と 接するのは 失礼と思い 面会の前には
着替えが出来るよう いつも 鞄の中に もう一着 用意 しているのだが
若干 二日酔い で目覚めた今朝の ドタバタ もあって 今日は うっかり 忘れてしまった。
脇は さながら お寝ショ の様に 世界地図が広がっているし
滝の如く流れ出る 汗 で 背中 は シャツが 強力な接着剤で くっついたみたいだ。
よりによって 本日 お会いするお客様は 〈 特A級〉の お方。
〈B級〉クラスの 客 なら この有様も 笑い話に 接客 出来るのだが
今日は そうにはいかない 何年も 通い詰め やっと 契約に こぎつけ ハンコを頂ける
 記念すべき日なのだ。その喜びもあって 昨夜は 呑み過ぎてしまい この 失態。
「どうしたものか…」ただ今 PM 1:20   約束の時間は PM 2:00 
30分圏内 で ワイシャツ が買える 店 を iPhone で 検索する … 該当 なし。
冷や汗 やら 脂汗 やらで 変なところからも 吹き出て 絞れるほどだ。
「どうしよう…どうしよう…」そんな時 何気なく見た 前方の電柱に
[クリーニング  次の角 左]の 看板       「クリーニング?  …  …  あっ!」
ワイシャツをクリーニングに出していた事を 思い出した!
「確か 引き換えのレシートが 財布の中に…」 なにかと 物持ちがいい性格が 
こう言う時こそ 本領発揮する。「あった!あった!」  しかし 引き換え日が 二か月前。
最近 の 忙しさのあまり うっかり 預けた事も 忘れてしまっていたのだ。
クリーニング屋で多少 探すのに 時間がかかるだろうけど この現状の解決策は 一択のみ
男は レシートを 握り締め 蜃気楼の様に揺れる 自動販売機の角を 左に 曲がった。


50メートル程先に 幾人かの 人影 が見えた。 近づいてみる。
どうやら お店 の前に 並んでいるようだ。 
「クリーニング屋…確かこの辺りだったような気がするけど…」
「クリーニング屋?…に並んでる⁈」
なんと この人達は クリーニング屋に 並んでるいるではないか 人数は 3人
3人くらいなら すぐまわってくるだろうと 思い 最後尾に並んだ。
「それにしても クリーニング屋に人が並ぶなんて…」
あまり目にしない 光景に 少し 戸惑いながら 違和感を感じた。
あからさまに 以前 訪れた時より 店の佇まいが 変わっているのに気が付いた。
クリーニング屋 らしかねぬ 色彩の壁。外からは 一切 店内の様子が わからない窓。
1人ずつ 入って行くのも お店側が そうしているのか……?
……っていうか お店に 入った人達は どこから 出て行ったんだろう?

ほどなくして 男の順番となり 店内へと 足を進めた。










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