獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
153 / 372
本編

こうして一人また一人と移民する

しおりを挟む
 「やっふー♪今日も遊びに来たんだよ!」

 今日も今日とて全力パワー満開の三巳が元気いっぱいやって来ました。
 場所は勿論ジョナサン達のいる茶席です。

 「ふっ。ふっふっふっ。ははははは!悪いな小娘!今日からはお前とは遊ばん!」

 しかしいつもは逃げ腰のジョナサンが胸を張って上から目線で偉そうに言いました。
 これには三巳も周りの人達も目を大きく開けます。

 「な、何だ?どうしたお前。いつになく強気じゃねぇか」
 「ジョナジョナ?だって暇だろ?三巳と遊ぶんだよ?」

 仲間にどよめきが走り、三巳はドサクサであだ名呼びを始めました。
 何だかんだ言いながらも、いつも全力で遊んでくれるジョナサンが三巳は大好きです。
 そのジョナサンが一緒に遊んでくれない。三巳はそんな事実を信じる事が出来ません。きっと何か病気に違いないと近寄り体調の心配までしだします。

 「ふん。甘いな小娘。今日から俺は働きに出る!」

 どどーんと指を突きつけ、見事なステップで後退するジョナサンに、仲間達が一斉に、

 「「「おおー!?」」」

 と驚愕の声を上げました。
 三巳は目をパチクリさせてジョナサンを見つめます。
 ふふんと鼻息荒い姿に本気の心を見出し、三巳はショボンと耳と尻尾を垂らしました。

 「それじゃあ仕方ないんだよ。お休みの日には遊んでなー」

 悲しみに手をモジモジさせて、上目遣いでおねだりは忘れません。

 「う゛」

 一応最強の神とはいえ、最近すっかり慣れした親しんだ近所の女の子の悲しそうな上目遣い。しかもモフモフがショゲショゲです。破壊力は抜群てした。
 ジョナサンは後退り、嫌だ。もう懲り懲りだ。と思いながらも、

 「た、たまにだからな!?」

 と捨て台詞を吐いて颯爽と去って行きました。
 それに残された仲間達は、

 「「「あ!狡い!」」」

 と嘆きと嫉妬の声を張り上げます。
 三巳は約束してくれた事に嬉しくなり、パァっと顔を輝かせて大きく手を振り見送りました。

 「きっとだぞー!」

 そしてニコヤカに残された人達に向き直ります。

 「「「う゛」」」

 逃げ越しの大の大人の男達vs軽やかなスキップで近寄る三巳。

 「それじゃあガスター達は三巳と遊ぼう♪」
 「「「ぎゃ―――――す!!」」」

 そして上がる悲鳴。
 ジョナサンの一番の友達ガスターの腕を掴み、三巳は意気揚々と森へと駆け行くのでした。



 そして次の日。

 「うにゅ?誰もいない」

 茶席には人っ子一人いませんでした。
 気配を探ってみると、いつものメンバーは散り散りに街の中にいるようです。
 小首を傾げながらもかくれんぼ気分で会いに行くと、昨日のメンバーは一人残らず全員仕事を始めていました。

 「ふははははっ!仕事さえしていれば手も足も出まい!」

 ジョナサンの例に倣って、ついうっかりリファラの民として移民を決定付けた瞬間でした。

 「うーにゅ。遊び相手がいなくなったんだよ」

 そして事の重大性に何一つ気付く事のない三巳は、ただただ寂しそうに垂らした尻尾で地面を掃くのでした。

しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

幸福なる侯爵夫人のお話

重田いの
ファンタジー
とある侯爵家に嫁いだ伯爵令嬢。 初夜の場で、夫は「きみを愛することはない」というけれど。 最終的にすべてを手にした侯爵夫人のお話。 あるいは、負い目のある伯爵令嬢をお飾りの妻にして愛人とイチャイチャ過ごそうと思ったらとんでもないハズレくじを引いちゃった侯爵のお話。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

処理中です...