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本編
カカオを探して三千里
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寒さが一層厳しくなる頃、三巳が毎年苦心している事が有ります。
「うぅ~。今回もカカオが見つからなかったんだよ~」
ぐで~っとほっぺたをテーブルにくっ付けて、両手足と耳に尻尾もやるせ無さを表す様にバタバタさせています。
そして力尽きる様にパタリと力を落とすと、そのまま全身の力を抜きました。
「は~。チョコレートなんて市販品で幾らでも手に入ったからな。
カカオの産地なんて気にした事も無かったんだよ」
大体の形ならパッケージに描いてあったのでわかります。
けれど絵や写真は見ても詳しい所を読む必要性を感じませんでした。
「過去の自分に言ってやりたい。
有って困る知識は無いけど、無くて困る知識はこんなにも自分を追い詰めるんだよ……!」
今度はテーブルをパシパシ叩き始めました。
けれどどんなに悔やんだとしても、地球に帰る事は出来ません。
三巳はまたしても耳と尻尾をダラんと垂らしました。
「まー。過ぎた事を悔やんでも始まらないしな。
新しい子も移住して来たし、情報を集めてみよう」
悔やみ飽きた三巳は、ピョンコと立ち上がるとフンスと気合を入れました。
そのままテテテーっとお家を出て駆けて行きます。
「あっ、ネルビー見っけ」
先ず初めに向かったのは犬のネルビーです。
母獣と旅をしていたと聞いた三巳は、ならば色々見聞も深かろうと思いました。
『ん?三巳どうしかしたのか?』
日課のお散歩をしていたネルビーは、三巳に気付くと近寄りフンフン匂いを嗅ぎました。
三巳も挨拶がてら鼻を合わせます。
「うん。あのな、ネルビーはチョコレートとかカカオって知ってるか?
こういうのなんだけど」
三巳は魔法でカカオのイメージ映像を見せました。
『わふぅ……。カカオとかいうこのやつは知らない。
でもココアとかいうこのやつは似たのをリリが飲んでたぞ?
えっと、何だったかな?おれには体に悪いって飲ませてくれなかったのは覚えてるんだけど』
その時の悲しさが蘇ったのか、ネルビーはショボンと伏せてグルルル~っと喉を鳴らしました。
三巳はふと犬猫が食べれない物を思い出しました。
「そうだなー、確かに犬にチョコレートは毒だって聞いた事ある。
んでも今はネルビーも守護獣になったし、大丈夫じゃないか?
カカオ見つけれたら試してみると良い」
三巳の言葉にネルビーは耳をピンと立てて、尻尾を高速振りして喜びました。
喜びは加速して、その場でクルクル駆け回って両前脚を上げてピョンピョン跳ね周っています。
「はは、こりゃ頑張って探さないとなー。
って事でネルビーが住んでたのってどの辺りだ?」
三巳はネルビーの喜び様に嬉しくなりました。
名前がわからなくてもそれっぽいのが有るなら行ってみるに吝かではありません。
詳しく聞いてみるに、ネルビーは地面をフンフン嗅ぎ取ると、顔を上げて首を傾げました。
『ココまで空から来たからわからない』
詳しい地理はわからなかったのです。
三巳も「そうかー」と素直に頷きます。ダメ元で聞いてたので予定調和なのです。
だからと言ってリリに聞く選択肢は有りません。まだ傷は癒えてないのに思い出させるのも憚られるからです。
「それに知ってそうな奴は他にいるしな」
三巳は一人納得してウンウン頷き呟きました。
小首を傾げるネルビーにお礼を言った三巳は、次の情報を求めて駆けて行きます。
村を出て、目当ての気配を目指して雪山を駆け回ります。
「ユト見ーっけ」
山の中腹辺りの洞穴に寝そべっていたユトを見つけました。
テテテーっと近寄って鼻を擦り擦り挨拶します。
『っふ。何時も元気が良いな』
「そりゃ毎日楽しいからなっ」
くつくつと笑い含みに言われて、三巳は然も当然と胸を張って答えます。
『それで今日は何用だ』
「ん、ユトならリリの住んでた場所知ってると思ってな」
三巳が簡潔に此処に至るまでの経緯を話せば、ユトも『成る程』と頷きます。
『教えるのは構わんがな。あの場所にカカオは無いぞ』
「そーなのか?ネルビーは似たのを見たって言ってたけど」
『あれは南国より行商人が売っていた物だ。その物がある訳では無い』
「南国?って事は暖かい地域の植物なのかー。
そりゃこの辺探しても無い訳だ」
三巳の山は雪山です。山の下や周囲を囲む山の一部は雪が積もらないエリアも有りますが、それでも冬は寒いです。
三巳は見当違いな場所を探していた事に気付きました。
『新しく火の精霊が移住していただろう。
彼に聞くのが一番早いと思う』
「そだな。そーする。
有り難うな、ユト」
三巳は早速サラちゃんの元へ駆けて行きました。
「やっほーサラちゃん。元気かー?」
地獄谷に着くと、サラちゃんがどこに居るのか直ぐにわかりました。一番熱い間欠泉で微睡んでいました。
『おや、これは三巳様。
如何なされましたか』
三巳に気付いたサラちゃんが、首をもたげて聞きました。
三巳は此処に至るまでの経緯を話しました。
『成る程。それでしたら遠い南の島でそれらしき物を人間が食していましたよ』
「おおー!やったっ、これでチョコレートが手に入るな!」
『ただ収穫は春か秋頃していた様に記憶しています』
「だめじゃーん!」
折角得た有力情報でしたが、残念ながら今はまだ真冬です。
三巳は無情な世に耳の先から尻尾の先まで項垂れてガッカリしました。
「今年もチョコレート食べる日にチョコレート食べれないんだよ……」
三巳は仕方無く、傷心のままトボトボお家に帰って行きました。
「でもある場所わかったしな。春頃一度行ってみたいな」
「うぅ~。今回もカカオが見つからなかったんだよ~」
ぐで~っとほっぺたをテーブルにくっ付けて、両手足と耳に尻尾もやるせ無さを表す様にバタバタさせています。
そして力尽きる様にパタリと力を落とすと、そのまま全身の力を抜きました。
「は~。チョコレートなんて市販品で幾らでも手に入ったからな。
カカオの産地なんて気にした事も無かったんだよ」
大体の形ならパッケージに描いてあったのでわかります。
けれど絵や写真は見ても詳しい所を読む必要性を感じませんでした。
「過去の自分に言ってやりたい。
有って困る知識は無いけど、無くて困る知識はこんなにも自分を追い詰めるんだよ……!」
今度はテーブルをパシパシ叩き始めました。
けれどどんなに悔やんだとしても、地球に帰る事は出来ません。
三巳はまたしても耳と尻尾をダラんと垂らしました。
「まー。過ぎた事を悔やんでも始まらないしな。
新しい子も移住して来たし、情報を集めてみよう」
悔やみ飽きた三巳は、ピョンコと立ち上がるとフンスと気合を入れました。
そのままテテテーっとお家を出て駆けて行きます。
「あっ、ネルビー見っけ」
先ず初めに向かったのは犬のネルビーです。
母獣と旅をしていたと聞いた三巳は、ならば色々見聞も深かろうと思いました。
『ん?三巳どうしかしたのか?』
日課のお散歩をしていたネルビーは、三巳に気付くと近寄りフンフン匂いを嗅ぎました。
三巳も挨拶がてら鼻を合わせます。
「うん。あのな、ネルビーはチョコレートとかカカオって知ってるか?
こういうのなんだけど」
三巳は魔法でカカオのイメージ映像を見せました。
『わふぅ……。カカオとかいうこのやつは知らない。
でもココアとかいうこのやつは似たのをリリが飲んでたぞ?
えっと、何だったかな?おれには体に悪いって飲ませてくれなかったのは覚えてるんだけど』
その時の悲しさが蘇ったのか、ネルビーはショボンと伏せてグルルル~っと喉を鳴らしました。
三巳はふと犬猫が食べれない物を思い出しました。
「そうだなー、確かに犬にチョコレートは毒だって聞いた事ある。
んでも今はネルビーも守護獣になったし、大丈夫じゃないか?
カカオ見つけれたら試してみると良い」
三巳の言葉にネルビーは耳をピンと立てて、尻尾を高速振りして喜びました。
喜びは加速して、その場でクルクル駆け回って両前脚を上げてピョンピョン跳ね周っています。
「はは、こりゃ頑張って探さないとなー。
って事でネルビーが住んでたのってどの辺りだ?」
三巳はネルビーの喜び様に嬉しくなりました。
名前がわからなくてもそれっぽいのが有るなら行ってみるに吝かではありません。
詳しく聞いてみるに、ネルビーは地面をフンフン嗅ぎ取ると、顔を上げて首を傾げました。
『ココまで空から来たからわからない』
詳しい地理はわからなかったのです。
三巳も「そうかー」と素直に頷きます。ダメ元で聞いてたので予定調和なのです。
だからと言ってリリに聞く選択肢は有りません。まだ傷は癒えてないのに思い出させるのも憚られるからです。
「それに知ってそうな奴は他にいるしな」
三巳は一人納得してウンウン頷き呟きました。
小首を傾げるネルビーにお礼を言った三巳は、次の情報を求めて駆けて行きます。
村を出て、目当ての気配を目指して雪山を駆け回ります。
「ユト見ーっけ」
山の中腹辺りの洞穴に寝そべっていたユトを見つけました。
テテテーっと近寄って鼻を擦り擦り挨拶します。
『っふ。何時も元気が良いな』
「そりゃ毎日楽しいからなっ」
くつくつと笑い含みに言われて、三巳は然も当然と胸を張って答えます。
『それで今日は何用だ』
「ん、ユトならリリの住んでた場所知ってると思ってな」
三巳が簡潔に此処に至るまでの経緯を話せば、ユトも『成る程』と頷きます。
『教えるのは構わんがな。あの場所にカカオは無いぞ』
「そーなのか?ネルビーは似たのを見たって言ってたけど」
『あれは南国より行商人が売っていた物だ。その物がある訳では無い』
「南国?って事は暖かい地域の植物なのかー。
そりゃこの辺探しても無い訳だ」
三巳の山は雪山です。山の下や周囲を囲む山の一部は雪が積もらないエリアも有りますが、それでも冬は寒いです。
三巳は見当違いな場所を探していた事に気付きました。
『新しく火の精霊が移住していただろう。
彼に聞くのが一番早いと思う』
「そだな。そーする。
有り難うな、ユト」
三巳は早速サラちゃんの元へ駆けて行きました。
「やっほーサラちゃん。元気かー?」
地獄谷に着くと、サラちゃんがどこに居るのか直ぐにわかりました。一番熱い間欠泉で微睡んでいました。
『おや、これは三巳様。
如何なされましたか』
三巳に気付いたサラちゃんが、首をもたげて聞きました。
三巳は此処に至るまでの経緯を話しました。
『成る程。それでしたら遠い南の島でそれらしき物を人間が食していましたよ』
「おおー!やったっ、これでチョコレートが手に入るな!」
『ただ収穫は春か秋頃していた様に記憶しています』
「だめじゃーん!」
折角得た有力情報でしたが、残念ながら今はまだ真冬です。
三巳は無情な世に耳の先から尻尾の先まで項垂れてガッカリしました。
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三巳は仕方無く、傷心のままトボトボお家に帰って行きました。
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