4 / 5
トを追って
慢心
しおりを挟む
「なんで、いまさらだ!? 」
「はやく準備せんと!! 」
「前にヤツらが来たのは、まだこの子たちが生まれてなかったときだ!! 」
「また俺たちは半分殺されるんすかっ!! 」
「落ち着くんじゃ! ヤツらは昼行性。まだ時間があるじゃろ!! 」
鬼たちは焦っている。何となく、サリュには状況が理解できた。ヤツらというものが、鬼たちに何かしらするらしい。ヤツらに殺されるから、鬼たちは恐怖しているのかもしれない。サリュはそう考えた。鬼たちは恐怖している。お互い会話している様で噛み合っていない。こういう時は、誰かが冷静にならなければ解決しないことをサリュは知っていた。鬼たちが動揺している中、
「僕たちが、どうにかしましょう!! 」
と甲高い声が集会所に響き渡る。鬼たちは時が止まった様に自身の行動を止め静かになった。一番驚いたのはサリュだ。誰がこの言葉を発したのだろうか。でも、こんな甲高く鬱陶しい声を出せるのをサリュは一人知っていた。いや一匹知っていた。あのウサギだ。今まで、鬼の前では一言も喋っていなかった。いざ言葉を発したと思ったら、これだ。サリュは再びウサギに対して呆れた。それと同時にサリュは思い出した事もあった。そうだ、この世界を救いに来たんだと。
鬼たちも驚いていた。皆、大きな目を見開いてウサギを見ている。
「だから、ぼくたちにあなたたちのことを詳しく聞かせてくださいな! 」
ウサギは言った。大した度胸だなとサリュは、逆に感心もしていた。鬼たちは、お互いに顔を見合わせていた。このウサギを頼っていいものか、などと思っているのだろうとサリュは考えた。暫くして、鬼たちがサリュに事情を話した。
どうやら、食糧を奪われた村の人間は鬼たちを討伐する為に、ヤツらを雇ったらしい。それはそうだ。人間は大抵の場合、やられっぱなしで終わらない事をサリュは知っていた。ヤツらは四人いて、一人は翼が生えていて、一人は獣耳が付いていて、一人はお面を被っている。最後の一人は、額に鉢巻を巻いていて、こいつが頭領だと言う事もサリュは知った。ヤツらが来るのは、今回が初めてではない。前回はうんと昔の事だったらしいが、村に住む鬼たちの半分が殺された。
サリュは思った。逃げればいい。鬼たちは農耕をしていないのだから、移住も簡単であろうと。そして、半分も殺されたのになぜ略奪を続けたのだろうかと。きっと自尊心だろう。人間たちに負けてなるものかという自尊心だろう。その自尊心がどんな犠牲を払っているのかも知らずに。サリュは、自尊心がどれだけ周りに影響するのか、そしてその事がどれだけ愚かな事かを知っていた。だけども、サリュはその思いを鬼たちに伝えなかった。だって、鬼たちが自尊心を持とうが持たまいが、サリュにとってはどうでもよかったからだ。
「鬼さんたちは、家の戸を閉めといてください! その4人が入って来ないように。それだけで大丈夫! あとはぼくたちに任せて! 」
ウサギは場違いに明るく言った。鬼たちが輝きを持ってウサギを見ている事が、サリュには分かった。きっとウサギに従うしかないのだろう、それくらい窮地に立っているのだろうとサリュは思った。
「ヤツらは朝方来ると思います。どうぞ、それに備えてここでお休み下さい 」
赤い鬼がそう言った。優しい声が更に優しくなったとサリュは思った。そんな事をサリュが思っていると、鬼たちは子どもを連れて集会所を後にした。サリュがどのようにヤツらを対処するのかも聞かずに。その事がサリュには不思議でならなかった。何も聞かずに、自分の命が預けられるのかと。これも文化の違いなのかと。
鬼たちが集会所から居なくなると、サリュはずっと言いたかった事をウサギに言った。
「思い切って勝負に出たわね。 」
と。ウサギはその言葉に直ぐ答えた。
「サリュ、ぼくはね、勝負は勝てるもんだと思ってるんだ! だってね、勝てる勝負しかしないんだから! 」
笑いながら言う。サリュは、ウサギがヤツらをどうにかしてくれるだろうと考えた。それ程、ウサギを頼もしく思えたのだった。それと同時にサリュは急に眠気を感じた。頼もしさを感じると眠気を感じる事をサリュは知っていた。寝具は用意されていなかったから、サリュはそのまま床に寝転んだ。そして、このまま寝てしまおうかとサリュは思った。そんなことを思っていると、ウサギがサリュの顔を覗き込んでいう。
「さあ! サリュ! 誰を救おうか!? 鬼さんたちを救うかい? それとも人間たちを救うかい? うーん、ヤツらを救う…? サリュが決めておくれよ! 」
サリュは理解できなかった。だって、サリュには答えが出ていたからだ。当然の様に鬼たちを救うと思っていたからだ。笑顔で問い掛けてきたウサギに、サリュは少しの狂気を感じた。ウサギが鬼たちをどうにかすると言ったじゃないか。サリュは訳が分からなかった。問い掛けの意図が分からなかった。
何も答えないサリュを見て、ウサギは続けて言った。
「うーん、やっぱり鬼さんたちを救った方がいいよね! だって、4人倒すだけで鬼たちは救えるもんね! 」
ウサギの言葉に考えの差異をサリュは感じた。だけれども、ウサギは鬼たちを救う気だとサリュは思った。それで良いのだとサリュは思った。思い掛けない事をするには、大変な労力を必要とする事をサリュは知っていた。だから、流れ通りに鬼たちを救いたかった。鬼たちを救う事が今までの流れからいって当然だとサリュは考えた。
ウサギが何をしようとしているのか、ヤツらをどう対処するのか、サリュは気になっていた。だけども、サリュは眠かった。聞かなければいけないのは知っていたが、眠気には勝てなかった。サリュは、眠気に負けて眼を閉じた。
「起きて! サリュ! 起きて! 朝だよ! 勝負の時間だよ!! 」
甲高い声を聞いて、サリュは眼を覚ます。鬱陶しかったが、大事な用を寝過ごすよりはよっぽどマシだと思った。辺りはまだ薄暗かった。
「はやく準備せんと!! 」
「前にヤツらが来たのは、まだこの子たちが生まれてなかったときだ!! 」
「また俺たちは半分殺されるんすかっ!! 」
「落ち着くんじゃ! ヤツらは昼行性。まだ時間があるじゃろ!! 」
鬼たちは焦っている。何となく、サリュには状況が理解できた。ヤツらというものが、鬼たちに何かしらするらしい。ヤツらに殺されるから、鬼たちは恐怖しているのかもしれない。サリュはそう考えた。鬼たちは恐怖している。お互い会話している様で噛み合っていない。こういう時は、誰かが冷静にならなければ解決しないことをサリュは知っていた。鬼たちが動揺している中、
「僕たちが、どうにかしましょう!! 」
と甲高い声が集会所に響き渡る。鬼たちは時が止まった様に自身の行動を止め静かになった。一番驚いたのはサリュだ。誰がこの言葉を発したのだろうか。でも、こんな甲高く鬱陶しい声を出せるのをサリュは一人知っていた。いや一匹知っていた。あのウサギだ。今まで、鬼の前では一言も喋っていなかった。いざ言葉を発したと思ったら、これだ。サリュは再びウサギに対して呆れた。それと同時にサリュは思い出した事もあった。そうだ、この世界を救いに来たんだと。
鬼たちも驚いていた。皆、大きな目を見開いてウサギを見ている。
「だから、ぼくたちにあなたたちのことを詳しく聞かせてくださいな! 」
ウサギは言った。大した度胸だなとサリュは、逆に感心もしていた。鬼たちは、お互いに顔を見合わせていた。このウサギを頼っていいものか、などと思っているのだろうとサリュは考えた。暫くして、鬼たちがサリュに事情を話した。
どうやら、食糧を奪われた村の人間は鬼たちを討伐する為に、ヤツらを雇ったらしい。それはそうだ。人間は大抵の場合、やられっぱなしで終わらない事をサリュは知っていた。ヤツらは四人いて、一人は翼が生えていて、一人は獣耳が付いていて、一人はお面を被っている。最後の一人は、額に鉢巻を巻いていて、こいつが頭領だと言う事もサリュは知った。ヤツらが来るのは、今回が初めてではない。前回はうんと昔の事だったらしいが、村に住む鬼たちの半分が殺された。
サリュは思った。逃げればいい。鬼たちは農耕をしていないのだから、移住も簡単であろうと。そして、半分も殺されたのになぜ略奪を続けたのだろうかと。きっと自尊心だろう。人間たちに負けてなるものかという自尊心だろう。その自尊心がどんな犠牲を払っているのかも知らずに。サリュは、自尊心がどれだけ周りに影響するのか、そしてその事がどれだけ愚かな事かを知っていた。だけども、サリュはその思いを鬼たちに伝えなかった。だって、鬼たちが自尊心を持とうが持たまいが、サリュにとってはどうでもよかったからだ。
「鬼さんたちは、家の戸を閉めといてください! その4人が入って来ないように。それだけで大丈夫! あとはぼくたちに任せて! 」
ウサギは場違いに明るく言った。鬼たちが輝きを持ってウサギを見ている事が、サリュには分かった。きっとウサギに従うしかないのだろう、それくらい窮地に立っているのだろうとサリュは思った。
「ヤツらは朝方来ると思います。どうぞ、それに備えてここでお休み下さい 」
赤い鬼がそう言った。優しい声が更に優しくなったとサリュは思った。そんな事をサリュが思っていると、鬼たちは子どもを連れて集会所を後にした。サリュがどのようにヤツらを対処するのかも聞かずに。その事がサリュには不思議でならなかった。何も聞かずに、自分の命が預けられるのかと。これも文化の違いなのかと。
鬼たちが集会所から居なくなると、サリュはずっと言いたかった事をウサギに言った。
「思い切って勝負に出たわね。 」
と。ウサギはその言葉に直ぐ答えた。
「サリュ、ぼくはね、勝負は勝てるもんだと思ってるんだ! だってね、勝てる勝負しかしないんだから! 」
笑いながら言う。サリュは、ウサギがヤツらをどうにかしてくれるだろうと考えた。それ程、ウサギを頼もしく思えたのだった。それと同時にサリュは急に眠気を感じた。頼もしさを感じると眠気を感じる事をサリュは知っていた。寝具は用意されていなかったから、サリュはそのまま床に寝転んだ。そして、このまま寝てしまおうかとサリュは思った。そんなことを思っていると、ウサギがサリュの顔を覗き込んでいう。
「さあ! サリュ! 誰を救おうか!? 鬼さんたちを救うかい? それとも人間たちを救うかい? うーん、ヤツらを救う…? サリュが決めておくれよ! 」
サリュは理解できなかった。だって、サリュには答えが出ていたからだ。当然の様に鬼たちを救うと思っていたからだ。笑顔で問い掛けてきたウサギに、サリュは少しの狂気を感じた。ウサギが鬼たちをどうにかすると言ったじゃないか。サリュは訳が分からなかった。問い掛けの意図が分からなかった。
何も答えないサリュを見て、ウサギは続けて言った。
「うーん、やっぱり鬼さんたちを救った方がいいよね! だって、4人倒すだけで鬼たちは救えるもんね! 」
ウサギの言葉に考えの差異をサリュは感じた。だけれども、ウサギは鬼たちを救う気だとサリュは思った。それで良いのだとサリュは思った。思い掛けない事をするには、大変な労力を必要とする事をサリュは知っていた。だから、流れ通りに鬼たちを救いたかった。鬼たちを救う事が今までの流れからいって当然だとサリュは考えた。
ウサギが何をしようとしているのか、ヤツらをどう対処するのか、サリュは気になっていた。だけども、サリュは眠かった。聞かなければいけないのは知っていたが、眠気には勝てなかった。サリュは、眠気に負けて眼を閉じた。
「起きて! サリュ! 起きて! 朝だよ! 勝負の時間だよ!! 」
甲高い声を聞いて、サリュは眼を覚ます。鬱陶しかったが、大事な用を寝過ごすよりはよっぽどマシだと思った。辺りはまだ薄暗かった。
0
あなたにおすすめの小説
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる