獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

どんぶらこっこ

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 むか~し昔。ではなく最近のお話です。

 介抱した少女が目を覚まし、あとは医師の元で治療を続けるだけとなったので、他の者達は取敢えず日常に戻っていました。少女のあれやこれやは回復してからのお話です。

 その日は前日までの曇り空から一転。とても良く晴れたお洗濯日和でした。
 そんな日にお洗濯をしないという選択肢は、ここの山の民にはありません。
 とある民家に二人きりで住んでいる、おじいさんとおばあさんも例外ではありません。
 ですので、おばあさんは山狩りへ、おじいさんは川へお洗濯に出かけました。本当の事を言うと、共同の洗濯場が村にはあります。しかしおじいさんは敢えて川へ向かいます。
 なんと前日までの冷え込みで、粗相をしてしまったのです。これでは恥ずかしくて遠くても川へ行くのは頷けます。

 「いや~、しかし年には勝てんのう」

 そう言いながらジャブジャブ、ジャブジャブ。証拠隠滅を図っています。
 すると川上から、どんぶらこっこ、どんぶらこっこ。と三巳が水をガボガボしながら流れてきました。
 おじさんはそれを見て、優しく見守ります。
 とうとう、三巳はおじいさんの前を通り過ぎました。
 それでもおじいさんは動じません。
 
 それはそうでしょう。ガボガボしながらも楽しそうに笑いこける三巳を止める様な無粋な人は、ここの山の民にはいません。

 「もうじき昼餉じゃし、直ぐ帰るんじゃぞー」

 両手をメガホンにして叫びます。もういい年ですので咽ました。

 「ばがったー!」

 三巳はガボガボしながら答えました。

 「あ。しまった。わしの敷布流れてもうた」

 三巳の流れた方を見ると、三己の後ろを追いかける様におじいさんの布団が流れていました。

 「敷布が流されたー!回収しといてくれるかー?」

 おじいさんが慌てて三巳に頼みます。もうすでに豆粒程に見えるほど遠く離れてしまっていましたが、三巳には問題ありません。

 「まがせどー!」

 ガボガボしながら快く了承します。

 こうして、おじいさんの川に揉み洗いされて綺麗になった敷布は、三巳の手により回収されて戻ってきましたとさ。





 「ロド爺。そろそろお締めだな」

 なお、鼻の良い三巳にはすっかりバレていたので、部屋の片隅でシメジを生やしたおじいさんは、その後忠告に従いお締めをしました。
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