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本編
共にいたいから
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リリは無類の動物好きです。
取り分け犬科の動物が一等好きです。
それはきっと幼い頃から共に育った犬のネルビーが多大な影響となっている事でしょう。
そして、三巳は獣神ですが、その外見は犬科のものです。
そんな三巳が今、リリを伺う様に耳を垂らして上目遣いで見ています。落ち着きなく毛先を揺らす尻尾が、リリの一挙手一投足を感じて時折ビグリと跳ねます。
そして極め付けに三巳の背後に仔犬な柴犬(茶)の姿が透けて見えます。リリの目に。
「~!!っっ!」
リリは今最大限に悶えと葛藤と闘っています。
(可愛っ!あ、いえ神様に可愛いは不敬よねっ。
不敬?不敬かしら。だって三巳だし。でも神様で、雲の上の存在で……。あら?でも目の前にいるのよね。ずっと一緒にロキ医師の所でご飯食べてて。
あれ?でも三巳はロキ医師の家族じゃ無いのよね。なのに一緒に住んでて?え?でも三巳の部屋ってそう言えば住居スペースというよりお客様用って感じだわ。
……もしかして私の為にずっと側に居てくれてた?)
今まで心の余裕が無くて気付かなかった事が、ネルビーという心のシコリが消えた事によって見えてきました。
改めて三巳を具に観察すれば、何を今更迷う必要があったのでしょうか。
今まで散々一緒に笑い合って過ごして来ました。
それは三巳が三巳だったから。
いつだって側にいてくれたから。過去を思い出して辛い時、悪夢に魘されて落ち込んだ時、いつも三巳の底抜けに明るい笑顔をくれた。
それって神様だからとか関係無い事だと、リリはしっかりはっきり意識する事が出来ました。
「ねえ、三巳。
私、今まで通り一緒にいて良いのかな」
リリはモジモジしている三巳の手をしっかり握ると、緩りと微笑み言いました。
それは疑問形な文面に関わらず、断定の意思を感じるものでした。
それを聞いた途端三巳はパァー!と笑顔になって、元気に尻尾をブンブカ、耳をピコピコ動かしました。
「いつも通りが良いんだ!」
そしてガバチョとばかりに抱きつきます。
リリも嬉しそうに抱き返せば、ネルビーが混ぜてとばかりに三巳の背にどーん!とぶつかる様に乗って来ました。
「わふ~ん!」
「のわっ!?」
「ふえ!?」
戯れて三巳の上で踏み踏み動き回るネルビーに、三巳はリリを押し倒して潰してしまわない様に、しっかりバランスを維持します。
ネルビーはフンフンと三巳の匂いを嗅ぐと、口端を上げてパァーっと嬉しそうな顔をしました。
『凄い良い匂いする!』
興奮からか、大きく口を開けて人語で叫んだネルビー。これにリリはとっても驚きます。
「ネルビー!貴方言葉が喋れる様になったの!?」
そうです。熊五郎の例からもわかる様に、動物は本来言葉を介しません。
そしてネルビーは犬です。リリの記憶の限り犬以外になった事がありません。
それが今、確かな人語としてリリの耳に届いたので驚くのも無理はありません。
『おれの言葉わかるのか!?凄い!おれ到頭モンスターになったんだな!』
そして驚いたのは当の本犬、ネルビーも同様でした。
三巳から飛び降りると、景気良くジャンプしながらグルグルを駆け回ります。
「えっ!?待って!?モンスターってどう言う事なの!?」
『あのな、おれ獣の神に助けられた。
そんでな、直ぐリリのとこ戻るより修行してモンスターになったらもっと長くリリといれるって教わってな、だからおれ頑張った!いっぱい頑張ったんだぞ!』
物凄く誇らしげに胸を逸らしてフフンと自慢するネルビーですが、余りに余りな内容にリリは空いた口が塞がりません。そして遂には悲痛な顔でネルビーを抱きしめます。
「ああ……!ネルビーっ、私の為にっっ」
『?何でリリ悲しい顔してる?おれ悪い事したか??
おれはリリといっぱい一緒にいられるの嬉しいぞ!』
必死にリリを慰めるネルビーに、リリはヘニャリと泣き笑いを浮かべます。でもやっぱり素直に喜べません。
モンスターは人を襲うもの。そう人の中では認識されています。
タウろんの様に気性の穏やかな存在もいますが、山の外ではモンスターと言えば討伐対象なのです。
もし万が一ネルビーが山の外の人間に見つかったらと思うと、怖くて震えてしまいます。
「ネルビー、お願いよ。決してこの山より外には行かないでね」
『??おれ強くなった!もうリリを一人にしないぞ!
リリが行くとこがおれの行くとこだ!』
「うん……!うん!もう離れて行かないでねっ。
……お願いよっ……」
リリはもう離すものかと言わんばかりにネルビーの背に顔を埋めて言いました。
どうやら悲しみは治った様です。
ネルビーは安心してニンマリ笑いました。
リリとネルビーの再会に、ハンカチ片手にウンウン頷きながら涙ちょちょ切れていた三巳達です。
「……。
あー、感動の場面に水刺すのも何なんだけどなー。
ネルビーはモンスターじゃないぞー?」
けれど三巳は逡巡した結果、そっと片手を上げて間違いを指摘しました。
「へ?」
「??わふ?」
取り分け犬科の動物が一等好きです。
それはきっと幼い頃から共に育った犬のネルビーが多大な影響となっている事でしょう。
そして、三巳は獣神ですが、その外見は犬科のものです。
そんな三巳が今、リリを伺う様に耳を垂らして上目遣いで見ています。落ち着きなく毛先を揺らす尻尾が、リリの一挙手一投足を感じて時折ビグリと跳ねます。
そして極め付けに三巳の背後に仔犬な柴犬(茶)の姿が透けて見えます。リリの目に。
「~!!っっ!」
リリは今最大限に悶えと葛藤と闘っています。
(可愛っ!あ、いえ神様に可愛いは不敬よねっ。
不敬?不敬かしら。だって三巳だし。でも神様で、雲の上の存在で……。あら?でも目の前にいるのよね。ずっと一緒にロキ医師の所でご飯食べてて。
あれ?でも三巳はロキ医師の家族じゃ無いのよね。なのに一緒に住んでて?え?でも三巳の部屋ってそう言えば住居スペースというよりお客様用って感じだわ。
……もしかして私の為にずっと側に居てくれてた?)
今まで心の余裕が無くて気付かなかった事が、ネルビーという心のシコリが消えた事によって見えてきました。
改めて三巳を具に観察すれば、何を今更迷う必要があったのでしょうか。
今まで散々一緒に笑い合って過ごして来ました。
それは三巳が三巳だったから。
いつだって側にいてくれたから。過去を思い出して辛い時、悪夢に魘されて落ち込んだ時、いつも三巳の底抜けに明るい笑顔をくれた。
それって神様だからとか関係無い事だと、リリはしっかりはっきり意識する事が出来ました。
「ねえ、三巳。
私、今まで通り一緒にいて良いのかな」
リリはモジモジしている三巳の手をしっかり握ると、緩りと微笑み言いました。
それは疑問形な文面に関わらず、断定の意思を感じるものでした。
それを聞いた途端三巳はパァー!と笑顔になって、元気に尻尾をブンブカ、耳をピコピコ動かしました。
「いつも通りが良いんだ!」
そしてガバチョとばかりに抱きつきます。
リリも嬉しそうに抱き返せば、ネルビーが混ぜてとばかりに三巳の背にどーん!とぶつかる様に乗って来ました。
「わふ~ん!」
「のわっ!?」
「ふえ!?」
戯れて三巳の上で踏み踏み動き回るネルビーに、三巳はリリを押し倒して潰してしまわない様に、しっかりバランスを維持します。
ネルビーはフンフンと三巳の匂いを嗅ぐと、口端を上げてパァーっと嬉しそうな顔をしました。
『凄い良い匂いする!』
興奮からか、大きく口を開けて人語で叫んだネルビー。これにリリはとっても驚きます。
「ネルビー!貴方言葉が喋れる様になったの!?」
そうです。熊五郎の例からもわかる様に、動物は本来言葉を介しません。
そしてネルビーは犬です。リリの記憶の限り犬以外になった事がありません。
それが今、確かな人語としてリリの耳に届いたので驚くのも無理はありません。
『おれの言葉わかるのか!?凄い!おれ到頭モンスターになったんだな!』
そして驚いたのは当の本犬、ネルビーも同様でした。
三巳から飛び降りると、景気良くジャンプしながらグルグルを駆け回ります。
「えっ!?待って!?モンスターってどう言う事なの!?」
『あのな、おれ獣の神に助けられた。
そんでな、直ぐリリのとこ戻るより修行してモンスターになったらもっと長くリリといれるって教わってな、だからおれ頑張った!いっぱい頑張ったんだぞ!』
物凄く誇らしげに胸を逸らしてフフンと自慢するネルビーですが、余りに余りな内容にリリは空いた口が塞がりません。そして遂には悲痛な顔でネルビーを抱きしめます。
「ああ……!ネルビーっ、私の為にっっ」
『?何でリリ悲しい顔してる?おれ悪い事したか??
おれはリリといっぱい一緒にいられるの嬉しいぞ!』
必死にリリを慰めるネルビーに、リリはヘニャリと泣き笑いを浮かべます。でもやっぱり素直に喜べません。
モンスターは人を襲うもの。そう人の中では認識されています。
タウろんの様に気性の穏やかな存在もいますが、山の外ではモンスターと言えば討伐対象なのです。
もし万が一ネルビーが山の外の人間に見つかったらと思うと、怖くて震えてしまいます。
「ネルビー、お願いよ。決してこの山より外には行かないでね」
『??おれ強くなった!もうリリを一人にしないぞ!
リリが行くとこがおれの行くとこだ!』
「うん……!うん!もう離れて行かないでねっ。
……お願いよっ……」
リリはもう離すものかと言わんばかりにネルビーの背に顔を埋めて言いました。
どうやら悲しみは治った様です。
ネルビーは安心してニンマリ笑いました。
リリとネルビーの再会に、ハンカチ片手にウンウン頷きながら涙ちょちょ切れていた三巳達です。
「……。
あー、感動の場面に水刺すのも何なんだけどなー。
ネルビーはモンスターじゃないぞー?」
けれど三巳は逡巡した結果、そっと片手を上げて間違いを指摘しました。
「へ?」
「??わふ?」
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