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オズワルド王国の章
50 勇者の矜持①
しおりを挟むカルロスに剣を振り下ろす寸前で、ユリウスの全身は氷漬けにされた。
「っ……!」
動揺するユリウスの前に姿を現したのは、水魔法の使い手・勇者リアだ。
「……最悪だ」
ユリウスはリアの姿に動揺を示す。
「ユリウスっ!……あの人に脅されてるの?」
仲間の裏切りを呑み込めないリアは、祈るように問いかけた。
「ねえ、そうなんでしょ?何とか言ってよ!」
その手では同時に、オルオンへ無数の氷の槍の攻撃を続けている。
しかし、鮮やかに攻撃をかわし続けるオルオンの優勢は誰の目にも明らかである。空振りした攻撃は、空間の天井にぶつかり続けている。
「わかってないな、リア」
ユリウスは、身柄を拘束する氷を自身の雷の魔法で壊していく。
「君が勇者にまでなれたのは、オルオン様が宰相に成りすましたおかげだ。
そうでなければ、両親がミュルクの君が、ここまでこれた訳がないだろ?」
「……なにそれ」
リアの紫瞳に、揺らめきが浮かんだ。
「私たちのこと騙してたの?
パブロのおかしな剣のことも、全部知ってた?」
リアは唇を震わせながら、言葉を紡いでいた。
「ああ、知ってたさ」
「……!」
ユリウスの冷めた青い瞳に、リアは力を吸い取られるような心地がした。
「精霊が支配するこんな世界に、未練はない」
それからリアの瞳をのぞき込んだユリウスは、彼の瞳の中にあるベルフェゴールのシジルを光らせた。
それにより、悪魔能力「忘却」が発動する。
「……!」
術にかかり遠くなる意識と共に、リアがその場に崩れ落ちる。
「リアッ!」
カルロスはその一連の流れに、怒りを露わにする。
「能力を無闇に使うなと言ったはずだが?」
「…申し訳ございません」
オルオンとユリウスがそんなやりとりをしている間に、カルロスは流れる血を抑えながら、ゆっくりと体を起こす。
(これで最後だ…!)
カルロスが放った火の精霊魔法は、巨大な火の塊となってユリウスらを襲った。
しかしそれぞれにシールドを貼った闇使いたちに、衝撃を与えるには及ばない。
「ふん、この程度か」
嘲笑するオルオンを前にして、しかしカルロスは得意げにあげた口角をさげようとしない。
「……?」
次の瞬間、ひび割れるような音が鳴り響く。
カルロスとリアが放った火と氷の攻撃により、閉ざされたこの空間の天井に亀裂が入ったのだ。
(……まずい)
ユリウスがそう思った時には、瓦解は止まらない。
(時間は稼げた。後は――!)
力尽きて倒れたカルロスが、祈りを込めて見上げた先には――ぽかりと空いた天井の穴から、聖女エレナと聖職者たちが臨戦態勢で構えているのが見えた。
その背後には第1魔法騎士団総勢1000名を引き連れている。
「……っ!!」
想定外の軍勢に、ユリウスとオルオンはその場に固まった。
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