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玉生ホーム探検隊
玉生ホーム探検隊 14
しおりを挟む中二階と個室側の二階をつなぐ階段部屋改め分岐点の通路を進み、短い階段状の突き当りの直角を右に曲がれば――下の階の物よりもコンパクトなお手洗いと洗顔所・風呂場と並んで、その隣はウォークインの倉庫があった。
「ああ、なるほど。二階にもトイレと風呂があるのはいいな」
嬉し気な駆の言葉に頷きながら、廊下に並ぶ窓から外を見た翠星の「あ」と何かに気付いたらしい声にみんなが注目すると「そこってとみヨの部屋だよな? あれもベランダなんすかね?」と指差した先に出っ張りが見えた。
「いや、この窓の下にもつながっているから、僕の部屋のそれはおそらく外廊下。多分、裏にあった外階段からも上がれる」
「ほーお? それならオレたちの部屋も、グルリとつながっていそうだな」
詠の指摘にニカリと笑った駆が「鬼ごっこやったら、盛り上がりそうな家だよな」と唆すような事を言ったが、相手になりそうな翠星には「やんないっすからね」と即お断りされたのだった。
なお、ほかの三人は「捕まえたらボッコボコにしてやんよ?」「……面倒……」「もう少し小さい頃なら隠れんぼしたら楽しかったかも」との返事ではあったが、「気持ちは分からないでもない」との事である。
「とりあえず部屋は全員希望の所で、問題ないね? たまも、そういう事でいいかい?」
玉生がコクコクと頷くと、「じゃあ、一度ここで解散ね。ちなみに俺はそろそろ、ちいたまにミルク上げる時間だから和室にいる。あ、駆はちょっと来な」そう呼び寄せた寿尚は、駆と二~三ボソボソと話すと「頼んだよ」と告げてそそくさと来た路を逆に戻って行った。
「オレはちょっと外で買いたい物があるから」
一人でも家を探検しそうだった駆は寿尚にお使いでも頼まれたのか、はじめは「ちぇっ」と口を尖らせていたのが、温室から玄関に出た所で自転三輪を見て、玉生に断りを入れると一転してご機嫌でそれに跨って出掛けて行った。
玉生は次の行動に迷ったが、翠星の「そろそろカレーも味が落ち着いた頃」の声に「ご飯なら手伝うね」とカウンターに鞄を置いて、そちらに参加する事にした。
今すぐ自室に行くには、まだ心の準備が足りなかったのである。
考えてみれば玉生はもう長い間、人が一日中周りにいる生活をしていたので“自分の部屋”という響きにワクワクする気持ちはあるが、それ以前の幼少期は夜中に目覚めて誰もいない状況が日常だったのだ。
それが一人である事の慣れより、周りに人がいる状態を知ってしまったがゆえの漠然とした不安として孤独感が甦ったのかもしれない。
「寝具もあったし、今日はみんな自分の部屋で寝るのかな?」
マカロニサラダに入れるハムと野菜の下準備を済ませて、マカロニを茹でている時ふと玉生が呟いた。
カレーを温め直していた翠星の耳にそれが届いたらしく「そうだな……いや、自分とかは気にしないけどスナ先とかとみヨは、使う前に干す派って気もするからどうかね?」と答えた後「あ、でも」と続けた。
「新しい家に慣れるまで、リビングか畳部屋でゴロ寝とかありだと思うぜ? 録画映画見て夜ふかしするのもありだし、土日休みの時でよかったな」
「うん。あ、でもその前に、家の中に何があるかも調べないと。足りない物は買って来ないと駄目だし」
翠星との会話で少し心に余裕ができると、消耗品の予備がしまわれた二階の倉庫を思い出し、あちこちにあった収納家具の中も気にかかってしまう。
最低限の必需品……と考えてみてもトイレットペーパーしか浮かばずに、『……みんなに聞いてみよう』と思う。
国の施設である孤児院は、規模の大きさからその管理のため生活用品をはじめ必要な物は一律で国が購入して配り、家事に当たる雑事も職員の仕事であったため院生は学ぶのが本分とされ、学校の延長の様な環境で育った世間知らずの玉生なのである。
その上、無ければ無いでどうにかなるという原体験のせいもあって、世間一般のいう最低限が分かっていないのだ。
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