215 / 372
本編
パメさんどこですか?
しおりを挟む
風通しの良い屋内に広く絨毯が敷かれ、壁には様々な模様に彩られたタペストリーが隙間なく飾られています。
三巳が今いるその場所は顔役がいるはずの場所です。けれども目の前には片膝を立てて胡座をかいている白いお髭が立派なお爺さんしかいません。まるでサンタクロースの様な長いお髭に三巳は釘付けです。
「眉毛ももっさり。お目々が見えないんだよ」
眉まで白くて真っ白々です。髪の毛も白いですが、とっても短いのでイエティの様だとは思わずに済みました。
お爺さんはレオを見上げ、お髭をもそりと動かしました。
「レオか。久しいな」
「イントネーションが三巳と一緒!」
お髭に隠れた口から聞こえた言葉には独特のイントネーションがありません。グランの人達の言葉を沢山聞いた三巳は驚きます。
「顔役は国一番の長生きなのさ。本人曰く人生経験が豊富らしいぜ」
「おーそうなのかー。凄いなー」
恐らく聞かなくても三巳よりは確実に年下のお爺さんですが、人の世界で長く生きるという事はそれだけ色々あるのでしょう。三巳は素直に感心して頷き尻尾を振りました。
「ほむほむ。暫く顔を見せん内に子供をこさえとったか」
しかし三巳を見て言われたその言葉には、三巳も尻尾をしおしおと垂らして悲しみの表情を浮かべました。
「み、三巳はそんなにお子ちゃまに見えるのか……」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
「相変わらずだな爺さん。あんま揶揄い過ぎないでくれよ。これでも俺の連れなんだ」
「ほむほむ。がーるふれんどか。レオも隅におけんのー」
「がっ、がーるふれんどっ」
「やめてくれ爺さん」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
終始調子を変えずに話すお爺さんに、珍しく三巳が疲れた顔で耳と尻尾を萎らせました。
感情がわかり易く耳と尻尾に出る三巳に、お爺さんは眉毛と髭に隠れた目と口をニコリとさせます。そしてジッと見据えていた片方の眉を上げました。すると眉毛に隠れた海色の目が現れます。
「ほいでこの老いぼれに何用かな?お嬢ちゃん」
体はお爺さんなのにそんな事を感じさせないとても強くて真っ直ぐな目で見て言われた三巳は、どこか母獣に通じる厳格さを感じて尻尾をビッと上げました。
答え方に寄っては母獣のお説教コースと同じ位怖い目に合うと本能で感じたのです。
「三巳はチョコ好きでな、だからカカオの木を育てたいだよ。それでな、苗木を知ってそうなパメって人が何処にいるのか知りたいんだよ」
ドキドキしながら事情を説明すると、お爺さんは海色の目で三巳をジッと見たまま髭を数度なぞります。そしてなぞる手を止めると眉も下げて「ほむほむ」と一つ頷きました。
「まあ良い。こんなこんまい嬢ちゃん神さんが悪い事に使いはせんぢゃろ」
そう言って片膝に手を置いたお爺さんは、「よっこいせ」と言いそうな動きで立ち上がります。そして腰に両手を添えて外へと歩き出しました。
三巳はそんなお爺さんの後を付いて歩きながらレオを見上げます。そして口に手を添えて
「神気漏れてる?」
と、こしょこしょと小声で尋ねます。
レオは不安気な三巳の頭をポンポンと撫でて上を向きました。
「あの爺さんは化け物の部類だ。あんま気にすんな」
過去に色々あったのでしょう。慰めにそう言ったレオの目は理解する事を諦めた色をしていました。
三巳はちょっと聞きたい気もしましたが、人の過去は無闇に詮索しないのがエチケットです。話しても良い時は話してくれるだろうと頷き、一応神気の漏れがないか全体を確認します。そして大丈夫そうだと納得すると改めてお爺さんを具に観察しました。
「くえない人というのはああいう人を言うのかな」
「さて、な。でもまあ、あの爺さんの目は確かだぜ」
一見ただのひょうきんなお爺さんです。けれども三巳が神族だと見抜いた事から只者ではないでしょう。
それでも悪い人には見えないし、何よりレオが紹介してくれた人だから警戒心は抱きません。むしろ楽しい人だなと尻尾を大きく振るのでした。
三巳が今いるその場所は顔役がいるはずの場所です。けれども目の前には片膝を立てて胡座をかいている白いお髭が立派なお爺さんしかいません。まるでサンタクロースの様な長いお髭に三巳は釘付けです。
「眉毛ももっさり。お目々が見えないんだよ」
眉まで白くて真っ白々です。髪の毛も白いですが、とっても短いのでイエティの様だとは思わずに済みました。
お爺さんはレオを見上げ、お髭をもそりと動かしました。
「レオか。久しいな」
「イントネーションが三巳と一緒!」
お髭に隠れた口から聞こえた言葉には独特のイントネーションがありません。グランの人達の言葉を沢山聞いた三巳は驚きます。
「顔役は国一番の長生きなのさ。本人曰く人生経験が豊富らしいぜ」
「おーそうなのかー。凄いなー」
恐らく聞かなくても三巳よりは確実に年下のお爺さんですが、人の世界で長く生きるという事はそれだけ色々あるのでしょう。三巳は素直に感心して頷き尻尾を振りました。
「ほむほむ。暫く顔を見せん内に子供をこさえとったか」
しかし三巳を見て言われたその言葉には、三巳も尻尾をしおしおと垂らして悲しみの表情を浮かべました。
「み、三巳はそんなにお子ちゃまに見えるのか……」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
「相変わらずだな爺さん。あんま揶揄い過ぎないでくれよ。これでも俺の連れなんだ」
「ほむほむ。がーるふれんどか。レオも隅におけんのー」
「がっ、がーるふれんどっ」
「やめてくれ爺さん」
「ほむほむ。冗談ぢゃ」
終始調子を変えずに話すお爺さんに、珍しく三巳が疲れた顔で耳と尻尾を萎らせました。
感情がわかり易く耳と尻尾に出る三巳に、お爺さんは眉毛と髭に隠れた目と口をニコリとさせます。そしてジッと見据えていた片方の眉を上げました。すると眉毛に隠れた海色の目が現れます。
「ほいでこの老いぼれに何用かな?お嬢ちゃん」
体はお爺さんなのにそんな事を感じさせないとても強くて真っ直ぐな目で見て言われた三巳は、どこか母獣に通じる厳格さを感じて尻尾をビッと上げました。
答え方に寄っては母獣のお説教コースと同じ位怖い目に合うと本能で感じたのです。
「三巳はチョコ好きでな、だからカカオの木を育てたいだよ。それでな、苗木を知ってそうなパメって人が何処にいるのか知りたいんだよ」
ドキドキしながら事情を説明すると、お爺さんは海色の目で三巳をジッと見たまま髭を数度なぞります。そしてなぞる手を止めると眉も下げて「ほむほむ」と一つ頷きました。
「まあ良い。こんなこんまい嬢ちゃん神さんが悪い事に使いはせんぢゃろ」
そう言って片膝に手を置いたお爺さんは、「よっこいせ」と言いそうな動きで立ち上がります。そして腰に両手を添えて外へと歩き出しました。
三巳はそんなお爺さんの後を付いて歩きながらレオを見上げます。そして口に手を添えて
「神気漏れてる?」
と、こしょこしょと小声で尋ねます。
レオは不安気な三巳の頭をポンポンと撫でて上を向きました。
「あの爺さんは化け物の部類だ。あんま気にすんな」
過去に色々あったのでしょう。慰めにそう言ったレオの目は理解する事を諦めた色をしていました。
三巳はちょっと聞きたい気もしましたが、人の過去は無闇に詮索しないのがエチケットです。話しても良い時は話してくれるだろうと頷き、一応神気の漏れがないか全体を確認します。そして大丈夫そうだと納得すると改めてお爺さんを具に観察しました。
「くえない人というのはああいう人を言うのかな」
「さて、な。でもまあ、あの爺さんの目は確かだぜ」
一見ただのひょうきんなお爺さんです。けれども三巳が神族だと見抜いた事から只者ではないでしょう。
それでも悪い人には見えないし、何よりレオが紹介してくれた人だから警戒心は抱きません。むしろ楽しい人だなと尻尾を大きく振るのでした。
11
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる