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本編
船旅
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ゆらゆらゆらり。
三巳は今、初めて大きな船に乗っています。
グランを出てから数日。
「ぬははははっ!にゅひひふひっ!」
船の旅は初めて尽くしで三巳の奇怪な笑い声が止まりません。波に揺られて動く船が楽しくて終始変な笑いが漏れています。
「嬢ちゃん。肝っ玉が座っていんのはわかるが、あんま端っこに立ってるなよ。落ちちまうぜ」
楽しそうに笑う三巳に、船員達も和んでいます。豪快に笑いながも注意喚起は忘れません。
「うにゅ!気を付けるんだよ!」
今は海も静かで凡そ危なく無さそうに見えますが、プロの意見大事です。
三巳は数歩舳先から離れます。ちょっとタイタニック号な気分を味わいたかっただけなのです。この思いを共有出来る人がいないのがちょっぴし寂しかったりもします。
両手をピンと伸ばして水平線を見ていると、波間に太陽の光が反射してとても綺麗です。
「うぬ。今日もいい天気」
全く崩れそうに無い空模様に満足して頷くと、舳先から離れてマストの下へやって来ました。
見上げると大きな帆が風を受けて力強く船を押してくれています。
「うぬ。力強い。これなら予定通り着きそうなんだよ」
またもや頷き大御所の如き出立ちで船内へ入っていきました。
前世で昭和な生まれのお婆ちゃんな三巳にはフラグと言う言葉は有りません。残念ながら若い子達からも聞く機会が無かったのです。
そして山の天気と同じく。海の天気も変わりやすいとは思いもしていないのでした。
お昼ご飯に船内の食事処でお魚メインの料理を食べていた時です。
ポツリ。ポツリと窓を打つ音に三巳の耳がピクリと動きました。
思わずフォークを止めて外を見ます。
すると窓の外は先程までの晴天が嘘の様に薄暗くなっていたではありませんか。
「!!?!」
良い調子でいた三巳はビックリ仰天で肝が冷えます。
嵐にでもなったらきっととても怖いでしょう。
三巳はチラチラと船員の顔色を伺います。その様子は天気を気にしてはいますが焦る様子はありません。
もう一度外を見ると確かに雨足は弱そうです。三巳はホッとしてフォークを魚に刺して食事を楽しく再会させました。
食事を終えてお茶でひと息入れていると、何やら船員が騒がしくなってきました。
何事かとお茶の手を止めた三巳は、船員の次の言葉で総毛立ってしまいます。
「嵐が来る!乗客は自分の部屋で安全を確保しろ!」
日本と違って荒っぽい船員の言葉に大きくビクッとすると、直ぐにクロに両肩を優しく抱かれます。
「大丈夫だよ。船員さん達は嵐のプロだからね。私達は邪魔をしない様に部屋に戻ろう」
「う……うにゅ……」
安心させる笑みを向けて貰ってもやっぱしちょっぴし怖いです。
クロに背中を押されながらも辿り着いた船室で、三巳は毛を少し逆立てつつもソロリソロリと窓へと近寄ります。
窓から見える景色はまだ青空です。けれども遠い遠い空の向こうには、分厚く大きな大きな黒い雲があり暗く澱んでいるのが見えました。
「さっき迄無かったのに」
「海だから暑いと雲が起き易いんだね」
ピルピルと震える三巳の後ろから外を見るクロが言います。その髭は何時もよりも精細さに欠けている様に見えます。
「雨が近いと髭が落ち着かないねぇ」
髭を撫でながら窓から離れたクロは落ち着いた様子でベットに座りました。
「大丈夫だよ。船乗り達は嵐になれているからね」
『然様。船の事は船員に任せておけばよい。我等は寝て待てば良いのだ』
船室に入るなり獣型になった母獣はゆったりとベットに乗ると、クロを囲む様に寝そべり言いました。
あまりにいつも通りの2人に、三巳も何だか怖がる方が可笑しい気がしてきます。
『難破した所でクロは我が守る故、問題ないしの』
確かに神族である三巳や母獣、それに眷属のクロは五体無事に済むでしょう。
「それもそうなんだけど。此処から泳いで行くのか?」
しかしグランを出てからまだたった数日です。半月すら経っていません。そんな場所から船でふた月掛かる場所迄ひたすらに泳いで行く。それを想像するだけで三巳はうんざりしてしまいました。
そしてクロもそれに困った顔をします。
「確かにそんなに沢山の時間を愛しいひとに無理をさせたくはないねぇ」
クロは後ろに寝そべる母獣の鼻を鼻でスリスリさせながら、大事そうに首周りを撫でて言いました。
それに耳をピクリと立てて母獣の目が光りました。
『クロに心配を掛けさせるとは、不届きな嵐め。成敗してくれようぞ』
何やら不穏な空気を立て始めた母獣に、三巳が焦ります。
「き、急に嵐が無くなったら船の中の皆不信に思わないかな?」
狭い空間で神族とバレるのは得策では無いと止める三巳に、母獣は眉根を寄せました。
『ほう。では三巳よ。汝に事態の収集を任せるかの』
「にゅおっ!?」
まさかの飛び火に三巳は怖いのも忘れて飛び跳ねます。そして着地と同時に船が大きく揺れたのでバランスを崩して尻餅を突いてしまいました。
「三巳がやるんだよ!?」
そのあまりの滑稽さに母獣はクツクツと犬歯を剥き出しに笑います。
『他に誰ぞ出来る者がおるかのう』
この船に神族は三巳と母獣だけです。
突然の大変な課題に、三巳は夏休みの宿題を夏休み最終日に思い出したかの様な慌て振りです。
「み、三巳が……やるのか……」
耳をヘニョリと垂らしてドンドンと荒れ狂う大海原を見遣ります。
(バレずに?三巳が?出来るのかな?)
三巳はリファラで初っ端から正体をバラすという失敗をしています。リファラだから何とかなりました。しかし今は船の中です。船乗りは強面が多いイメージです。
(うんにゃ!ジョナジョナだっていー奴だったし!バレないように気を付けるだけだし!)
「やってみるんだよ!」
という訳で、ミッションインポッシブルスタートです。
三巳は今、初めて大きな船に乗っています。
グランを出てから数日。
「ぬははははっ!にゅひひふひっ!」
船の旅は初めて尽くしで三巳の奇怪な笑い声が止まりません。波に揺られて動く船が楽しくて終始変な笑いが漏れています。
「嬢ちゃん。肝っ玉が座っていんのはわかるが、あんま端っこに立ってるなよ。落ちちまうぜ」
楽しそうに笑う三巳に、船員達も和んでいます。豪快に笑いながも注意喚起は忘れません。
「うにゅ!気を付けるんだよ!」
今は海も静かで凡そ危なく無さそうに見えますが、プロの意見大事です。
三巳は数歩舳先から離れます。ちょっとタイタニック号な気分を味わいたかっただけなのです。この思いを共有出来る人がいないのがちょっぴし寂しかったりもします。
両手をピンと伸ばして水平線を見ていると、波間に太陽の光が反射してとても綺麗です。
「うぬ。今日もいい天気」
全く崩れそうに無い空模様に満足して頷くと、舳先から離れてマストの下へやって来ました。
見上げると大きな帆が風を受けて力強く船を押してくれています。
「うぬ。力強い。これなら予定通り着きそうなんだよ」
またもや頷き大御所の如き出立ちで船内へ入っていきました。
前世で昭和な生まれのお婆ちゃんな三巳にはフラグと言う言葉は有りません。残念ながら若い子達からも聞く機会が無かったのです。
そして山の天気と同じく。海の天気も変わりやすいとは思いもしていないのでした。
お昼ご飯に船内の食事処でお魚メインの料理を食べていた時です。
ポツリ。ポツリと窓を打つ音に三巳の耳がピクリと動きました。
思わずフォークを止めて外を見ます。
すると窓の外は先程までの晴天が嘘の様に薄暗くなっていたではありませんか。
「!!?!」
良い調子でいた三巳はビックリ仰天で肝が冷えます。
嵐にでもなったらきっととても怖いでしょう。
三巳はチラチラと船員の顔色を伺います。その様子は天気を気にしてはいますが焦る様子はありません。
もう一度外を見ると確かに雨足は弱そうです。三巳はホッとしてフォークを魚に刺して食事を楽しく再会させました。
食事を終えてお茶でひと息入れていると、何やら船員が騒がしくなってきました。
何事かとお茶の手を止めた三巳は、船員の次の言葉で総毛立ってしまいます。
「嵐が来る!乗客は自分の部屋で安全を確保しろ!」
日本と違って荒っぽい船員の言葉に大きくビクッとすると、直ぐにクロに両肩を優しく抱かれます。
「大丈夫だよ。船員さん達は嵐のプロだからね。私達は邪魔をしない様に部屋に戻ろう」
「う……うにゅ……」
安心させる笑みを向けて貰ってもやっぱしちょっぴし怖いです。
クロに背中を押されながらも辿り着いた船室で、三巳は毛を少し逆立てつつもソロリソロリと窓へと近寄ります。
窓から見える景色はまだ青空です。けれども遠い遠い空の向こうには、分厚く大きな大きな黒い雲があり暗く澱んでいるのが見えました。
「さっき迄無かったのに」
「海だから暑いと雲が起き易いんだね」
ピルピルと震える三巳の後ろから外を見るクロが言います。その髭は何時もよりも精細さに欠けている様に見えます。
「雨が近いと髭が落ち着かないねぇ」
髭を撫でながら窓から離れたクロは落ち着いた様子でベットに座りました。
「大丈夫だよ。船乗り達は嵐になれているからね」
『然様。船の事は船員に任せておけばよい。我等は寝て待てば良いのだ』
船室に入るなり獣型になった母獣はゆったりとベットに乗ると、クロを囲む様に寝そべり言いました。
あまりにいつも通りの2人に、三巳も何だか怖がる方が可笑しい気がしてきます。
『難破した所でクロは我が守る故、問題ないしの』
確かに神族である三巳や母獣、それに眷属のクロは五体無事に済むでしょう。
「それもそうなんだけど。此処から泳いで行くのか?」
しかしグランを出てからまだたった数日です。半月すら経っていません。そんな場所から船でふた月掛かる場所迄ひたすらに泳いで行く。それを想像するだけで三巳はうんざりしてしまいました。
そしてクロもそれに困った顔をします。
「確かにそんなに沢山の時間を愛しいひとに無理をさせたくはないねぇ」
クロは後ろに寝そべる母獣の鼻を鼻でスリスリさせながら、大事そうに首周りを撫でて言いました。
それに耳をピクリと立てて母獣の目が光りました。
『クロに心配を掛けさせるとは、不届きな嵐め。成敗してくれようぞ』
何やら不穏な空気を立て始めた母獣に、三巳が焦ります。
「き、急に嵐が無くなったら船の中の皆不信に思わないかな?」
狭い空間で神族とバレるのは得策では無いと止める三巳に、母獣は眉根を寄せました。
『ほう。では三巳よ。汝に事態の収集を任せるかの』
「にゅおっ!?」
まさかの飛び火に三巳は怖いのも忘れて飛び跳ねます。そして着地と同時に船が大きく揺れたのでバランスを崩して尻餅を突いてしまいました。
「三巳がやるんだよ!?」
そのあまりの滑稽さに母獣はクツクツと犬歯を剥き出しに笑います。
『他に誰ぞ出来る者がおるかのう』
この船に神族は三巳と母獣だけです。
突然の大変な課題に、三巳は夏休みの宿題を夏休み最終日に思い出したかの様な慌て振りです。
「み、三巳が……やるのか……」
耳をヘニョリと垂らしてドンドンと荒れ狂う大海原を見遣ります。
(バレずに?三巳が?出来るのかな?)
三巳はリファラで初っ端から正体をバラすという失敗をしています。リファラだから何とかなりました。しかし今は船の中です。船乗りは強面が多いイメージです。
(うんにゃ!ジョナジョナだっていー奴だったし!バレないように気を付けるだけだし!)
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