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回廊の秘密
回廊の秘密 1
しおりを挟む玉生の無暗やたらと何かを恐れないその性質は、やはり遺伝的なものだろうかと傍野は思う。
自分が相手に好かれるに値するかという悩みはあっても、基本的に物事を悪い様には受け取らない。
ただ見え透いた欺瞞に対してすらも、ある程度まではそれを苦も無く許容してしまえるのが考えものだと、友人たちには思われている様だ。
だが、それゆえにあの存在とは相性が良いに違いない。
「玉生君なら大丈夫だよ。むしろ俺としては、好かれ過ぎるんじゃないかと――ん? 三見塚君はどこまで……」
出掛けの時と違いあっという間に私道を抜け白い柵が見えてきたが、横からすいっとミニバンを追い抜いて左折した駆は、そのまま柵を回り込んで進んで行く。
そこは行き止まりだったと記憶している傍野はそれに首を傾げたが、車内の玉生たちは出掛ける前に新しく道が延びた疑惑を思い出した。
駆が疑惑を解明すべくその先へ進んで行くのに、目的地を前にして速度を落としているとはいえ、ミニバンはいつまでもそこに辿り着かない。
「傍野氏も進まないのか?」
詠に声を掛けられ、試しに左折する方に意識を向けると、車は自然に柵に近付いていく。
これはそちらに進めという事かと、傍野はため息を吐いて駆の後を追った。
今まで突き当たりに見えていた、その曲がり角をさらに進んだ先は、玉生たちが屋上探検の途中で見掛けたラティスの向こう側に当たる場所だろう。
それ以外にはありえないだろう位置で、近くだと予想外に高さのある木の隙間から見えている家の二階、その外回廊や窓の位置からも推測できた。
緑の格子柄にしか見えないラティスの壁の向こうに温室の端も見える。
そんな木の間にある道の正面には、大型車も余裕で収納できそうな独立したガレージが建っていた。
常夜灯らしき外灯が、夜の林間に佇む建物をくっきりと浮かび上がらせている。
駆たちの目線では、意識していなければ木の陰になって、ラティスの向こうからは丸太を積んだガレージに気付かなかったと考えられる位置だ。
後日また脇道が増えるのかもしれないが、今の時点では突き当りだと思われるそのガレージ前で、傍野は方向転換をしてから車を停車させた。
そこで翠星がドアを開いて「通り抜けできるのかな?」と呟いて降りるのに、「できたら便利だよねっ」と相槌を打つ玉生も釣られて後を追う。
傍野も運転席を離れ辺りを見回すのに、ここまで来たら到着したも同然と、寿尚と詠も続いて地に立つのだった。
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