獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

秋が来たよ

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 お山の天辺色付いて、ピュンと木枯らし吹いています。
 山道歩けば落ち葉がカサカサ音を出して、三巳の素足を刺激します。

 「にゅはー、もー秋が来たのかー」

 本来獣の性の方が強い三巳は、夏でも冬でも素足で山道を歩きます。季節はいつも空気と足で感じているのです。

 「ふんすふんす。んー匂いも大分秋めいてきたかなー」

 最後に匂いを嗅いで確認です。そして匂いを嗅げばとっても良いお鼻を持つ三巳の事です。

 「ふなっ!この匂いは!」

 ほぉらやっぱり見つけました。

 「栗!」

 たったか匂いの元まで駆けて見つけたものは山栗でした。トゲトゲに包まれたイガ栗をチョイと摘んで良ぅく観察してみます。

 「うにゅふふふー♪良い艶なんだよ」

 切れ目から覗かせた栗の茶色い皮がテカリと光を反射して誘惑してきます。勿論素直に誘惑された三巳は辺りをキョロキョロ見回して、いっぱい落ちているのを確認するなり嬉しそうに尻尾を振り回します。

 「ぐがー、山神様も栗拾いっすかー」
 『おや、小鬼の旦那に三巳も来たのか』

 秋の実りを感じて集まるのは三巳だけではありません。山には沢山の木の実を食べる生き物がいるのです。

 「あや。皆も栗拾いか?それは楽しいんだよ」

 楽しいは沢山で分かち合うのが大好きな三巳です。早速集まった面々と落ちた栗を確認して、皆に行き渡る事を確認しました。ニッコリと笑みを深めた三巳は、取り敢えず持っていたイガの切れ目に指を入れてパックリと割って中身を取り出します。
 それを見ていた大人のモンスターや動物達がスッと目を細めて真剣な表情になりました。何だろうと首を傾げた三巳です。

 「ぐっぐがっ。アレは獣神だから出来る事だからな。俺達は素手で割ろうとしちゃだめだぞ」

 大人達が子供達に言って聞かせています。それはそうでしょう。イガはトゲトゲがビッシリ付いています。頑丈な肌を持っていなければ、チクチク刺さってとっても痛いですからね。

 「『『はーい!』』」

 ちみっ子なモンスターや動物達は元気にお返事を返します。
 けれどもその視線はパカパカと素手で割っていく三巳の手にありました。
 大人達はその視線に気が付いています。けれども一度は注意しました。だから言ってもわからない事は経験すれば良いと、幼い頃に馬鹿をやった自分を思い出しながら悟り切った顔をするのでした。

 「ぐきゃん!い、いだいよぅ!!」

 案の定。言ったそばから聞かない子がいた様です。指に刺さったイガをブンブンと振り回してギャン泣きです。

 「ぐが!だから言っただろうが!」

 お父さん小鬼がお目々を吊り上げてお説教モードです。けれどもお手々は優しく介抱してくれていて、お父さんの優しさがわかります。
 そんな子小鬼の姿に、触ろうとしていた他の子供達はチロリと両親を見て、

 『つ、摘もうとしただけだよ。割りやすい様に動かすだけだもん』

 と嘯くのでした。

 改めて始めた栗拾いは、ちみっ子達にとって良い遊びとなっています。お互いにこうやって取ると良い、とかこんなに大きいの取ったぞ、とかキャイキャイはしゃいで楽しそうです。
 それを横目に三巳と大人は真剣に栗拾いです。大人のモンスターや動物達は冬に備えて蓄えないといけませんからね。

 「今年の冬も超えられそうか?」

 三巳は栗を拾いなら尋ねます。
 小鬼はそれなりに冬も活動出来ますが、だからこそご飯が手に入り難い冬は生き残るのに必死です。動物や動物型のモンスターは冬眠する種族が多いですが、それでも蓄えは必要です。

 「ぐがぁ、オレ達んとこは畑もやってるからな。なんとかなる」

 というのは小鬼達です。
 確かに人に近い姿と知性を持っているのである程度の文明はある様です。

 『あたし達はねぇ、まだ少し足りないかなぁ。何分体が大きいからねぇ』

 そう言ったのは大熊です。
 川で魚を取れない分、冬は日持ちのする木の実が沢山必要です。

 「うにゅ。体大きいと大変なんだよ」

 困り眉毛な三巳ですが、小鬼がこれに挙手をしてきました。

 「ぐが!なら俺達が干物やドライフルーツ多めに作るから、代わりに材料集め手伝ってくれないか?」
 『おや?良いのかい?それじゃあお言葉に甘えようかね』

 種族が違っても助け合う姿に、三巳はほんわかとして嬉しそうに尻尾を振るのでした。
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