234 / 372
本編
父ちゃんの歌は心地良い
しおりを挟む
チクチク。チクチク。静かな室内に針が布を通す音が聞こえます。
音を作っているのはクロです。三巳の服を作っているクロです。
その後ろにのっしりと寝そべり尻尾でクロを囲う母獣がいます。
クロの前には三巳がうつ伏せで寝そべりじっとクロの動く手を見ています。
チクチク。チクチク。一定の音頭で針が通る音に、三巳の耳と尻尾が揺れています。
「うにゅぅぅ。何だかとっても眠たくなる音なんだよー」
三巳はウトウトしてきた様です。うつらうつらとして、時々ハッと目を見開き、そしてまたうつらうつらとしています。
「ふふふ。出来上がるまでまだまだ掛かるから寝ていて良いよ」
「にゅ……」
クロの細長い尻尾で頭をポンポンされた三巳は、ついにそのまま寝てしまいました。
目の前でぷうぷう寝息を立てる三巳の姿にクロもホッコリしています。
「愛し良い子ねんねしな♪夢見て冒険ねんねしな♪」
クロは優しい旋律で歌い始めました。
チクチク。チクチク。手は服を縫い。
ポンポン。ポンポン。尻尾は三巳を優しく寝かせ。
慈愛の歌が部屋をより温かみのある空間を作っています。
三巳は心地良い歌を聞きながら夢を見ました。
~~三巳の夢の中~~
にゅ。うにゅう。ここ、何処だ?
三巳は。三巳は父ちゃんに寝てて良いよって言われてて。何で白い霧の中にいるんだ?でも父ちゃんの歌声が空から聞こえて気持ち良いんだよ。
あ。そうか。夢の中だ。
三巳夢の中にいるんだよ。
霧の夢?あ。晴れてきた。
あれ?ホントにここ何処?三巳知らないんだよ。
谷みたいな所で、おっきな風車がいくつもある。建物もあるけど多分ここ雪国じゃないな。建て方が積もるの想定されてないし。ポツポツってある建物や風車の周りは麦畑で金色の水面みたいで綺麗なんだよ。
あ、父ちゃんみたいな人達がいる。猫の獣人の村なのかな。
三毛猫にロシアンブルーにあれはメイクーン……だったかな?毛の長い猫の獣人。色んな種の猫達がいるなー。
ちょっとお話してみたいなー。
ねーちょっとそこの人ーってあれ?あれれ?声が出ないよ?それに体が勝手に動いてる!
三巳ってばどうなっちゃったんだろ!
景色が勝手に動いて、でも村の中を歩いて色んな人と会話してる。勿論話してるのは三巳じゃないのに三巳なんだ。
これってきっと誰かの目線かも。だとしたら父ちゃんかな?
あ!黒い猫尻尾が見えた!三巳の尻尾が黒い猫尻尾になってる!
やっぱしこの体父ちゃんだ!
わーっ、父ちゃんの目線高いなぁー。凄いなぁー。三巳もこれ位大っきくなれるかなー?
にゅふふー♪三巳ってば父ちゃんにお話聞く前に父ちゃんの生まれた国知っちゃった!
起きたら勝手に見てごめんねって言わないとね。
でも今はもうちょっと父ちゃんの生まれた国を見せてね。
気持ちの良い風が吹く谷の村なんだよ。いつか連れてって欲しいな。
んにゅ?あれ?あれれ?あれってもしかして……。
「にゅは!」
「三巳!?」
「危なかったんだよ。流石に母ちゃんとの馴れ初めを勝手に見るのは良くないと思うんだよ」
「???大丈夫かい?三巳?」
「んにゅ?にゅ!大丈夫!ちょっと夢で父ちゃんの生まれた国見てただけ」
「おやまあ恥ずかしいねぇ。お歌に乗って心が繋がったんだね」
流石は獣神を嫁に持つクロです。三巳がクロの心に同期した事は普通に受け止めています。
恥ずかしそうに尻尾をくねらせるクロに、いつの間にか起きていた母獣がくつくつと笑います。
『あそこは良き場であったな。クロを産み、クロを育み、我と引き合わせてくれた場よ。今はクロの知り合いもいない故、帰ってはおらなんだが……。ふむ、三巳にとっては親の実家であるな』
「そうだねぇ。ちっとも帰っていやしなかったけれど、一度三巳を連れて帰ってみるのも良いね」
「父ちゃんの!実家!行きたい!行こう!」
田舎のばっちゃはいないけれど、それでも両親と一緒ならきっとそこはとても居心地の良い場所だと三巳は思いを馳せるのでした。
音を作っているのはクロです。三巳の服を作っているクロです。
その後ろにのっしりと寝そべり尻尾でクロを囲う母獣がいます。
クロの前には三巳がうつ伏せで寝そべりじっとクロの動く手を見ています。
チクチク。チクチク。一定の音頭で針が通る音に、三巳の耳と尻尾が揺れています。
「うにゅぅぅ。何だかとっても眠たくなる音なんだよー」
三巳はウトウトしてきた様です。うつらうつらとして、時々ハッと目を見開き、そしてまたうつらうつらとしています。
「ふふふ。出来上がるまでまだまだ掛かるから寝ていて良いよ」
「にゅ……」
クロの細長い尻尾で頭をポンポンされた三巳は、ついにそのまま寝てしまいました。
目の前でぷうぷう寝息を立てる三巳の姿にクロもホッコリしています。
「愛し良い子ねんねしな♪夢見て冒険ねんねしな♪」
クロは優しい旋律で歌い始めました。
チクチク。チクチク。手は服を縫い。
ポンポン。ポンポン。尻尾は三巳を優しく寝かせ。
慈愛の歌が部屋をより温かみのある空間を作っています。
三巳は心地良い歌を聞きながら夢を見ました。
~~三巳の夢の中~~
にゅ。うにゅう。ここ、何処だ?
三巳は。三巳は父ちゃんに寝てて良いよって言われてて。何で白い霧の中にいるんだ?でも父ちゃんの歌声が空から聞こえて気持ち良いんだよ。
あ。そうか。夢の中だ。
三巳夢の中にいるんだよ。
霧の夢?あ。晴れてきた。
あれ?ホントにここ何処?三巳知らないんだよ。
谷みたいな所で、おっきな風車がいくつもある。建物もあるけど多分ここ雪国じゃないな。建て方が積もるの想定されてないし。ポツポツってある建物や風車の周りは麦畑で金色の水面みたいで綺麗なんだよ。
あ、父ちゃんみたいな人達がいる。猫の獣人の村なのかな。
三毛猫にロシアンブルーにあれはメイクーン……だったかな?毛の長い猫の獣人。色んな種の猫達がいるなー。
ちょっとお話してみたいなー。
ねーちょっとそこの人ーってあれ?あれれ?声が出ないよ?それに体が勝手に動いてる!
三巳ってばどうなっちゃったんだろ!
景色が勝手に動いて、でも村の中を歩いて色んな人と会話してる。勿論話してるのは三巳じゃないのに三巳なんだ。
これってきっと誰かの目線かも。だとしたら父ちゃんかな?
あ!黒い猫尻尾が見えた!三巳の尻尾が黒い猫尻尾になってる!
やっぱしこの体父ちゃんだ!
わーっ、父ちゃんの目線高いなぁー。凄いなぁー。三巳もこれ位大っきくなれるかなー?
にゅふふー♪三巳ってば父ちゃんにお話聞く前に父ちゃんの生まれた国知っちゃった!
起きたら勝手に見てごめんねって言わないとね。
でも今はもうちょっと父ちゃんの生まれた国を見せてね。
気持ちの良い風が吹く谷の村なんだよ。いつか連れてって欲しいな。
んにゅ?あれ?あれれ?あれってもしかして……。
「にゅは!」
「三巳!?」
「危なかったんだよ。流石に母ちゃんとの馴れ初めを勝手に見るのは良くないと思うんだよ」
「???大丈夫かい?三巳?」
「んにゅ?にゅ!大丈夫!ちょっと夢で父ちゃんの生まれた国見てただけ」
「おやまあ恥ずかしいねぇ。お歌に乗って心が繋がったんだね」
流石は獣神を嫁に持つクロです。三巳がクロの心に同期した事は普通に受け止めています。
恥ずかしそうに尻尾をくねらせるクロに、いつの間にか起きていた母獣がくつくつと笑います。
『あそこは良き場であったな。クロを産み、クロを育み、我と引き合わせてくれた場よ。今はクロの知り合いもいない故、帰ってはおらなんだが……。ふむ、三巳にとっては親の実家であるな』
「そうだねぇ。ちっとも帰っていやしなかったけれど、一度三巳を連れて帰ってみるのも良いね」
「父ちゃんの!実家!行きたい!行こう!」
田舎のばっちゃはいないけれど、それでも両親と一緒ならきっとそこはとても居心地の良い場所だと三巳は思いを馳せるのでした。
11
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
幸福なる侯爵夫人のお話
重田いの
ファンタジー
とある侯爵家に嫁いだ伯爵令嬢。
初夜の場で、夫は「きみを愛することはない」というけれど。
最終的にすべてを手にした侯爵夫人のお話。
あるいは、負い目のある伯爵令嬢をお飾りの妻にして愛人とイチャイチャ過ごそうと思ったらとんでもないハズレくじを引いちゃった侯爵のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる