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明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家

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3『おっぱい先輩のナゾ』

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「課長~!」

 僕は課長に泣きつく。

「モーリー先輩がちっとも働いてくれないんです! 何とか言ってやってくださいよ!」

「あ~……」

 四十絡みの課長は気の弱そうな笑みを浮かべて、

「ジュリアちゃんはアレでいいんだよ。それに、キミの班は先月増員したから、十分回ってるだろう?」

「そ、そんなぁ……」

「かーちょ」

 鈴の鳴るような、良く通る声。
 先輩の声だ。
 見れば先輩が、無線型オルゴールを耳から外して、こっちを見ている。
 先輩のでっっっっっっっっっっっっっっっっな胸がばるんと揺れる。

「ちゃん付けセクハラでーすよ」

「異世界世代は厳しいなぁ」

 課長が苦笑する。

「???」

 僕はますます、意味が分からない。
 課長はなぜ、サボってばかりの先輩を叱責しないんだ?
 ここは内勤とはいってもれっきとした戦場であり、シゴトができない人はどんどんクビを切られるのが常な職場。
 数百人のオペレータたちが血相を変えて受話器にかじりついていることを思えば、サボってばかりの先輩が叱られもせず、クビにもならない理由が分からない。

 胸か!? 先輩、まさかあの胸で既婚者の課長を――








 ヴゥゥゥウウゥゥウゥゥウゥウウウウゥゥゥウゥウウウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウゥゥウゥゥウゥウウウウゥゥゥウゥウウウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウゥゥウゥゥウゥウウウウゥゥゥウゥウウウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウゥゥウゥゥウゥウウウウゥゥゥウゥウウウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウゥゥウゥゥウゥウウウウゥゥゥウゥウウウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウゥゥウゥゥウゥウゥゥゥウゥウウウ!!!!!!








 一級サイレン!
 レッドアラートだ!

「第いちサーバとの通信途絶!」

 慌てふためくオペレータと、

「原因は?」

 冷静に質問する課長。

「不明です!」

「PINGは?」

「PING発信! ――ダメです、応答ありません!」

「サーバ班は直ちにサーバルームへ急行」

「「「はい!」」」

 作業用のツナギを着た屈強な男性職員たちが、ドタバタと部屋を出ていく。

 僕も含めたオペレータの面々が、サーバ班の後姿を見送った、
 ――その直後。




 ジリリリリリリン!
   ジリリリリリリン!

     トゥルルルル!
       トゥルルルル!

   ファーンファーンファーン!
     ファーンファーンファーン!

       パラリラパラリラ!
         パラリラパラリラ!




 一斉に電話が鳴り出す!
 第いちサーバによって管理されていた無線機が不通になったためだろう。








   ◆   ◇   ◆   ◇








「原因はまだ分からないのかい?」
『それが、サーバ自体に問題はなさそうなんです。外観問題なし。異音も異臭もせず、目立ったエラーも吐いていません』

 課長とサーバ班の会話が聞こえてくる。
 課全体に情報共有するために、課長がハンズフリーモードで会話しているためだ。

「となれば問題はネットワークにあるはずだ」
『ネットワークのこととなると、俺たちはシロウトでして……』
「君たちはその場で待機。ネットワーク班を向かわせるよ」
『了解です』

 通話が終わる。

「ネットワーク班!」
「「「はい!」」」

 繊細そうな女性職員たちが立ち上がる。
 こういった非常事態に慣れていないのか、彼女たちの顔面は蒼白だ。

 ――その気持ち、すごくよく分かる。

 なんたって、今この瞬間、第いちサーバが復旧するか否かが自分たちの肩にかかってしまったのだから。
 サーバが復旧しなければ何千台もの無線機が動かないままであり、その無線機に命を預けている数万の将兵たちが死に瀕し続けることになる。

「落ち着いて。とにかくしらみつぶしに断線箇所を探していくしかない」

「そ、そんな、無茶です!!」

 一番若い女性が、巨大な紙束を抱きかかえながら泣きそうになっている。

「見てくださいよ、この図面! こんな広大な敷地内で断線箇所を見つけ出すなんて、上級魔法【探査サーチ】の使い手だってムリです。伝説の聖級魔法【万理解析アナライズ】の使い手なら、あるいは可能かもしれませんが……」

「泣きたい気持ちは分かるけれど、仕方がない。上流と下流に分かれて、すぐにとりかかってくれ」

「そんな!」

 若い女性職員が、ぐすぐすと泣いている。

「だいたい上流って、塹壕と連絡してるんですよね!? 敵と遭遇したらどうするんですか!?」

「バグ討伐班を護衛に付けるよ」

 課長がそう言うと、今度はバグ討伐班の面々がざわめき出す。

「ちょっ、課長!? 俺たちゃバグを突っつく訓練は受けてますが、敵兵を撃ち殺す訓練は受けておりませんぜ」

 わーわー
   ぎゃーぎゃー

 事態は混迷を極め、電話は鳴り続ける。
 オペレーションルームの混乱と緊張が極致に達し、ぶるぶると震えるネットワーク班の女性が今にも泣き叫ぼうとした、
 そのとき。








「かーちょ」








 場違いに平然とした声が、オペレーションルームを貫いた。
 先輩だ。
 先輩が、そのでっっっっっっっっっっっっっっな胸をばるんと揺らしながら立ち上がり、

「第層、第いちL3スイッチと第ろくL2スイッチ間のイーサネットケーブルですよ、断線箇所」

 泣きそうになっていた女性職員の手から図面を奪い取り、床の上に広げる先輩。

「ここです。バグの反応もたくさんありましたから、まぁ、かじられちゃったんでしょうね」

「おおっ、さすがはジュリアちゃんだ! 助かったよ!」

 跳び上がりそうなほど喜ぶ課長。

「君たち、聞いたね? ネットワーク班とバグ討伐班は直ちに現場へ急行! 動ける若手もバグ退治に行きなさい! ほら、クロウスくんもさっさと行った!」

「えぇぇええっ!? 僕もですか!?」

 先輩のナゾの活躍に驚く間もなく、僕はバグ退治用の槍を持たされ、ヘルメットと革鎧を着込む羽目になった。
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