獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

ちょっこれーとは、か・か・お♪

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 三巳がお引越ししたお家は村の外れにあります。
 何故ならこの家に住む母獣も、その娘の三巳も、獣の神様だからです。その本性が獣にあるので森に近い場所です。
 特に母獣は森で微睡む事が多いのですが、前世普通の人間だった三巳はご飯はやっぱり調理された物が一番!なのです。

 そんな三巳の今一番垂涎物は……。

 「出来たよ三巳」

 クロがそう言って三巳の前に持って来たのは焦茶色の板です。

 「にゃ――――っ♪ちょこれーと!ちょこれーとなんだよ!!」

 そうです。尻尾も耳もはち切れんばかりに振って大喜びなチョコレートです。

 「はわ~っ、な、何百年振りかな!?はにゅーっっ良い香りなんだよっ」

 チョコレートを支点にちょこまかぐるぐる回って、でも視線は一点集中です。
 リファラでもココアはお金持ちの飲み物だったので、嗜好品に手を付けるより街の復興大優先で飲めずにいたのです。
 つまり、焦らしに焦らされた後の今。なのです。

 「ふ、ふぁっ!た、食べて良いのか!?食べて良いよな!?父ちゃん!」

 大きな真ん丸お目々をキンキラキンに輝かせて、涎も隠す気がありません。
 愛娘の甘える姿にクロもクスリと微笑みます。

 「勿論。三巳の為に作ったのだから」
 「にゃ――――!!」

 あまりの感動に尻尾の毛がぶわわっ!と膨らみました。
 恐る恐る手に取る三巳は、ふんすふんすと匂いを嗅いでウットリすると、ペロンと先ずは舐めました。途端にしびびっと体を震わせます。ほっぺを赤く膨らませ、お目々はウットリです。

 「……」

 あまりの美味しさに言葉も出ません。
 両手で端っこを持った三巳は、ゆっくりとお口を近付けるとパクリと含んでパキリと割ってあむあむタイムです。お口に溶けて広がる甘苦いチョコレートの風味が、三巳にお料理漫画に出てくる様な景色を見せてくれて幸せです。
 もぐもく。あむあむ。ゆっくり噛んで溶かしてゴクリとしたら、「はふぅー」と幸せの吐息を漏らしました。

 「とぉちゃん」
 「何だい三巳」
 「ありがとう」
 「ふふ、どういたしまして」

 クロの毛並みにポスリと耳を押し付けて、グリグリグリリとありがとうの気持ちを届けると、クロも嬉しそうにニッコリ微笑んで三巳の頭を撫でてくれます。

 「今度はちょこけーきを作ってみるよ」

 耳裏をかしかし撫でるクロの言葉は、三巳の耳をピーン!と立たせるのに効果抜群なのでした。
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