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玉生ホームで朝食を

玉生ホームで朝食を 7

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「外の回廊も余裕があるな。お? こんな所にもベンチがある」
 
 ここも段差を緩やかにするためか二階までに折り返しで踊り場のある階段を上った先、左右に延びるベランダの角にピッタリのベンチがあるのを見たかけるが感心した様に言ってから、「でも、なんだこの既視感は?」と首を捻った。

「商業施設ではよく見る」
「それか!」
「君はよく美術展に行ってるのに、その注意力はどうなんだい?」

 よみの言葉にポンと手を打って納得する駆に、寿尚すなおが呆れた声で半眼になる。
「こいつの事だ。椅子も展示物として見るか、目に入ってないか」それにフォローのつもりがあるのかないのか詠はしれっと言ったが、言われた方も「それな」と笑って肯定するのだった。

「まあ、なんといっても広いっすから、途中で荷物置いたり休憩したりする場所があるのも悪くないっすよ。で、次は一応ベランダの両端、見に行くんすか?」

 ベランダの両側を伸び上がる様に見ていた翠星すいせいが、「それともそのまま上に行くんすか?」と目線を階段の先へと向けて尋ねてくる。
家主の玉生たまおは、ここのベランダは自分以外の部屋の住人の物だと思っている様で、完全に寿尚たちの返事待ちで「どうするの?」という目で彼らを見ているばかりだ。
実際に、どうやら各自の部屋にある掃き出し窓はこのベランダに面していて、そこから出入りできる造りになっている様である。

「う~ん、左側ってこの辺は多分オレの青い部屋でこの辺が廊下の突き当りで、あそこに見えるのがヨーミンの黄色い部屋の窓だろ? 多分、もっと先には二階の風呂トイレ前の廊下の窓があるはずだな」

 駆にそこが自分の部屋だと言われた詠が、一番近くの人が出入りできる大きな窓に近寄って中を覗き込むと、「確かに奥に天蓋付きの寝台がある」と頷いて戻って来た。

「右側は、ミミ先輩・自分・スナ先輩の部屋の窓ってわけっすね」
「だろうな、多分。ま、気になるなら屋上の帰りにそっちにも寄ればいいし、上に行くって事でいいか?」

 返事を聞く前にもう階段の上り口に足を向けた駆に、みんなも特に異論はない様で「いい加減、昼になりそうっすからね」「ちいたまの事もそろそろ気になるし」と言いながらぞろぞろ後に続く。




 そして、ようやく辿り着いた屋上である。


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