獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
159 / 372
本編

薬が出来るまで

しおりを挟む
 ホロホロの採取が無事に終了した翌日の朝。いつもの如く三巳の様子を見に来たオーウェンギルド長が、城門跡地前であんぐり大口を開けていました。

 「こいつぁ、いったい……」
 「およー?おはようなんだよ」

 そこへトットコトコトコとやって来たのは大きなザルを抱えた三巳でした。ザルの上には沢山の乾燥された植物が乗っていて、三巳の視界を塞いでいます。三巳は匂いで察知したのです。
 横を向いてやっとこ顔を見せた三巳に、オーウェンギルド長はツカツカと詰め寄りました。

 「どおいう事だ獣神どうなってやがる説明しやがれ」
 「お?お?お?」

 余りの剣幕に三巳はカニさんの様に横ステップで遠去かります。しかしログハウスのウッドデッキに当たってそれ以上行けなくなりました。

 「逃げんな獣神」

 そこへすかさずオーウェンギルド長が両手を突き伸ばしました。

 ドン!

 と良い音立ててウッドデッキに手を当て両サイドを塞ぎます。ログハウス故にデッキの位置が高かったのが三巳には災いしました。

 「お、おぉ。これが噂の壁ドンなんだよ?」

 などと現実逃避する位には、オーウェンギルド長の眉間の皺とピクピクさせてるコメカミが怖いです。

 「アレは何だ!何故あんなに大量の幻の花が干されてやがる!」

 ビシー!っと横を指した先には、庭一面に吊るされたホロホロの枝葉達が有りました。

 「花は別加工だから有るのは下部分だけなんだよ」
 「言いてぇ事は一緒だボケ!葉だろうが花だろうが、そもそもあんなに大量のホロホロなんざお目にかかれねぇんだよ!」
 「おおぅ?そうなのか?割と群生してるぞ?」
 「してたら俺達は苦労してねぇ!!」
 「どうしたの?」

 大声で喚くオーウェンギルド長に、リリ達が何だ何だとやって来ました。

 「姫さんならわかるよな。ホロホロが如何に手に入り難いか」
 「ああ、そういう事ね。
 ホロホロは悪意を嫌うらしいの。だから人の行き来の多い場所は咲き辛いみたい。でも三巳の山は結界で守られてるから大きな群生地が有るのよ」

 リリの説明を受けたオーウェンギルド長は、愕然としました。ギャグ漫画だったなら顎が外れていた位にビックリです。

 「成る程な……。迷いの森にそんな秘密が有ったのか」
 「三巳は忙しいの嫌いだから他のみんなには内緒な」
 「わーってら。つぅかそんな場所おいそれと吹聴出来ねぇよ。
 ってかそれなら俺に話ちまって良かったのか?」
 「オーウェンギルド長はもう友達だから大丈夫なんだよ」
 「ともっ……」

 あっけらかんとした物言いに、神族から友人宣言されたオーウェンギルド長は、今迄警戒してたのが馬鹿らしくなりました。ちょっぴし耳朶を赤くして照れています。

 「あー!もう!わーったよっ、なら群生地の場所は聞かないどく。どこで漏れるかわからんからな」
 「バレたところで悪意を持って近付けば枯れるだけだけどな」
 「だからだよ。今のリファラには出来るだけ多くの花が必要だろう」

 広い視野を持った発言に、三巳は舌を巻きました。
 相変わらず今日が楽しければそれで良い神生じんせいなので、先を見据えられるオーウェンギルド長に尊敬の眼差しを向けています。

 「凄いんだよっ、流石なんだよっ」
 「手前ぇがのんべんだらりなだけだろが……」

 ブンブカ尻尾を振りまくる三巳に脱力したオーウェンギルド長なのでした。

 兎にも角にもそんな訳で存在を守られる事になったホロホロと、リファラで唯一の万能薬を作れるリリの活躍により、ここから数年間で飛躍的にリファラの復興……いえ、新しいリファラの国の形が出来上がっていくのでした。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

あなたの幸せを祈ってる

あんど もあ
ファンタジー
ルイーゼは、双子の妹ローゼリアが病弱に生まれたために、「お前は丈夫だから」と15年間あらゆる事を我慢させられて来た。……のだが、本人は我慢させられていると言う自覚が全く無い。とうとう我慢のしすぎで命の危機となってしまい、意図せぬざまぁを招くのだった。 ドアマットだと自覚してないドアマット令嬢のお話。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!

黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。 そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。 「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」 これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

処理中です...