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レッスン46「盗賊 (1/3)」
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「……それで、儂の【万物解析】で西の森全域をカバーし、居場所を調べろって?」
自室にまで押しかけられて、お師匠様は迷惑そうだ。
「その行商人、護衛は付けていなかったのかい?」
「……はい」
ミッチェンさんが脂汗を流しながら言う。
「生活苦から脱したい一心で始めた方で、護衛を付けるお金もない、と」
「はぁ~……仮にもここは、かつて『魔の森』と呼ばれた場所だよ?」
お師匠様は乗り気じゃない様子。
僕は隣に立つノティアの顔をうかがうも、ノティアと目が合って、彼女は首を横に振る。
ノティアも【万物解析】は使うことができる。けれど、お師匠様のように西の森全域を覆いつくせるほどの極大展開はできない。
「お師匠様……」
「何だいクリス、そんな目で見てきて」
「お願いします……お師匠様」
「…………――はぁっ! 日頃おねだりをしてこない愛弟子の、せっかくの願いだ。……今回だけだよ?」
「ありがとうございます、お師匠様!」
■ ◆ ■ ◆
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】」
お師匠様が詠唱を中断し、
「【隠蔽】」
魔法陣を隠ぺいする魔法を挟んでから、
「【万物解析】!」
西の森の東端で、お師匠様が森の上空一面に真っ赤な魔方陣が展開する。
魔方陣は数秒で消失し、
「――――……」
お師匠様は難しい顔をしている。
「ど、どうです――居ましたか?」
「……あぁ、いた。洞穴の中に武装した男どもが多数と、非武装の女がふたりだ」
「お、奥さんと娘さん――…っ!」
ミッチェンさんが顔色を悪くさせる。
「だ、旦那さんの方は!?」
僕の問いにお師匠様は首を振り、
「分からない。……――――動いている男の反応は、8つさね」
「は、早く助けに行かないと!! ノティア、お願い!!」
「待て待て待てッ! 相手は8人だと言っただろう!? お前さん、勝つ見込みはあるのかい?」
「Aランク冒険者のノティアがいれば――…」
「ノティア、できるのかい?」
「――――……」
ノティアは、つ、と視線をそらし、
「巣穴ごと丸焼きにするなら、可能ですわ。でも――…」
…………僕は、馬鹿だ。
ノティアなら大丈夫だって勝手に決めつけて、ノティアに無茶をさせようとしていた。
「ご、ごめんノティア。でも、僕だけでもいいから【瞬間移動】で送って! い、いまの僕なら――…【首狩り収納空間】があれば……」
「だいたいいまのお前さん、ちょっとおかしいさね! こいつ、このギルド職員も言った通り、行商人は護衛もつけず丸腰で街道を渡ったんだ。葱しょったカモさね。これは悲劇なんかじゃない、ただの自然淘汰だ」
「で、でも…………ッ!!」
「その商人ってのはお前さんの知り合いか何かかい?」
「違うけど、でも――」
「じゃあ何さね」
「ぼ、ぼ、僕の所為だ! 僕がこんな道を敷いちゃったばっかりに、その人たち――…」
「…………ああ、そこを気にしていたのかい。ま、小心者のお前さんらしいさね。分かったよ、手伝ってやろう。警備員の詰め所とやらに行くよ」
「は、はい!」
■ ◆ ■ ◆
「「「「「と、盗賊のアジトへ突入――…」」」」」
詰め所にいたD・Eランク冒険者パーティーたちは、みな一様に顔色を悪くした。
Cランクのベテラン冒険者・ベランジェさんが居てくれないかと期待していたけれど、生憎と巡回中のようだ――各パーティーの巡回範囲は広く、彼らを探しているヒマはない。
「くそっ――…」
「お、オレらが行きます!!」
エンゾが声を上げてくれた。
後ろのドナとクロエもうなずいてくれている。
「ありがとう!! ――じゃあノティア、お願い!!」
「分かりましたわ。では皆さん、わたくしにつかまってください。――【瞬間移動】ッ!!」
■ ◆ ■ ◆
気がつけば、森の中に立っている。
メンバーは、
前衛……エンゾ、ドナ
中衛……ノティア、僕
後衛……クロエ
後方支援……お師匠様
という布陣。
エンゾはもとより片手剣が得意。
ドナは本来、弓が得意だけど、今は室内戦ということで円盾と短剣を装備している。
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】……【隠蔽】……【万物解析】――さっきと同じだ、見張りはいない。不用心だ、素人集団さね」
「よし、行こう!!」
進もうとする僕の腕をエンゾが引っ張る。
「ちょちょちょっ、クリスさんが先頭に立っちゃったら、オレらが来た意味ないでしょう! 失礼ですけど、クリスさんは接近戦に弱いんだから!」
「――――……」
残念ながら、事実だ。
「ドナ、オレの後ろに」
「おう」
「【風の精霊よ・美しきシルフィードよ・いまだけはその囁きを・鎮め給え――消音】」
クロエの支援魔法を受け、円盾に上半身を隠したエンゾとドナが、足音を立てずに洞窟の中に踏み込んでいく。
ふたりに続いて洞窟内を少し進むと、
「い、いやぁああッ!!」
女の子の声!
「おらっ、逃げんじゃねぇ! 殺されてぇか!」
洞窟の奥から、衣服の乱れた幼い少女が転び出て来て、そのあとを、短剣を手にした薄汚れた男が追いかけてくる。
盗賊。
生まれて初めての、対人戦闘が始まる。
***********************
次回、対人戦闘――…
自室にまで押しかけられて、お師匠様は迷惑そうだ。
「その行商人、護衛は付けていなかったのかい?」
「……はい」
ミッチェンさんが脂汗を流しながら言う。
「生活苦から脱したい一心で始めた方で、護衛を付けるお金もない、と」
「はぁ~……仮にもここは、かつて『魔の森』と呼ばれた場所だよ?」
お師匠様は乗り気じゃない様子。
僕は隣に立つノティアの顔をうかがうも、ノティアと目が合って、彼女は首を横に振る。
ノティアも【万物解析】は使うことができる。けれど、お師匠様のように西の森全域を覆いつくせるほどの極大展開はできない。
「お師匠様……」
「何だいクリス、そんな目で見てきて」
「お願いします……お師匠様」
「…………――はぁっ! 日頃おねだりをしてこない愛弟子の、せっかくの願いだ。……今回だけだよ?」
「ありがとうございます、お師匠様!」
■ ◆ ■ ◆
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】」
お師匠様が詠唱を中断し、
「【隠蔽】」
魔法陣を隠ぺいする魔法を挟んでから、
「【万物解析】!」
西の森の東端で、お師匠様が森の上空一面に真っ赤な魔方陣が展開する。
魔方陣は数秒で消失し、
「――――……」
お師匠様は難しい顔をしている。
「ど、どうです――居ましたか?」
「……あぁ、いた。洞穴の中に武装した男どもが多数と、非武装の女がふたりだ」
「お、奥さんと娘さん――…っ!」
ミッチェンさんが顔色を悪くさせる。
「だ、旦那さんの方は!?」
僕の問いにお師匠様は首を振り、
「分からない。……――――動いている男の反応は、8つさね」
「は、早く助けに行かないと!! ノティア、お願い!!」
「待て待て待てッ! 相手は8人だと言っただろう!? お前さん、勝つ見込みはあるのかい?」
「Aランク冒険者のノティアがいれば――…」
「ノティア、できるのかい?」
「――――……」
ノティアは、つ、と視線をそらし、
「巣穴ごと丸焼きにするなら、可能ですわ。でも――…」
…………僕は、馬鹿だ。
ノティアなら大丈夫だって勝手に決めつけて、ノティアに無茶をさせようとしていた。
「ご、ごめんノティア。でも、僕だけでもいいから【瞬間移動】で送って! い、いまの僕なら――…【首狩り収納空間】があれば……」
「だいたいいまのお前さん、ちょっとおかしいさね! こいつ、このギルド職員も言った通り、行商人は護衛もつけず丸腰で街道を渡ったんだ。葱しょったカモさね。これは悲劇なんかじゃない、ただの自然淘汰だ」
「で、でも…………ッ!!」
「その商人ってのはお前さんの知り合いか何かかい?」
「違うけど、でも――」
「じゃあ何さね」
「ぼ、ぼ、僕の所為だ! 僕がこんな道を敷いちゃったばっかりに、その人たち――…」
「…………ああ、そこを気にしていたのかい。ま、小心者のお前さんらしいさね。分かったよ、手伝ってやろう。警備員の詰め所とやらに行くよ」
「は、はい!」
■ ◆ ■ ◆
「「「「「と、盗賊のアジトへ突入――…」」」」」
詰め所にいたD・Eランク冒険者パーティーたちは、みな一様に顔色を悪くした。
Cランクのベテラン冒険者・ベランジェさんが居てくれないかと期待していたけれど、生憎と巡回中のようだ――各パーティーの巡回範囲は広く、彼らを探しているヒマはない。
「くそっ――…」
「お、オレらが行きます!!」
エンゾが声を上げてくれた。
後ろのドナとクロエもうなずいてくれている。
「ありがとう!! ――じゃあノティア、お願い!!」
「分かりましたわ。では皆さん、わたくしにつかまってください。――【瞬間移動】ッ!!」
■ ◆ ■ ◆
気がつけば、森の中に立っている。
メンバーは、
前衛……エンゾ、ドナ
中衛……ノティア、僕
後衛……クロエ
後方支援……お師匠様
という布陣。
エンゾはもとより片手剣が得意。
ドナは本来、弓が得意だけど、今は室内戦ということで円盾と短剣を装備している。
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】……【隠蔽】……【万物解析】――さっきと同じだ、見張りはいない。不用心だ、素人集団さね」
「よし、行こう!!」
進もうとする僕の腕をエンゾが引っ張る。
「ちょちょちょっ、クリスさんが先頭に立っちゃったら、オレらが来た意味ないでしょう! 失礼ですけど、クリスさんは接近戦に弱いんだから!」
「――――……」
残念ながら、事実だ。
「ドナ、オレの後ろに」
「おう」
「【風の精霊よ・美しきシルフィードよ・いまだけはその囁きを・鎮め給え――消音】」
クロエの支援魔法を受け、円盾に上半身を隠したエンゾとドナが、足音を立てずに洞窟の中に踏み込んでいく。
ふたりに続いて洞窟内を少し進むと、
「い、いやぁああッ!!」
女の子の声!
「おらっ、逃げんじゃねぇ! 殺されてぇか!」
洞窟の奥から、衣服の乱れた幼い少女が転び出て来て、そのあとを、短剣を手にした薄汚れた男が追いかけてくる。
盗賊。
生まれて初めての、対人戦闘が始まる。
***********************
次回、対人戦闘――…
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