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第三十八話 ギルティア・ハークレイ後編
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それからギルティアは一人で戦い続けた。
時には軍隊を指揮することもあったが、基本的にはいつも一人だ。
『死神』に仲間は要らない。
一人のほうが誰も傷つけずに済むし、傷つかずに済む。
だからこれからも、死ぬまで一人で戦い続ける──。
『わ、わたしはローズ・スノウと申します』
そう思っていた時に、彼女が現れた。
自ら悪役を買って出て周囲を引っ張っていく、元大聖女。
自分がどれだけ拒絶しても仲間だと言って近づいてくる。
いつの間にか、失いたくなくなっていた。
「──たとえ魔術が使えなくとも、俺は守るぞ」
記憶の旅を終えたギルティアは現実に意識を戻して口を開く。
腰に差していた杖を抜き、杖の両端を引っ張った。
「知っているか、ゴミ共」
その間にも、三人の狼男が飛び掛かってきていて──
「俺がグラント・ロアに勝った時、魔術は使っていなかったことを」
「「がぁっ!?」」
一閃──!
鞘から走らせた一条の銀閃が、狼男の胴体を一刀両断する。
「ばかな」
狼男の一人が口を開けて固まった。
「身体強化の魔術も使えねぇはずだ。ただの膂力で、それだけの──!」
「貴様らゴミとは身体の出来が違うんだ」
「……っ、かかれぇえ!」
「「「オォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
次々と襲い来る狼男を銀閃が薙ぎ倒していく。
強靭な狼男の身体を斬れるのはミスリルの刃の賜物と言えるだろう。
死神の名にふさわしい、鬼気迫る剣技に狼男たちもたじろいだ。
だが。
「……っ」
徐々に、確実に、ギルティアの身体に傷が増えていく。
第三魔王との戦いは身体強化の魔術をかけての勝負だったが、魔力嵐を利用したこの結界は体内の魔力すら乱してくる。いくらギルティアといえども、圧倒的に膂力で負けている狼男百人を相手に出来る道理はなかった。
「押してるぞ! 今だ! 畳み掛けろ!」
「応っ!」
「早くしねぇと増援が来るかもしれないしな!」
「ばーか。増援なんて来るわけねぇだろ」
狼男は犬歯を剥き出しにして鼻を鳴らした。
「こいつは『仲間殺し』の死神だぜ? こんなやつの仲間になんて誰もなりたくねぇだろ!」
「違ぇねぇ」
「「「ぎゃっはははははははははは!」」」
魔王を倒した最強をほふれる、得も言われぬ快感。
弱者が強者を倒す下剋上じみた征服感が彼らを支配していた。
(魔術を無効化する結界がここまで厄介だとは)
狼男程度の雑魚が自分を追い込んでいる事実にギルティアは歯噛みした。
しかも奴らは執拗に結界装置に近づけさせまいと肉の壁を作ってくる。
ミスリルの刃も肉脂がへばりついて切れ味が悪くなってきた。
(せめて、結界を壊せれば)
「ぎゃっはははは! 死神討ち取ったりぃ!」
「しまっ」
「テメェの敗因は、仲間がいなかったことだぁ!」
思考に意識を回しすぎて後ろに気付かなかった。
背後から迫る豪速の蹴りがギルティアの頭を蹴り砕く──
その瞬間だった。
「《焼き払え》」
「!?」
一条の光が宙を奔り、狼男を呑み込んだ。
黒焦げ死体となった仲間を見た狼男が声を上げる。
「何者だ!?」
「雑魚に名乗る名はありませんが」
結界の向こうから歩いてくる、魔導人形を従える女。
黒焦げ死体になった魔族を踏みつけ、彼女は言い放つ。
「ギル様の仲間ですけど、何か?」
ローズは決め顔でそう言った。
時には軍隊を指揮することもあったが、基本的にはいつも一人だ。
『死神』に仲間は要らない。
一人のほうが誰も傷つけずに済むし、傷つかずに済む。
だからこれからも、死ぬまで一人で戦い続ける──。
『わ、わたしはローズ・スノウと申します』
そう思っていた時に、彼女が現れた。
自ら悪役を買って出て周囲を引っ張っていく、元大聖女。
自分がどれだけ拒絶しても仲間だと言って近づいてくる。
いつの間にか、失いたくなくなっていた。
「──たとえ魔術が使えなくとも、俺は守るぞ」
記憶の旅を終えたギルティアは現実に意識を戻して口を開く。
腰に差していた杖を抜き、杖の両端を引っ張った。
「知っているか、ゴミ共」
その間にも、三人の狼男が飛び掛かってきていて──
「俺がグラント・ロアに勝った時、魔術は使っていなかったことを」
「「がぁっ!?」」
一閃──!
鞘から走らせた一条の銀閃が、狼男の胴体を一刀両断する。
「ばかな」
狼男の一人が口を開けて固まった。
「身体強化の魔術も使えねぇはずだ。ただの膂力で、それだけの──!」
「貴様らゴミとは身体の出来が違うんだ」
「……っ、かかれぇえ!」
「「「オォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」
次々と襲い来る狼男を銀閃が薙ぎ倒していく。
強靭な狼男の身体を斬れるのはミスリルの刃の賜物と言えるだろう。
死神の名にふさわしい、鬼気迫る剣技に狼男たちもたじろいだ。
だが。
「……っ」
徐々に、確実に、ギルティアの身体に傷が増えていく。
第三魔王との戦いは身体強化の魔術をかけての勝負だったが、魔力嵐を利用したこの結界は体内の魔力すら乱してくる。いくらギルティアといえども、圧倒的に膂力で負けている狼男百人を相手に出来る道理はなかった。
「押してるぞ! 今だ! 畳み掛けろ!」
「応っ!」
「早くしねぇと増援が来るかもしれないしな!」
「ばーか。増援なんて来るわけねぇだろ」
狼男は犬歯を剥き出しにして鼻を鳴らした。
「こいつは『仲間殺し』の死神だぜ? こんなやつの仲間になんて誰もなりたくねぇだろ!」
「違ぇねぇ」
「「「ぎゃっはははははははははは!」」」
魔王を倒した最強をほふれる、得も言われぬ快感。
弱者が強者を倒す下剋上じみた征服感が彼らを支配していた。
(魔術を無効化する結界がここまで厄介だとは)
狼男程度の雑魚が自分を追い込んでいる事実にギルティアは歯噛みした。
しかも奴らは執拗に結界装置に近づけさせまいと肉の壁を作ってくる。
ミスリルの刃も肉脂がへばりついて切れ味が悪くなってきた。
(せめて、結界を壊せれば)
「ぎゃっはははは! 死神討ち取ったりぃ!」
「しまっ」
「テメェの敗因は、仲間がいなかったことだぁ!」
思考に意識を回しすぎて後ろに気付かなかった。
背後から迫る豪速の蹴りがギルティアの頭を蹴り砕く──
その瞬間だった。
「《焼き払え》」
「!?」
一条の光が宙を奔り、狼男を呑み込んだ。
黒焦げ死体となった仲間を見た狼男が声を上げる。
「何者だ!?」
「雑魚に名乗る名はありませんが」
結界の向こうから歩いてくる、魔導人形を従える女。
黒焦げ死体になった魔族を踏みつけ、彼女は言い放つ。
「ギル様の仲間ですけど、何か?」
ローズは決め顔でそう言った。
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