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本編
再会と
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勢いよく飛び出した影。それが何かを理解したリリは、両目をいっぱいに見開き涙を溢れさせました。
その目も顔面にダイブしてきた影の腹毛で埋まり見えなくなります。リリは自ら両手を広げて迎え入れ、その涙を腹毛に押し付ける様に強く、強く、でも優しく抱き締めます。
「ネルビー……!!」
「わふっ!」
リリが感極まって「ネルビー」と呼んだ影。それは真っ黒な毛並みの犬でした。犬種で言えばボーダーコリーに似ています。
「ネルビー!本当に本物のネルビーよね!?夢でも幻でも無いわよね!?
ああ……!もう会えないかと思ってたわ!ネルビーっネルビーっ!」
リリはネルビーを降ろすとその姿を、感極まって視界が歪むその眼に焼き付ける様に、瞬きも忘れて見続けます。
「きゅ~んっヘッヘッ!」
そのリリの涙を拭うべく、ネルビーはその涙に濡れた顔を頻りに舐め回しました。
「ふふっふふふっ擽ったいわネルビー」
久しく触れ合えなかった、諦めていたその温もりに、リリは漸く心から安堵した様にホッと笑みを溢しました。
「ネルビー良く体を見せて?どこも怪我してない?
……あら?ネルビー貴方ちょっと見ないうちにとっても身体つきがしっかりしたのね?怪我も無い様だし……。それに今更だけど」
ネルビーに目立った外傷が無い事を確認出来たリリは、改めて周囲の様子に気を配る事が出来る様になりました。そして本当に今更ながらに目の前にサラマンダーがいる事を思い出しました。
記憶のある限り大凡接点の無い筈のネルビーとサラマンダー。
けれど見間違いで無ければネルビーは確かにサラマンダーの背から飛び出して来ました。
「あの、もしかして貴方がネルビーを助けて連れて来てくれたんですか?」
リリがおずおずと聞くと、感動の再会を黙って見守っていたサラちゃんが姿勢を戻して首を横に振りました。
『いいや違う。我は連れて来ただけだ。その者と共に居られたのは獣神様である』
厳かに伝えられた内容に、リリとネルビー以外が一斉に三巳を見ました。
三巳はその視線を受けてキョトンと目を瞬かせた後、ハッとして首と手を横に振りました。勘違いされてると気付いて「違うぞ」の意思表示です。リリの感動の再会を邪魔しない為に、無言でボディランゲージです。ちょっと毛がサワだっています。
「獣人?でも何でサラマンダーである貴方が様付け?」
『獣人では無い。獣神様、獣の神様であらせられる』
威厳を以って泰然と構え放たれた衝撃の言葉に、リリは体を震わせて目を見開きました。
それもそうでしょう。神々は、本来滅多に人の目に触れません。精霊や妖精でさえ滅多にお目に掛かれないのに、それより高位の存在で、且つ数少ない神々は一生お目に掛かれないのが普通なのです。
それが今、目の前の愛犬ネルビーが実際に出逢い、あまつさえお助け頂いたと言う。そんな奇跡はもう、言葉も無く驚く他ありません。
ネルビーを凝視すると、当のネルビーは凄い事がわからない様で、首を傾げてハッハと舌を出しています。
『?何をそんなに驚いているのだ?人の子よ、汝の隣にも獣神様が座すではないか』
そしてそんなリリの驚きが心底理解出来ないサラちゃんは、更なる爆弾を投げ掛けました。
リリは話の流れからそれが獣人では無いとわかります。けれども隣を見ても神らしき存在が確認出来ません。
左右にいるのはロダと三巳、その頭上にいる橙の妖精だけです。
橙の妖精は妖精であって神ではありません。
ロダは山の民であって神では無いでしょう。
では三巳か。
そんな訳無いと思いつつも、リリはロダからゆっくりと三巳に振り直りました。
隣の三巳はサラちゃんの言葉を受けて、困った様に二ヘラと笑っています。耳は伏せられ、尻尾は所在無さ気に下方をユラユラ揺れています。
「まさか」「でも」そんな思いが駆け巡り、でもそうでないなら三己の顔の意味がわかりません。
「本当に……?三巳、は……獣人じゃなくて……神様……なの?」
今更ながらの衝撃の事実に、リリの声は震えます。
「うん、まあ、一応そう。かなー」
恐れられたく無い。
敬われたいんじゃ無い。
ただ共に笑い合いたいだけ。
リリが大好きだから、嫌われるなんて以っての他。
そんな思いが錯綜して、三巳は自然と項垂れて、ソロソロと上目遣いで見上げました。
その姿はまるで怒られる前のワンコそのものでした。
その目も顔面にダイブしてきた影の腹毛で埋まり見えなくなります。リリは自ら両手を広げて迎え入れ、その涙を腹毛に押し付ける様に強く、強く、でも優しく抱き締めます。
「ネルビー……!!」
「わふっ!」
リリが感極まって「ネルビー」と呼んだ影。それは真っ黒な毛並みの犬でした。犬種で言えばボーダーコリーに似ています。
「ネルビー!本当に本物のネルビーよね!?夢でも幻でも無いわよね!?
ああ……!もう会えないかと思ってたわ!ネルビーっネルビーっ!」
リリはネルビーを降ろすとその姿を、感極まって視界が歪むその眼に焼き付ける様に、瞬きも忘れて見続けます。
「きゅ~んっヘッヘッ!」
そのリリの涙を拭うべく、ネルビーはその涙に濡れた顔を頻りに舐め回しました。
「ふふっふふふっ擽ったいわネルビー」
久しく触れ合えなかった、諦めていたその温もりに、リリは漸く心から安堵した様にホッと笑みを溢しました。
「ネルビー良く体を見せて?どこも怪我してない?
……あら?ネルビー貴方ちょっと見ないうちにとっても身体つきがしっかりしたのね?怪我も無い様だし……。それに今更だけど」
ネルビーに目立った外傷が無い事を確認出来たリリは、改めて周囲の様子に気を配る事が出来る様になりました。そして本当に今更ながらに目の前にサラマンダーがいる事を思い出しました。
記憶のある限り大凡接点の無い筈のネルビーとサラマンダー。
けれど見間違いで無ければネルビーは確かにサラマンダーの背から飛び出して来ました。
「あの、もしかして貴方がネルビーを助けて連れて来てくれたんですか?」
リリがおずおずと聞くと、感動の再会を黙って見守っていたサラちゃんが姿勢を戻して首を横に振りました。
『いいや違う。我は連れて来ただけだ。その者と共に居られたのは獣神様である』
厳かに伝えられた内容に、リリとネルビー以外が一斉に三巳を見ました。
三巳はその視線を受けてキョトンと目を瞬かせた後、ハッとして首と手を横に振りました。勘違いされてると気付いて「違うぞ」の意思表示です。リリの感動の再会を邪魔しない為に、無言でボディランゲージです。ちょっと毛がサワだっています。
「獣人?でも何でサラマンダーである貴方が様付け?」
『獣人では無い。獣神様、獣の神様であらせられる』
威厳を以って泰然と構え放たれた衝撃の言葉に、リリは体を震わせて目を見開きました。
それもそうでしょう。神々は、本来滅多に人の目に触れません。精霊や妖精でさえ滅多にお目に掛かれないのに、それより高位の存在で、且つ数少ない神々は一生お目に掛かれないのが普通なのです。
それが今、目の前の愛犬ネルビーが実際に出逢い、あまつさえお助け頂いたと言う。そんな奇跡はもう、言葉も無く驚く他ありません。
ネルビーを凝視すると、当のネルビーは凄い事がわからない様で、首を傾げてハッハと舌を出しています。
『?何をそんなに驚いているのだ?人の子よ、汝の隣にも獣神様が座すではないか』
そしてそんなリリの驚きが心底理解出来ないサラちゃんは、更なる爆弾を投げ掛けました。
リリは話の流れからそれが獣人では無いとわかります。けれども隣を見ても神らしき存在が確認出来ません。
左右にいるのはロダと三巳、その頭上にいる橙の妖精だけです。
橙の妖精は妖精であって神ではありません。
ロダは山の民であって神では無いでしょう。
では三巳か。
そんな訳無いと思いつつも、リリはロダからゆっくりと三巳に振り直りました。
隣の三巳はサラちゃんの言葉を受けて、困った様に二ヘラと笑っています。耳は伏せられ、尻尾は所在無さ気に下方をユラユラ揺れています。
「まさか」「でも」そんな思いが駆け巡り、でもそうでないなら三己の顔の意味がわかりません。
「本当に……?三巳、は……獣人じゃなくて……神様……なの?」
今更ながらの衝撃の事実に、リリの声は震えます。
「うん、まあ、一応そう。かなー」
恐れられたく無い。
敬われたいんじゃ無い。
ただ共に笑い合いたいだけ。
リリが大好きだから、嫌われるなんて以っての他。
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