獣神娘と山の民

蒼穹月

文字の大きさ
182 / 372
本編

リリの帰る場所

しおりを挟む
 リファラ王国を改めたリファラ国。
 数年前までは君主制だったこの国は、今は国民の支持によって代表者が決められる民主制国家となっています。共和制とは言わない理由として、国民のほぼ全ての民、それもモンスターの全てがリファラの要はリリにあると思っているからです。

 そんなリファラから、今日。リリが旅立ちます。

 「今までありがとう姫様。あちらでも元気で過ごしてくださいね」
 「いつでも帰って来てください。ここはずっとあなたの国でもあるのですから」

 門前では多くの民が別れを惜しんで集まっています。
 その民達が花束やら果物やらをリリに贈るものだから、リリの両手は沢山の物で溢れかえっています。零れ落ちた物は地面に付く前に三巳が尻尾でキャッチしてそのまま収納していきました。

 「ありがとう皆。また帰って来るし、もしも私に子供が出来たらここの学校にも通わせたいから、その時はよろしくね」

 正式にロダとお付き合いを始めたリリは、隣のロダをチラリと見てから言いました。
 勿論リリの視線は逃さないロダは、ニコッと嬉しそうに笑って頬を赤らめました。
 集まった民達皆と話していたらいつまで経っても終わりません。
 名残は惜しいですが到頭、本当に、自分の意思で国を出る時が来たのです。
 追われて出ざるを得なかったあの時とは違う。清々しい気持ちでリリはリファラの民達を、景色を、その目に映る全てを感慨深く見廻します。
 そして誇りを胸に深く、深く一礼をしました。

 「本当に、今までありがとうございました」

 顔を上げた時にはもう、リリは山の民としてありました。

 清々しい風に背中を押され、リリはリファラを後にします。
 振り返るのは一度だけ。何度も振り返っては見送ってくれた皆が心配するからです。
 真っ直ぐ前を見る瞳は潤むけど、未来を夢見るから泣きません。泣かないったら泣かないのです。
 リリはグッと裾を握り締めました。
 お口はニッコリ笑みを浮かべて、さあ行こう。

 今のリリは何処までだって行けるのだから。

 「ロダ」

 リリは横を歩くロダを見て手を繋ぎます。
 ロダもニコッとして繋ぎます。

 「三巳」

 今度は反対側にいた三巳を見て手を繋ぎました。
 三巳もニハッと笑って繋ぎます。

 「これからもよろしくね」
 「うん。いっぱい色んなことしよう」
 「あっちこっち遊びに行こうな」

 3人でニコッと笑い合ったら次はハンナとネルビーを見ました。

 「ネルビーもハンナも、私の我儘に付いて来てくれてありがとう」
 『おれはリリとずっと一緒だぞ!』
 「姫様……いえ、リリはまだ子供です。ロキお義祖父様がおられるとはいえ、母代わりとは言わなくとも姉代わりはまだまだ必要です。
 ハンナにとってもリリは大切な大切な家族なのですから」
 「ええ、ありがとうハンナ。
 でもハンナはオーウェンギルド長が好きなんだと思っていたわ」
 「まあ!それはもう憧れてはいますけれどね。
 でもわたくしにとってはリリの方がもっと大切なんですよ」

 そう言ったハンナは本当にリリが大好きだとわかる優しい笑みを浮かべたのでした。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

みんなが嬉しい婚約破棄

あんど もあ
ファンタジー
王子の婚約破棄宣言を皆が待っていた!、というコメディ。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

幸福なる侯爵夫人のお話

重田いの
ファンタジー
とある侯爵家に嫁いだ伯爵令嬢。 初夜の場で、夫は「きみを愛することはない」というけれど。 最終的にすべてを手にした侯爵夫人のお話。 あるいは、負い目のある伯爵令嬢をお飾りの妻にして愛人とイチャイチャ過ごそうと思ったらとんでもないハズレくじを引いちゃった侯爵のお話。

処理中です...