11 / 372
本編
診療所にて〜謎の少女④〜
しおりを挟む
少女が目を覚ましてから更に5日が経ちました。
あれからご飯をモリモリ食べて、薬湯や薬を飲んで大分骨張った体がマシになってきました。
「ご馳走様でした」
掠れてはいますが声もしっかり出る様になっています。
ずっと看病していた三巳も嬉しそうにニコニコします。尻尾もパタパタ。耳もピコピコ。元気に動かしています。
「凄いな。もう全粥まで食べられるようになった」
「すごい、すご~い!」
「はやい、はや~い!」
三巳に続いて遊びに来ていたちびっ子たちが囃し立てます。
少女が目を覚ましてからも、相変わらず山の民は入れ替わり立ち代わりお見舞いにやってきます。
最初は怖がって小刻みに震えていた少女でしたが、良い人達なので5日も経てば少しは慣れました。
特にここ数日天気が良くなくて、暇を持て余したちびっ子達が入り浸って賑やかです。
流石にちびっ子にまで怖がったりしません。笑顔で迎え入れます。
「ふふ。だってとっても美味しいから食が進むのよ」
「そう言って貰えると作り甲斐あるな」
少女の素直な感想に、嬉しくなった三巳は尻尾をばさりと大きく振りました。
近くにいたちびっ子が巻き込まれてきゃっきゃっと喜んでいます。
「声も大分良くなったし、そろそろ色々医師と話さないとな」
三巳がそう提示した途端、少女は顔を曇らせて俯いてしまいます。
(そうよね。余所者の私を治療だけしてはい終わり有難う。という訳にはいかないわよね)
自分の事を話す事で、今の久しぶりな人間らしい一時が失われるのではないかと思い気分は沈む一方です。
「ん?まだ具合悪いか?
火傷の治療の話したかったんだけど……もう少し元気になってからのが良いか?」
「え?火傷?」
「なんだ?火傷負ってるって気付いて無かったのか?」
「それは勿論判っているけど……、私の事を聞くんじゃないの?」
「あ!そういえばまだ名前聞いて無かったな!」
三巳は今思い出したと目を大きく開けて、耳と尻尾をピーンと立たせました。
忘れていた自分にビックリしたのです。
少女はそんな三巳に脱力してしまいました。
「なんて呼べばいいんだ?」
脱力している少女のベッドに上体をぽてっと寝かせて、少女を仰ぎ見ながらキラキラした目で尋ねると、少女は苦笑して答えます。
「リリって呼んで」
「リリだな。判った。
三巳と似てるな。お揃いだな」
少女の名乗りは正式名称ではありませんでしたが、そんな事は関係ありません。
少女を「リリ」と呼べるようになった事に意義があるのです。
しかも三巳と言葉尻が似ている事で、三巳のテンションはアゲアゲです。
「にてる、にてう~」
「おそろい~いいな~ミオラもおそろいがよかった~」
ちびっ子達もテンションアゲアゲです。
リリは優しくしてくれる三巳達に嬉しくなって、目尻が潤んでしまいました。
(今はまだ、今までの事話せる程心が立ち直ってないけど、ここでなら話せるようになるかもしれない)
楽しそうな三巳達に釣られる様に心からの笑みが自然と作られます。
「それじゃこれからの治療方針はロキ医師と話してくれ。
回復魔法の事も話さないといけないから三巳も同席するけど良いか?」
「勿論、三巳がいてくれた方が心強いわ」
「そうか。それは嬉しいな」
こうしてロキ医師と相談した結果、回復魔法を掛けるのは一月後を目安にする事になったのでした。
体のお肉が少なすぎて回復魔法を使うには障りがあるそうです。
がっかりした三巳の触り心地の良い頭を、リリがよしよしと撫でて慰めている状況に、ロキ医師は好々爺然とした風貌で見守りました。
あれからご飯をモリモリ食べて、薬湯や薬を飲んで大分骨張った体がマシになってきました。
「ご馳走様でした」
掠れてはいますが声もしっかり出る様になっています。
ずっと看病していた三巳も嬉しそうにニコニコします。尻尾もパタパタ。耳もピコピコ。元気に動かしています。
「凄いな。もう全粥まで食べられるようになった」
「すごい、すご~い!」
「はやい、はや~い!」
三巳に続いて遊びに来ていたちびっ子たちが囃し立てます。
少女が目を覚ましてからも、相変わらず山の民は入れ替わり立ち代わりお見舞いにやってきます。
最初は怖がって小刻みに震えていた少女でしたが、良い人達なので5日も経てば少しは慣れました。
特にここ数日天気が良くなくて、暇を持て余したちびっ子達が入り浸って賑やかです。
流石にちびっ子にまで怖がったりしません。笑顔で迎え入れます。
「ふふ。だってとっても美味しいから食が進むのよ」
「そう言って貰えると作り甲斐あるな」
少女の素直な感想に、嬉しくなった三巳は尻尾をばさりと大きく振りました。
近くにいたちびっ子が巻き込まれてきゃっきゃっと喜んでいます。
「声も大分良くなったし、そろそろ色々医師と話さないとな」
三巳がそう提示した途端、少女は顔を曇らせて俯いてしまいます。
(そうよね。余所者の私を治療だけしてはい終わり有難う。という訳にはいかないわよね)
自分の事を話す事で、今の久しぶりな人間らしい一時が失われるのではないかと思い気分は沈む一方です。
「ん?まだ具合悪いか?
火傷の治療の話したかったんだけど……もう少し元気になってからのが良いか?」
「え?火傷?」
「なんだ?火傷負ってるって気付いて無かったのか?」
「それは勿論判っているけど……、私の事を聞くんじゃないの?」
「あ!そういえばまだ名前聞いて無かったな!」
三巳は今思い出したと目を大きく開けて、耳と尻尾をピーンと立たせました。
忘れていた自分にビックリしたのです。
少女はそんな三巳に脱力してしまいました。
「なんて呼べばいいんだ?」
脱力している少女のベッドに上体をぽてっと寝かせて、少女を仰ぎ見ながらキラキラした目で尋ねると、少女は苦笑して答えます。
「リリって呼んで」
「リリだな。判った。
三巳と似てるな。お揃いだな」
少女の名乗りは正式名称ではありませんでしたが、そんな事は関係ありません。
少女を「リリ」と呼べるようになった事に意義があるのです。
しかも三巳と言葉尻が似ている事で、三巳のテンションはアゲアゲです。
「にてる、にてう~」
「おそろい~いいな~ミオラもおそろいがよかった~」
ちびっ子達もテンションアゲアゲです。
リリは優しくしてくれる三巳達に嬉しくなって、目尻が潤んでしまいました。
(今はまだ、今までの事話せる程心が立ち直ってないけど、ここでなら話せるようになるかもしれない)
楽しそうな三巳達に釣られる様に心からの笑みが自然と作られます。
「それじゃこれからの治療方針はロキ医師と話してくれ。
回復魔法の事も話さないといけないから三巳も同席するけど良いか?」
「勿論、三巳がいてくれた方が心強いわ」
「そうか。それは嬉しいな」
こうしてロキ医師と相談した結果、回復魔法を掛けるのは一月後を目安にする事になったのでした。
体のお肉が少なすぎて回復魔法を使うには障りがあるそうです。
がっかりした三巳の触り心地の良い頭を、リリがよしよしと撫でて慰めている状況に、ロキ医師は好々爺然とした風貌で見守りました。
22
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?
鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。
楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。
皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!
ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。
聖女はあちらでしてよ!皆様!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる