獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

移民のはじまり

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 ライドゥーラの民達は、リファラの手厚い看病のお陰でもうすっかり血色が良くなりました。むしろ少しぽっちゃりしてしまい、ダイエットに燃え始めるご婦人まで出て来た始末です。

 「俺。何処で人生間違えたのかな……」
 「聞くな。俺も同じ問題に悩んでるんだ」

 元武装していた人達は、今はリファラ風の服装に身を包み、集会場に設けられた茶席でお茶を啜って空を見上げています。お顔は何処かアンニュイです。

 「ほらほら、兄ちゃん達!あんだけイキがってたからには体力有り余ってんだろう!座ってないでリファラの人達に恩返しするよ!」

 主婦も寄れば井戸端会議です。リファラの女性達の優しさに触れたライドゥーラの女性達は、もうすっかり仲良しになっていました。
 子育て世代の主婦に至っては、子供達をリファラの学校に通わせ始めた位にリファラが大好きになっていました。

 「いや。だって。俺達敵同士じゃん」
 「はあ!?まぁだ言ってんのかいこのたわけが!」
 「そうだよ!敵なんてね、あんた達が勝手に言って騒いだだけじゃないの!」
 「そうよ!あんた達に巻き込まれた私達に敵がいるとしたら、それはあんた達だよ!」

 そして強かな心の強さを取り戻した女性達は、寄り集まる事でより強固な強さと発言権を持つようになっていました。

 「うう……」

 丸腰の元武装した人達はその迫力に何も言えずに口籠もってしまいます。

 「ああ。もうこんな時間。わからず屋は放っておいて行きましょう」
 「そうね。みんなを待たせたら申し訳ないわ」

 言いたい事を言いたいだけ言った女性陣は、ワイワイ会話に花を咲かせながら去って行きました。

 「何がいけなかったのかな……」
 「ほんとそれな」

 元武装した人達は木枯らし1号を背景に、すっかり背中を丸めて小さくなってしまいました。
 そこへトットコトコトコ軽快な足取りでやって来る者がいます。

 「おはよー!三巳だよって、何だ?元気ないぞー?」

 三巳です。不安が心配無用そうで一安心の三巳です。
 尻尾を元気に振って大きく手を振り挨拶です。けれども茶席に座った人達がションボリしてるので心配します。

 「げ。獣神」

 元武装した人達は三巳の前では調子が狂いまくりになると学習していました。三巳の顔を見るなり青褪め逃げ腰です。

 「げ。とは何だ。げ。とは。三巳だって傷付くんだよ」
 「お、お前が来ると碌な事がねぇんだよ!」
 「碌?何かあったっけ?」

 三巳には全く身に覚えがないので、本気でわからない顔で耳をピコピコ動かします。

 「ま。いーか。それよりジョナサン暇なら三巳と遊ぼう」
 「はあ!?やだよ!ガキ共と遊べば良いだろ!」

 ニッコリニコニコ満面の笑顔で遊びに誘う三巳ですが、元武装した人ことジョナサンが嫌な顔して全力拒否します。
 何故なら三巳の遊びは山仕様。つまり体力お化け勝負なのです。

 「うにゅ?お子ちゃま達は保育園と学校なんだよ。つまり三巳と遊べる体力自慢はジョナサン達しかいない」

 三巳は目をキラーン!と輝かせて尻尾を振りまくりです。ムフンと胸まで反らして威風堂々です。

 「リファラの奴等だっているだろが!」
 「リファラの民はお仕事で忙しいんだよ。三巳の相手までお願い出来ないんだよ」

 全くもってその通りなのでジョナサンは「ぐぅ」と唸りました。

 「さあ三巳と楽しいひと時を共に遊び尽くそうではないか」

 遊んで。遊んで。と顔に書いた三巳がとっても良い笑顔でジリジリ近寄ります。
 ジョナサンは代わりの生け贄を差し出そうと隣にいた友人の肩を掴みます。

 「お、お前!裏切るのか!?」
 「許せ。お前のが若いから体力あるだろ?」
 「アンタのが力強いだろうが!」
 「にゃっはっはー。心配しなくても良いんだよ」

 醜い喧嘩を始める人達や、ソロリソロリと逃げ出す人達を見て、三巳は神力でみんなを囲って手を左右に大きく広げました。

 「みんなで遊ぼう」

 一介の人族に抗えない神たる力。それを一身に受けた人達は、逃れられない運命を悟り、

 「「「ぎゃあ―――――す!!」」」

 今日もまた、リファラの地に哀しみの絶叫をあげるのでした。
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