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本編
食べたい盛り
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ポカポカと温かな日が続くと、雪解けも一気に進みます。
つい最近まではまだまだ真っ白と言って良い景色だったのに、今はもう半分は茶色い土肌が見えています。
「冬眠から覚めた子も増えて来たし、ソロソロ母ちゃん来るかな?」
「ふふふ。楽しみね」
「ほっほっほ。冬の間ソワソワしてたからのう」
『おれも久し振りに会うの楽しみだぞ!』
春の日差しに目を眇め、山の景色を耳をピコピコさせながら眺めます。
良く動く耳にホッコリ癒されて、リリとロキ医師が温かい目で見守り、ネルビーは『おれもおれも』と飛び跳ねはしゃぎます。
「三巳の父ちゃんてどんなかなー。
同じ獣神なのかな?」
「神様って滅多に子を成さないからその辺は謎に包まれてるのよね」
「そうさのぅ。物語では良く人との恋を描いておるがのぅ」
もう時期会えるかもと思うと、想像はどんどん膨らんできます。
『おれ聞いた事あるぞ。
獣の神の番は何処かの街に住んでるって』
「街?って事は神族じゃないのかな?
長生きの種族なのか、眷属になったのか。それとも三巳の知らない方法が他にあるのか。
むむむむー?謎が深まった。
父ちゃんよ早く来い!三巳は気になって仕方ないんだよ!」
想像は更に深まり混迷を極めます。
三巳は気になり出して落ち着かないのか、地団駄を踏みました。
「これこれ、落ち着くんじゃよ。
神族でないなら余計に雪がある内は来辛かろうて。
ゆっくりお出迎えの準備をして待つんじゃ」
ロキ医師は三巳を宥めようとヨシヨシと撫でました。
三巳も頭では理解しているので素直に頷きます。もっとも心は理解が追い付かず、口を尖らせていましたが。
「そうだわ。三巳のお母様は好きな食べ物何かしら」
「む?そういえば三巳も知らない」
リリはご馳走を用意しようと三巳に尋ねました。
けれど三巳も昔を思い出しても母獣が食事をしている風景を思い出せませんでした。
その様子に首を傾げるのはネルビーです。
『獣の神は食べ物食べないぞ?神だからな』
「ん?」
「へ?」
「ほう?」
何を当たり前の事をとぶっちゃけるネルビーですが、三巳達は鳩が豆鉄砲食らったかの様に目をパチクリしました。
「え?だって三巳食べてるぞ?」
『食べれない訳じゃないらしいけど、必要性がないから食べないって聞いた』
「あれ?じゃあ三巳も食べなくても平気か?」
「うぅむ。三巳は昔から良く食べるからのう。
別の意味で平気じゃなくなりそうじゃの」
「良いんじゃないかしら、食べてる三巳はとっても可愛いもの」
三巳はそれはもう美味しいものが大好きです。宴会も大好きです。それを取り上げられたら悲しさの余り捨てられた仔犬の様にキュンキュンと泣きだす事でしょう。
それを容易に想像出来てリリもロキ医師もクスリと笑みが溢れます。
大好きな二人に肯定された三巳はパァっと満面の笑顔で尻尾を振りました。
「そうだよな!これから特に美味しいがいっぱいになるしな!
そうだ!母ちゃんご飯食べれない訳じゃないんだよな。なら三巳が好きなの食べて貰おうっ。父ちゃんはどうかな?種族わかんないし、食べれないのとか無いと良いなっ」
待ち切れなくなった三巳は、早速好きなメニューを考え始めました。
診療所のお仕事があるリリとロキ医師とは別れた三巳は、今日もネルビーとお散歩がてらに食材探しをする事にしました。
「もう梅も満開だなー」
山の中を散策すれば、そこらかしこに梅の木が可愛い花を木の枝いっぱいに咲かせています。
『ちょっと前までは裸ん坊だったのに、咲き始めたら早いな』
ネルビーが鼻先に近い梅の花をクンカクンカ嗅いで、パクリと口に含みました。口に広がる梅の香りが気に入ったのか、夢中で噛み噛みしています。
「ふきのとうも今が最盛期かなー。でもばっけみそは作ってあるし、天ぷらは採れたて振る舞いたいしなー」
『おれっおれっ山菜そばっての食べてみたいぞ!ミオラが美味しいって言ってた!』
「そういえば去年はリリも怪我が酷くて結局食べれて無かったっけ。
今だとそんなに山菜の種類無いけど、それでも良ければ今日は蕎麦にしようか」
『やった!そば!そば!リリもきっと喜ぶ!』
ゼンマイを採りながら答えた三巳に、ネルビーは大はしゃぎで喜びます。器用にも泥濘んだ山の斜面を垂直に飛び跳ねています。
「にゃははー。そんなに喜ばれると張り切るってもんだなー。
ただあまり跳ねると泥んこで三巳まっ茶っ茶だぞー」
ネルビーが跳ねる度に泥がビシャビシャと三巳に掛かっています。お陰でゼンマイ握る手の反対側半分が泥んこ塗れです。
「こりゃ、帰る前に温泉必須だなー」
ヤレヤレと溜息を零す三巳ですが、尻尾は大義名分に嬉しそうに揺れていました。
『おんせんおんせんー♪』
ネルビーも更に嬉しそうにビシャビシャ跳ね回りました。
つい最近まではまだまだ真っ白と言って良い景色だったのに、今はもう半分は茶色い土肌が見えています。
「冬眠から覚めた子も増えて来たし、ソロソロ母ちゃん来るかな?」
「ふふふ。楽しみね」
「ほっほっほ。冬の間ソワソワしてたからのう」
『おれも久し振りに会うの楽しみだぞ!』
春の日差しに目を眇め、山の景色を耳をピコピコさせながら眺めます。
良く動く耳にホッコリ癒されて、リリとロキ医師が温かい目で見守り、ネルビーは『おれもおれも』と飛び跳ねはしゃぎます。
「三巳の父ちゃんてどんなかなー。
同じ獣神なのかな?」
「神様って滅多に子を成さないからその辺は謎に包まれてるのよね」
「そうさのぅ。物語では良く人との恋を描いておるがのぅ」
もう時期会えるかもと思うと、想像はどんどん膨らんできます。
『おれ聞いた事あるぞ。
獣の神の番は何処かの街に住んでるって』
「街?って事は神族じゃないのかな?
長生きの種族なのか、眷属になったのか。それとも三巳の知らない方法が他にあるのか。
むむむむー?謎が深まった。
父ちゃんよ早く来い!三巳は気になって仕方ないんだよ!」
想像は更に深まり混迷を極めます。
三巳は気になり出して落ち着かないのか、地団駄を踏みました。
「これこれ、落ち着くんじゃよ。
神族でないなら余計に雪がある内は来辛かろうて。
ゆっくりお出迎えの準備をして待つんじゃ」
ロキ医師は三巳を宥めようとヨシヨシと撫でました。
三巳も頭では理解しているので素直に頷きます。もっとも心は理解が追い付かず、口を尖らせていましたが。
「そうだわ。三巳のお母様は好きな食べ物何かしら」
「む?そういえば三巳も知らない」
リリはご馳走を用意しようと三巳に尋ねました。
けれど三巳も昔を思い出しても母獣が食事をしている風景を思い出せませんでした。
その様子に首を傾げるのはネルビーです。
『獣の神は食べ物食べないぞ?神だからな』
「ん?」
「へ?」
「ほう?」
何を当たり前の事をとぶっちゃけるネルビーですが、三巳達は鳩が豆鉄砲食らったかの様に目をパチクリしました。
「え?だって三巳食べてるぞ?」
『食べれない訳じゃないらしいけど、必要性がないから食べないって聞いた』
「あれ?じゃあ三巳も食べなくても平気か?」
「うぅむ。三巳は昔から良く食べるからのう。
別の意味で平気じゃなくなりそうじゃの」
「良いんじゃないかしら、食べてる三巳はとっても可愛いもの」
三巳はそれはもう美味しいものが大好きです。宴会も大好きです。それを取り上げられたら悲しさの余り捨てられた仔犬の様にキュンキュンと泣きだす事でしょう。
それを容易に想像出来てリリもロキ医師もクスリと笑みが溢れます。
大好きな二人に肯定された三巳はパァっと満面の笑顔で尻尾を振りました。
「そうだよな!これから特に美味しいがいっぱいになるしな!
そうだ!母ちゃんご飯食べれない訳じゃないんだよな。なら三巳が好きなの食べて貰おうっ。父ちゃんはどうかな?種族わかんないし、食べれないのとか無いと良いなっ」
待ち切れなくなった三巳は、早速好きなメニューを考え始めました。
診療所のお仕事があるリリとロキ医師とは別れた三巳は、今日もネルビーとお散歩がてらに食材探しをする事にしました。
「もう梅も満開だなー」
山の中を散策すれば、そこらかしこに梅の木が可愛い花を木の枝いっぱいに咲かせています。
『ちょっと前までは裸ん坊だったのに、咲き始めたら早いな』
ネルビーが鼻先に近い梅の花をクンカクンカ嗅いで、パクリと口に含みました。口に広がる梅の香りが気に入ったのか、夢中で噛み噛みしています。
「ふきのとうも今が最盛期かなー。でもばっけみそは作ってあるし、天ぷらは採れたて振る舞いたいしなー」
『おれっおれっ山菜そばっての食べてみたいぞ!ミオラが美味しいって言ってた!』
「そういえば去年はリリも怪我が酷くて結局食べれて無かったっけ。
今だとそんなに山菜の種類無いけど、それでも良ければ今日は蕎麦にしようか」
『やった!そば!そば!リリもきっと喜ぶ!』
ゼンマイを採りながら答えた三巳に、ネルビーは大はしゃぎで喜びます。器用にも泥濘んだ山の斜面を垂直に飛び跳ねています。
「にゃははー。そんなに喜ばれると張り切るってもんだなー。
ただあまり跳ねると泥んこで三巳まっ茶っ茶だぞー」
ネルビーが跳ねる度に泥がビシャビシャと三巳に掛かっています。お陰でゼンマイ握る手の反対側半分が泥んこ塗れです。
「こりゃ、帰る前に温泉必須だなー」
ヤレヤレと溜息を零す三巳ですが、尻尾は大義名分に嬉しそうに揺れていました。
『おんせんおんせんー♪』
ネルビーも更に嬉しそうにビシャビシャ跳ね回りました。
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