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第11章 声が導くふたりの休日
第5話
翌朝
「あっ……!」
寝返りを打った唯が、隣に叶人がいることに気づき、跳ね起きた。
「お、起きた?」
叶人はまだ枕に頬を預けたまま、目線だけで彼女を見上げてくる。
その気の抜けた声と、優しいまなざしが、変に現実味を帯びていて──
唯は顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせた
「……っ、昨日……あの……そのっ……!!」
ベッドの端で縮こまりながら、毛布をぐいと引き寄せる。
その仕草すらいじらしく思えて、叶人は微笑を浮かべたまま、少しだけ身を起こした。
「うん。昨日のこと、ちゃんと覚えてる?」
唯はこくこくと必死に頷いて──
「覚えてます……! というか、思い出して、今死にそうです……!!」
「……そんなに?」
叶人がからかうように笑うと、唯は小さく丸まりながら、情けない声で言った。
「……ほんとうに……すみませんでしたぁ……」
泣きそうな背中に、ため息混じりの笑みを落としながら、叶人はそっと彼女の背に触れる。
「唯ちゃん」
ぽつんと呼ぶと、彼女はそろそろと顔を上げた。
泣きそうな瞳を見た瞬間──叶人の胸が、きゅっと痛んだ。
「そんなに自分のこと、責めないで」
「……でも」
「俺がBarに誘ったんだし、楽しかったなら、それでいいじゃん?」
「……うん。でも、迷惑かけたよね……変なふうになっちゃって……」
「迷惑なんて思ってないよ」
叶人はゆっくりと彼女の頭を撫でる。
「こうして、隣にいてくれる。……俺、それだけで十分だから」
そう言いながら、叶人は優しく彼女の頭を撫でた。
ふにゃっと力が抜けたように、唯が肩の力を落とす。
「……本当、優しすぎる」
「優しくもなるよ。好きな子がしょんぼりしてたら、放っとけないから」
「っ……」
頬が赤く染まっていくのが、目に見えてわかった。
「それに……昨日の唯ちゃん、めちゃくちゃ可愛かったし?」
「や、やめて……! 思い出したくない……!」
両手で頬を覆ってぶんぶんと首を振る。
叶人はそれを眺めながら、くすっと笑った。
「じゃあ俺がずっと覚えてる。ほろ酔いで甘えてきた唯ちゃん、最強だったなーって」
「~~~っ、ばかっ」
「ありがと。……俺、ああいうの、実はすごく嬉しかったから」
唯がちらりと彼を見た。驚いたように。
「……え?」
「俺にしか見せない顔とか、声とか……全部、唯ちゃんが“信じてくれた証拠”みたいに感じたんだ。甘えてくれて、委ねてくれて……あんなの、幸せすぎて、ずっと夢みたいだった」
言葉の端々に、誠実なぬくもりがにじむ。
照れくさいのに、聞きたくてたまらない──そんな感情が、唯の胸の奥にじわりと染みこんでいく。
「……叶人くん」
「名前呼ぶときの声も、酔ってとろとろだったし……なにより」
唇を寄せ、額にそっとキスを落とす。
「“好き”って、言ってくれたじゃん。何回も」
「~~~~っ!! うそ、言ってた……!? 恥ずかしすぎる、忘れて……!」
「ごめん、忘れられない。唯ちゃんの“好き”って、世界一甘い声だった」
「……もうっ」
小さく文句を言いながらも、彼女の手がそっと彼の胸元に伸びてくる。
ぎゅっと掴んで、そこに額を埋める。
その小さな動きが、愛しくてたまらなかった。
「……ねえ、唯ちゃん」
「なに……」
「俺、昨日……我慢したつもりだったけど、やっぱりちょっと後悔してる」
「え……?」
「だって、今こうして抱きしめてても……もっと触れたくなる。キスしたい、今すぐ」
「……」
「でも、それってさ……唯ちゃんのことを好きすぎるせいだよね」
囁くような声に、鼓動が跳ねる。
彼の手が髪を優しく梳くたび、胸があったかくて切なくなる。
「昨日のこと、恥ずかしいって思うのも仕方ないけど……俺は全部、大事にするから。唯ちゃんのこと、もっと好きになっただけだから」
「……そっか。なら、いい」
「ん?」
「恥ずかしいけど……覚えてていいよ、かなとくんなら」
「うん」
にこっと笑った柊のキスは、昨夜よりずっと優しくて甘かった。
「あっ……!」
寝返りを打った唯が、隣に叶人がいることに気づき、跳ね起きた。
「お、起きた?」
叶人はまだ枕に頬を預けたまま、目線だけで彼女を見上げてくる。
その気の抜けた声と、優しいまなざしが、変に現実味を帯びていて──
唯は顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせた
「……っ、昨日……あの……そのっ……!!」
ベッドの端で縮こまりながら、毛布をぐいと引き寄せる。
その仕草すらいじらしく思えて、叶人は微笑を浮かべたまま、少しだけ身を起こした。
「うん。昨日のこと、ちゃんと覚えてる?」
唯はこくこくと必死に頷いて──
「覚えてます……! というか、思い出して、今死にそうです……!!」
「……そんなに?」
叶人がからかうように笑うと、唯は小さく丸まりながら、情けない声で言った。
「……ほんとうに……すみませんでしたぁ……」
泣きそうな背中に、ため息混じりの笑みを落としながら、叶人はそっと彼女の背に触れる。
「唯ちゃん」
ぽつんと呼ぶと、彼女はそろそろと顔を上げた。
泣きそうな瞳を見た瞬間──叶人の胸が、きゅっと痛んだ。
「そんなに自分のこと、責めないで」
「……でも」
「俺がBarに誘ったんだし、楽しかったなら、それでいいじゃん?」
「……うん。でも、迷惑かけたよね……変なふうになっちゃって……」
「迷惑なんて思ってないよ」
叶人はゆっくりと彼女の頭を撫でる。
「こうして、隣にいてくれる。……俺、それだけで十分だから」
そう言いながら、叶人は優しく彼女の頭を撫でた。
ふにゃっと力が抜けたように、唯が肩の力を落とす。
「……本当、優しすぎる」
「優しくもなるよ。好きな子がしょんぼりしてたら、放っとけないから」
「っ……」
頬が赤く染まっていくのが、目に見えてわかった。
「それに……昨日の唯ちゃん、めちゃくちゃ可愛かったし?」
「や、やめて……! 思い出したくない……!」
両手で頬を覆ってぶんぶんと首を振る。
叶人はそれを眺めながら、くすっと笑った。
「じゃあ俺がずっと覚えてる。ほろ酔いで甘えてきた唯ちゃん、最強だったなーって」
「~~~っ、ばかっ」
「ありがと。……俺、ああいうの、実はすごく嬉しかったから」
唯がちらりと彼を見た。驚いたように。
「……え?」
「俺にしか見せない顔とか、声とか……全部、唯ちゃんが“信じてくれた証拠”みたいに感じたんだ。甘えてくれて、委ねてくれて……あんなの、幸せすぎて、ずっと夢みたいだった」
言葉の端々に、誠実なぬくもりがにじむ。
照れくさいのに、聞きたくてたまらない──そんな感情が、唯の胸の奥にじわりと染みこんでいく。
「……叶人くん」
「名前呼ぶときの声も、酔ってとろとろだったし……なにより」
唇を寄せ、額にそっとキスを落とす。
「“好き”って、言ってくれたじゃん。何回も」
「~~~~っ!! うそ、言ってた……!? 恥ずかしすぎる、忘れて……!」
「ごめん、忘れられない。唯ちゃんの“好き”って、世界一甘い声だった」
「……もうっ」
小さく文句を言いながらも、彼女の手がそっと彼の胸元に伸びてくる。
ぎゅっと掴んで、そこに額を埋める。
その小さな動きが、愛しくてたまらなかった。
「……ねえ、唯ちゃん」
「なに……」
「俺、昨日……我慢したつもりだったけど、やっぱりちょっと後悔してる」
「え……?」
「だって、今こうして抱きしめてても……もっと触れたくなる。キスしたい、今すぐ」
「……」
「でも、それってさ……唯ちゃんのことを好きすぎるせいだよね」
囁くような声に、鼓動が跳ねる。
彼の手が髪を優しく梳くたび、胸があったかくて切なくなる。
「昨日のこと、恥ずかしいって思うのも仕方ないけど……俺は全部、大事にするから。唯ちゃんのこと、もっと好きになっただけだから」
「……そっか。なら、いい」
「ん?」
「恥ずかしいけど……覚えてていいよ、かなとくんなら」
「うん」
にこっと笑った柊のキスは、昨夜よりずっと優しくて甘かった。
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