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第一章 ―魔界最弱の厄災と人間界最強の少女―
新魔王様、とりあえず告白して料理を作る
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§ § §
会議は大波乱でした、まぁそうですよね。
魔王が人間と結婚したいとか、そりゃ頭がおかしくなったと思われても仕方ないですよね。
でもやっぱり、男には責任というものがあります。
非難囂々の会議の後、俺は人間の勇者と結婚する事について話しました。
悪魔としての責任というか、雄としてせめて操を捧げた相手ぐらいは、しっかり幸せにしてあげたいというか、まさか親父と同じ道を行くことになるとはなーって思いつつも、親父みたいに結婚した相手を裏切るのは嫌だなぁって気持ちが子供の頃から強くありました。
だからって人間と結婚とか、頭おかしいですよね、はい、重々承知です。
なので魔王権限を全力で行使した結果、議会では魔王の解任が持ち上がるも、ルド爺が反対し、前魔王様の紋所(メモ用紙)を出して、全員を平服させました。
しかし、落とし所が無いから皆様がお怒りなのです。
好き勝手にやるなら、それに対する代価を払う、そういうわけで、魔王という職はそのままに、権限だけを全て元老院に預けてきました。監査役にルド爺を据えました、つまり俺はハリボテの王様になりました、実質ペラペラな魔族なので変わりは無いと言えば、無いですね。
昨夜は諸々の取り決めが終わった後に色々と書かれた羊皮紙にサインをしまくり、そして書類の山が俺の身長を超えたぐらいの所で解放されました。
自室へと戻ると、勇者がベッドの上で膝を抱えていました。
少し退屈そうに長い髪を指先に絡めて、なにかを待ちわびるペットかなにかのようです。
白い服、白い髪、白い肌、なぜか初対面より少し愛着のような物を感じますが、気のせいでしょうか。
それにしても酷い格好です、ボロ布です、勇者の格好はそれがナチュラルなのでしょうか、ニュートラルな衣服なのでしょうか、できるだけ言葉を分かりやすく砕いて魔族語で聞いてみると、
『入り口、全て、奪われた』
そういうことでした、酷いですね、一対一の殺し合いをさせようという相手をまず裸に近い状態にして魔王の間に送り込むなんて、なんて悪魔! 悪魔の鏡!! 初等教育の賜物!!
しかしそうなると、唯一持って行くことを許された、謎の白い液体が気になります。
尋ねました。
『あれ、ローション』
なるほど、狼死怨? ワーウルフ対策の何らかの呪具、もしくは毒薬なのか尋ねました。
『魔王、すごく大きい、聞いた、でも必要なかった、小さかった』
あれ、答えになっていないのに、なんでこんなに心が傷つくのでしょうか。わかりません、でも涙が出ちゃう、恥ずかしい。
とりあえず言うべき事が沢山あったのですが、人間語で言うべきだと思い、伝えました。
「俺、魔王、だけど、勇者、お前とずっと一緒、ずっと護る、ずっと暮らす、結婚した、ください、お願いです」
あれ?
どうしよう、勇者、泣き出しました。
目を大きく開けて、ボロボロと、その白い両目をパチパチさせて涙を溢します。自分でもどうして涙がでるのか分からないのか、不思議そうに涙を拭いながら。
「あれ、なんで私……どうして」
顔を赤らめてボロボロと泣いています、俺、人間を泣かせてしまいました。なにかとんでもない事を言ってしまったのでしょうか、いきなり夫婦の危機ですか。
あ、でも勇者笑ってます、泣きながら笑っています、首も縦に振ってくれました。
成功、かな、これは成功なんでしょうか、よかったよかった。
でも上手く伝えられたかはわかりません、やっぱり勉強し直す必要がありそうです。
「私、この後、一人で逃げると思っていた、ずっと一人でお腹の子を護って、一人で育てて、二人だけで隠れて生きていくんだって思ってた」
あぁもうそんなに涙ボロボロと、うわ鼻水まで! ばっちいばっちい!
とりあえずハンカチを渡して、いや間に合わない、タオルがいります、バスタオルです。
急いで取ってきました、とりあえず顔を拭いてあげます。
グイグイと拭くと、少し痛がるように顔を横に向けます、コラコラ逃げないの。なんでしょうちょっとペット感覚ぐらいは持てるようになってきました。
「だけど、だけど魔王、一緒にいるって言うから、なんか嬉しくて、嬉しくて、安心しちゃって、うう、こんな、勝手な事をした勇者なのに、ごめんね……魔王」
何言ってるかさっぱどわがんね。
早口? 単語が聞き取り辛い! 鼻声! あと顔を見せてくれないと表情で言葉の意味を察せ無いのです、人間語は同じ言葉に違う意味が多すぎて、本当に真面目に覚える気がなくなるくらい難しいのです。
「大丈夫、泣くな、俺、そばに居る、辛い、無い」
あ、頷いてくれました、よかった、とりあえず大丈夫みたいです。
すこし肩の荷が下りた気がしました、いや実際権限をぶん投げて来たのでスッキリもしました。するとなんだかお腹が減ってきました、腹の魔蟲はげんきんな奴です。
あ、でも人間って何を食べるんだろ……、残飯? さすがにそれはなぁ、一応奥様だし。
「勇者、待ってろ、俺、料理、する」
「え、あ、そういえば、何も食べてなかった……」
「すぐ、作る、料理、食べる、元気なる」
「あ、あぁ、でも良いのか?」
「大丈夫、魔王、料理、上手い、食材、殺す、上手い、慣れてる」
これでも包丁さばきには自信があります、ええ伊達に就職してから魔王様の胃袋を満足させてきた男ではないのですよ。
善は急げでキッチンへと走り込み、適当な食材を見繕います、魔海で捕れた新鮮な毒海蛇と、個人的に隠れて栽培していたマンドラゴラ、あぁそうそう頂き物のファンガス印のネムリダケも使います。
毒海蛇はまず頭を落とします、骨が硬いので勢いが大切です、一発でいかないと頬から首にかけてある毒袋が破けるとエグミがでます、通は食べますが今日は胃に優しいコース。
骨を退け、皮を剥き、食べ頃サイズに切り分けてからアルコールと香草をかけて少し放置、その間に鮮度が命のマンドラゴラを下準備、抜き立て、叫び立て、剥き立て、切り立てを炒めて、少し休ませます。
最後にキノコは軽くソテー、そこに火の通り難い食材から入れて中火でしっかりと焼きます。しっかりと火が通ったら、最後にフランベ、海蛇の身をパリパリにして、旨さを閉じ込めます。
お酒は飲めるか分からないので、とりあえず真水でいいか。
料理とお水をトレイに二人分乗せて寝室へと戻ります。
「勇者、ただい、まぁん?」
部屋に戻ると、勇者がオークと戦っていました。
会議は大波乱でした、まぁそうですよね。
魔王が人間と結婚したいとか、そりゃ頭がおかしくなったと思われても仕方ないですよね。
でもやっぱり、男には責任というものがあります。
非難囂々の会議の後、俺は人間の勇者と結婚する事について話しました。
悪魔としての責任というか、雄としてせめて操を捧げた相手ぐらいは、しっかり幸せにしてあげたいというか、まさか親父と同じ道を行くことになるとはなーって思いつつも、親父みたいに結婚した相手を裏切るのは嫌だなぁって気持ちが子供の頃から強くありました。
だからって人間と結婚とか、頭おかしいですよね、はい、重々承知です。
なので魔王権限を全力で行使した結果、議会では魔王の解任が持ち上がるも、ルド爺が反対し、前魔王様の紋所(メモ用紙)を出して、全員を平服させました。
しかし、落とし所が無いから皆様がお怒りなのです。
好き勝手にやるなら、それに対する代価を払う、そういうわけで、魔王という職はそのままに、権限だけを全て元老院に預けてきました。監査役にルド爺を据えました、つまり俺はハリボテの王様になりました、実質ペラペラな魔族なので変わりは無いと言えば、無いですね。
昨夜は諸々の取り決めが終わった後に色々と書かれた羊皮紙にサインをしまくり、そして書類の山が俺の身長を超えたぐらいの所で解放されました。
自室へと戻ると、勇者がベッドの上で膝を抱えていました。
少し退屈そうに長い髪を指先に絡めて、なにかを待ちわびるペットかなにかのようです。
白い服、白い髪、白い肌、なぜか初対面より少し愛着のような物を感じますが、気のせいでしょうか。
それにしても酷い格好です、ボロ布です、勇者の格好はそれがナチュラルなのでしょうか、ニュートラルな衣服なのでしょうか、できるだけ言葉を分かりやすく砕いて魔族語で聞いてみると、
『入り口、全て、奪われた』
そういうことでした、酷いですね、一対一の殺し合いをさせようという相手をまず裸に近い状態にして魔王の間に送り込むなんて、なんて悪魔! 悪魔の鏡!! 初等教育の賜物!!
しかしそうなると、唯一持って行くことを許された、謎の白い液体が気になります。
尋ねました。
『あれ、ローション』
なるほど、狼死怨? ワーウルフ対策の何らかの呪具、もしくは毒薬なのか尋ねました。
『魔王、すごく大きい、聞いた、でも必要なかった、小さかった』
あれ、答えになっていないのに、なんでこんなに心が傷つくのでしょうか。わかりません、でも涙が出ちゃう、恥ずかしい。
とりあえず言うべき事が沢山あったのですが、人間語で言うべきだと思い、伝えました。
「俺、魔王、だけど、勇者、お前とずっと一緒、ずっと護る、ずっと暮らす、結婚した、ください、お願いです」
あれ?
どうしよう、勇者、泣き出しました。
目を大きく開けて、ボロボロと、その白い両目をパチパチさせて涙を溢します。自分でもどうして涙がでるのか分からないのか、不思議そうに涙を拭いながら。
「あれ、なんで私……どうして」
顔を赤らめてボロボロと泣いています、俺、人間を泣かせてしまいました。なにかとんでもない事を言ってしまったのでしょうか、いきなり夫婦の危機ですか。
あ、でも勇者笑ってます、泣きながら笑っています、首も縦に振ってくれました。
成功、かな、これは成功なんでしょうか、よかったよかった。
でも上手く伝えられたかはわかりません、やっぱり勉強し直す必要がありそうです。
「私、この後、一人で逃げると思っていた、ずっと一人でお腹の子を護って、一人で育てて、二人だけで隠れて生きていくんだって思ってた」
あぁもうそんなに涙ボロボロと、うわ鼻水まで! ばっちいばっちい!
とりあえずハンカチを渡して、いや間に合わない、タオルがいります、バスタオルです。
急いで取ってきました、とりあえず顔を拭いてあげます。
グイグイと拭くと、少し痛がるように顔を横に向けます、コラコラ逃げないの。なんでしょうちょっとペット感覚ぐらいは持てるようになってきました。
「だけど、だけど魔王、一緒にいるって言うから、なんか嬉しくて、嬉しくて、安心しちゃって、うう、こんな、勝手な事をした勇者なのに、ごめんね……魔王」
何言ってるかさっぱどわがんね。
早口? 単語が聞き取り辛い! 鼻声! あと顔を見せてくれないと表情で言葉の意味を察せ無いのです、人間語は同じ言葉に違う意味が多すぎて、本当に真面目に覚える気がなくなるくらい難しいのです。
「大丈夫、泣くな、俺、そばに居る、辛い、無い」
あ、頷いてくれました、よかった、とりあえず大丈夫みたいです。
すこし肩の荷が下りた気がしました、いや実際権限をぶん投げて来たのでスッキリもしました。するとなんだかお腹が減ってきました、腹の魔蟲はげんきんな奴です。
あ、でも人間って何を食べるんだろ……、残飯? さすがにそれはなぁ、一応奥様だし。
「勇者、待ってろ、俺、料理、する」
「え、あ、そういえば、何も食べてなかった……」
「すぐ、作る、料理、食べる、元気なる」
「あ、あぁ、でも良いのか?」
「大丈夫、魔王、料理、上手い、食材、殺す、上手い、慣れてる」
これでも包丁さばきには自信があります、ええ伊達に就職してから魔王様の胃袋を満足させてきた男ではないのですよ。
善は急げでキッチンへと走り込み、適当な食材を見繕います、魔海で捕れた新鮮な毒海蛇と、個人的に隠れて栽培していたマンドラゴラ、あぁそうそう頂き物のファンガス印のネムリダケも使います。
毒海蛇はまず頭を落とします、骨が硬いので勢いが大切です、一発でいかないと頬から首にかけてある毒袋が破けるとエグミがでます、通は食べますが今日は胃に優しいコース。
骨を退け、皮を剥き、食べ頃サイズに切り分けてからアルコールと香草をかけて少し放置、その間に鮮度が命のマンドラゴラを下準備、抜き立て、叫び立て、剥き立て、切り立てを炒めて、少し休ませます。
最後にキノコは軽くソテー、そこに火の通り難い食材から入れて中火でしっかりと焼きます。しっかりと火が通ったら、最後にフランベ、海蛇の身をパリパリにして、旨さを閉じ込めます。
お酒は飲めるか分からないので、とりあえず真水でいいか。
料理とお水をトレイに二人分乗せて寝室へと戻ります。
「勇者、ただい、まぁん?」
部屋に戻ると、勇者がオークと戦っていました。
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