獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
165 / 372
本編

ロダ、久し振りの山の民と会話を楽しむ

しおりを挟む
 山への帰宅早々、ロダはロウ村長に呼ばれていました。
 ロウ村長宅ではいつも三巳が座ってお煎餅をボリボリ食べてる席に座ります。ロウ村長はその真向かいに座っています。

 「随分と男らしくなったな」

 ロウ村長の開口一番のセリフはこれでした。
 ロダは目を軽く見開いて照れます。

 「良い男に育ったんだ。リリとの仲も進展しただろう」

 そして次のセリフで黄昏ました。
 何故ならロダはまだリリとお付き合い出来ていなかったからです。リファラでの事が忙しくて恋愛どころではなかったのです。やっと落ち着いた所で山に帰って来たのです。

 (いや、でもリリも僕の気持ちを快く思ってはくれてるし、焦らず待ちたくはある)

 リリの過去を聞いたからこそ余計に焦らせたくはありませんでした。
 自己完結に無理矢理納得をして、ロダは気を取り直して外の世界の報告をしました。
 一通り聞いたロウ村長は、

 「外も少しは変わったな」

 としみじみ言いました。
 わかった風な物言いに、ロダはふと思い出します。

 「そういえばロウ村長って若い頃冒険者してたんだってね」
 「ん?どこでそれを……ああ、あいつに会ったのか」

 訝しげに片眉を上げたロウ村長でしたが、ウィンブルドンへ行ったならそういう事もあるだろうと頷きました。

 「強者を求めて武者修行していたんだがな、あまり成果は無かった」

 憮然と溜息を吐くロウ村長に対し、ロダは

 (ロウ村長を超えたらもう人族止めてるんじゃ)

 と思いました。
 それもそうでしょう。何せ若かりし頃のロウ村長は、三巳の本気遊びに付いて行けた猛者ですからね。

 (今度オーウェンギルド長にロウ村長のギルドランク聞いてみようかな)

 「三巳も及第点は取れた様だし、山に戻るのだろう?」

 丁度リファラの事を考えている時に聞かれ、ロダは言葉に詰まりました。

 (僕は……)

 ロダの心は決まっています。リリのいる所がロダのいたい場所です。リリがリファラに残ると言えばロダもそうする心積りです。
 ロウ村長はそんな心内を見透かしてニヤリと口角を上げました。

 「漢なら通さねばならぬ道もあろう。
 ワシはロダの意思を尊重する。大いに励むが良い」
 「ロウ村長……」

 普段は子供以上に騒ぎ好きなロウ村長ですが、この時の姿は大きく頼れる大人に見えて、ロダはじ~んと感動しました。

 さてはて、報告も終わって自宅に帰るかと久し振りの村を懐かしみながら歩いていると、全方の道を塞ぐ影がありました。

 「皆!久し振り!」

 端から端まで並んだ大小様々な影は、同世代の友人達でした。

 「ロハスにミオラも大きくなったね!」

 そして友人達の前に陣取った小さな影は、思い出よりもぐんと背が伸びた当時の年少組達でした。胸を張って通せんぼする姿は何処か誇らし気です。

 「当たり前だよロダ兄ちゃん。一体俺はいくつになったと思ってんのさ」

 昔のあどけなさが減り、大人な顔を作る様には嬉しさと寂しさを感じます。頭に過るのは「ロダにいちゃん、ロダにいちゃん」とにぱにぱ笑顔でチョロチョロする姿です。

 「そうだな、もう立派な年中組か」

 ロダはここにきて初めて数年離れる事の意味を身に染みて理解しました。
 改めて村を見渡せば、成る程、知らない建物などがチラホラ見えます。

 「外の世界の事教えてくれよ!」
 「街にはお姫様がいるんでしょう?ロダ兄は会った??」
 「怖い奴には会わなかったか?」
 「怪我はしなかった?」

 しかしロダはアンニュイに浸る隙はありませんでした。次から次へと矢継ぎ早に質問の嵐が来たからです。
 ロダはクスリと懐かしい居心地の良さに苦笑を漏らすと、自宅への帰りすがらに、体験した出来事を詳らかに話したのでした。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。 楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。  皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!  ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。  聖女はあちらでしてよ!皆様!

処理中です...