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トを追って
郷邑
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森を抜けると、そこには背の低い家が幾らか建っていた。だから、村であろうとサリュは思った。
「サリュ! どうやら、今回はこの世界を救うようだね! 」
と、今にも鼻唄を歌いそうな表情でウサギは言った。先程よりも、はしゃいでいるなと思いながらも、サリュはそんな気分の高揚を少し理解できるような気がした。晴れ上がり、雲もない空。ずっと暗く湿った森の中にいたのだ。いくらウサギだからと言って、いやこのウサギだからこそ、気分は高揚するだろうとサリュは思った。
村の方を良く見ると、ヒトらしい何かが居ることがサリュには分かった。でも、ヒトではない。なぜなら、肌が真っ赤な奴もいれば、この空よりも深みがある青い肌の奴も居た。黄色の奴も黒い奴も居る。上半身の裸の奴も居れば、子どもらしき奴も居る。目新しい何かを見たサリュには、好奇心と少しの恐怖を感じた。目新しいものを見た時には、このような感情を抱くことをサリュは知っていた。サリュがそんなことを感じていると
「サリュ、あれは鬼だね。ぼくは、色んな鬼を見てきたけど、怖いやつらばかりじゃないんだ! だからサリュ、怖がらなくて平気だよ! 優しい鬼もいてね! 今回はどんな鬼なんだろうね、サリュ!! 」
鬼。聞いたことあるような気がするが、見たことは無かった。だって、少しの恐怖を感じているのだから。いや、ただ記憶が無いだけかもしれないとサリュは思った。そんなことよりも、サリュが鬼に恐怖を感じていることを前提にしたウサギの言葉に、サリュは気分を害した。
そんなことを御構い無しに、ウサギは村に向かって歩き始めた。サリュもそれに付いて行く。それが何よりも楽だと知っていたから。
歩いていると、サリュは雲一つない空の下、一つの疑問が浮かんだ。それをウサギに問い掛けた。
「ここで、私は何をすればいい? 誰を救って、どうやって救うのだ? 」
と。ウサギは満足そうに微笑み、答えた。まるで、その問いを待っていたかのように。
「やっぱり、サリュは記憶をなくしてもサリュなんだね! その質問、そろそろ来るんじゃないかなって思ってたんだあ。安心したよお! 記憶がなくなったから、どこかいつもとは違うサリュなんじゃないかなあって、考えてたんだよねえ! でもそうじゃなかったみたい! 」
呆れた。サリュは呆れていた。ウサギの答えは答えになっていなかったからだ。ウサギはこの程度の知能かと思うと同時に、サリュはこのままウサギに順従して良いのかと不安に思った。その不安は直ぐに苛立ちに変わった。そんなことも、分からずにウサギは喋り続ける。
「サリュ、この世界で何をすればいいかだなんて、正直ぼくにも分からない。誰を救うかなんて、サリュが決めればいいと思うし、どうやって救うかなんて、そのヒト次第じゃないかなあ! 」
ピンと来ないその答えに、サリュはさらに不安を感じた。このウサギに頼れないとなると、サリュはどうすれば良いのか知らなかった。現状、サリュは自分一人では何も出来ないことを分かっていた。だからこそ、不安になった。ウサギは、サリュの不安が増していることに気づかず、
「サリュ! とりあえず、確定していることはサリュがこの世界で誰かを救うことなんだよ! だから、まずは救うヒトを見つけるために、ひとけがある所に向かってるじゃないか! サリュ、安心して付いて来てよ! 」
と言った。最後の一言が、サリュの不安を余計に煽った。サリュは、ウサギに順従するしかない自分を恨みつつ、順従しか出来ないことを言い訳に、この状況を正当化した。これで良いのだ、これしか無いのだ、と。
暫く歩くと、村に着いた。出入口らしきものはなく、どこからでも入れそうだ。道も舗装されていない。ただ、家が建っているだけの村。ウサギは躊躇なく、村に立ち入った。ウサギに個人的な空間を配慮することなど出来るはずがないとサリュは思った。同時に、自分が他人の領域に立ち入ることを正当化した。ウサギの所為にすればいいと。
辺りの鬼たちは、サリュたちを凝視した。当たり前だ。肌の色も違ければ、片方は長い耳の獣だ。そりゃ注目されるとサリュは思った。そんな状況でも、ウサギは歩く。そこに歳のとった鬼がサリュに話し掛けた。
「おや、珍しい。旅のお方かな? 」
その物腰が柔らかい言葉に、サリュの中にあった少しの恐怖は少しの安堵に変わった。
「サリュ! どうやら、今回はこの世界を救うようだね! 」
と、今にも鼻唄を歌いそうな表情でウサギは言った。先程よりも、はしゃいでいるなと思いながらも、サリュはそんな気分の高揚を少し理解できるような気がした。晴れ上がり、雲もない空。ずっと暗く湿った森の中にいたのだ。いくらウサギだからと言って、いやこのウサギだからこそ、気分は高揚するだろうとサリュは思った。
村の方を良く見ると、ヒトらしい何かが居ることがサリュには分かった。でも、ヒトではない。なぜなら、肌が真っ赤な奴もいれば、この空よりも深みがある青い肌の奴も居た。黄色の奴も黒い奴も居る。上半身の裸の奴も居れば、子どもらしき奴も居る。目新しい何かを見たサリュには、好奇心と少しの恐怖を感じた。目新しいものを見た時には、このような感情を抱くことをサリュは知っていた。サリュがそんなことを感じていると
「サリュ、あれは鬼だね。ぼくは、色んな鬼を見てきたけど、怖いやつらばかりじゃないんだ! だからサリュ、怖がらなくて平気だよ! 優しい鬼もいてね! 今回はどんな鬼なんだろうね、サリュ!! 」
鬼。聞いたことあるような気がするが、見たことは無かった。だって、少しの恐怖を感じているのだから。いや、ただ記憶が無いだけかもしれないとサリュは思った。そんなことよりも、サリュが鬼に恐怖を感じていることを前提にしたウサギの言葉に、サリュは気分を害した。
そんなことを御構い無しに、ウサギは村に向かって歩き始めた。サリュもそれに付いて行く。それが何よりも楽だと知っていたから。
歩いていると、サリュは雲一つない空の下、一つの疑問が浮かんだ。それをウサギに問い掛けた。
「ここで、私は何をすればいい? 誰を救って、どうやって救うのだ? 」
と。ウサギは満足そうに微笑み、答えた。まるで、その問いを待っていたかのように。
「やっぱり、サリュは記憶をなくしてもサリュなんだね! その質問、そろそろ来るんじゃないかなって思ってたんだあ。安心したよお! 記憶がなくなったから、どこかいつもとは違うサリュなんじゃないかなあって、考えてたんだよねえ! でもそうじゃなかったみたい! 」
呆れた。サリュは呆れていた。ウサギの答えは答えになっていなかったからだ。ウサギはこの程度の知能かと思うと同時に、サリュはこのままウサギに順従して良いのかと不安に思った。その不安は直ぐに苛立ちに変わった。そんなことも、分からずにウサギは喋り続ける。
「サリュ、この世界で何をすればいいかだなんて、正直ぼくにも分からない。誰を救うかなんて、サリュが決めればいいと思うし、どうやって救うかなんて、そのヒト次第じゃないかなあ! 」
ピンと来ないその答えに、サリュはさらに不安を感じた。このウサギに頼れないとなると、サリュはどうすれば良いのか知らなかった。現状、サリュは自分一人では何も出来ないことを分かっていた。だからこそ、不安になった。ウサギは、サリュの不安が増していることに気づかず、
「サリュ! とりあえず、確定していることはサリュがこの世界で誰かを救うことなんだよ! だから、まずは救うヒトを見つけるために、ひとけがある所に向かってるじゃないか! サリュ、安心して付いて来てよ! 」
と言った。最後の一言が、サリュの不安を余計に煽った。サリュは、ウサギに順従するしかない自分を恨みつつ、順従しか出来ないことを言い訳に、この状況を正当化した。これで良いのだ、これしか無いのだ、と。
暫く歩くと、村に着いた。出入口らしきものはなく、どこからでも入れそうだ。道も舗装されていない。ただ、家が建っているだけの村。ウサギは躊躇なく、村に立ち入った。ウサギに個人的な空間を配慮することなど出来るはずがないとサリュは思った。同時に、自分が他人の領域に立ち入ることを正当化した。ウサギの所為にすればいいと。
辺りの鬼たちは、サリュたちを凝視した。当たり前だ。肌の色も違ければ、片方は長い耳の獣だ。そりゃ注目されるとサリュは思った。そんな状況でも、ウサギは歩く。そこに歳のとった鬼がサリュに話し掛けた。
「おや、珍しい。旅のお方かな? 」
その物腰が柔らかい言葉に、サリュの中にあった少しの恐怖は少しの安堵に変わった。
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