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オズワルド王国の章
65 オルオンの事情②
しおりを挟むそれからオルオンは、バルバザード王国国王マーリンの仮面を被り、「不死の軍隊」を持ってオーサー辺境伯に攻め込む。
目的はその頃から、闇使いの帝国をつくることだ。
オルオンは、オーサー辺境伯を足掛かりに、オズワルド王国を征服するつもりだった。そして次々と、他の魔法大国も滅ぼす算段だったが、各国の抵抗は力強いものだった。
特にオーサー辺境伯の守備は固く、グレゴリーが最強の魔力をもつ魔王サタンと契約したことで手出しもできなくなってしまった。
それからオルオンの活動範囲は、オズワルド王国へと移る。
以降、マーリン国王は姿を現さなくなり、オルオンの配下たちにより「病床に臥せっている」というでっち上げが守り通された。
宰相ネロに成りすましたオルオンは、グレゴリーを仮想の敵とすることで自分への注意を逸らし、王宮内部で工作を続ける。
グレゴリーに差し出すという体裁で、毎年ミュルクの奴隷と金品をオズワルド王国から搾取したのもその一つだ。
それらが実際にはグレゴリーではなく、バルバザード王国の不死の軍隊の人員と財源として補給されていたことは、オルオンの側近以外が知る由もない。
闇使いの帝国を築いたその時に、オルオンが頂点に君臨するための地盤は着々と形成されていたのである。
そうして暗躍すること約20年――。
やっとたどり着いた、理想の世界を実現するための戦略――それがヨルムンガンドを使った精霊の丘の破壊である。
しかし、魔王軍を持つサタンの牽制により作戦執行は妨げられれいた。
そしてオルオンは、ヨルムンガンドの力でサタンを廃し、同時にサタンから魔力を得ているグレゴリーも弱体化させることを思いつく。
更には、グレゴリーへの見せしめとして、その息子であるパブロを、サタン封印の生贄とする算段だった。
結果、サタン封印に成功したものの、オルオンの作戦は崩れた。
勇者パブロ――彼の力を侮っていたことを、オルオンは今、素直に認めざるを得ない。
だが劣勢の中でも、オルオンの頭には闇の意志を貫く他に選択肢はなかった。
♦
(私が無策だと思わないほうがいい――)
オルオンは、ふつふつと反骨心を胸に宿していた。
今や全ての魂の契約を解除されたオルオンだが、ならば、また改めて契約すればいいだけのことだ。
契約したい悪魔のシジルに自らの血を流せば、契約は成立する。
オルオンは宰相ネロとして宮廷大工たちに命じ、この王宮のあちこちの壁や床、柱に、ルシファーやレヴィアタンなどあらゆる悪魔のシジルを組み込んだ模様を描かせている。
それは丁寧に、この牢獄の床にも描かれている。
そして――
「オルオン様」
この牢獄の護衛たち押し退けて、オルオンを迎えに来たのは第1魔法騎士団の精鋭部隊――ニコ・マクスーン団長の側近たちである。
彼らもまた闇使いであり、オルオンの腹心だ。
ミュルクだった彼らはオルオンの指導で悪魔契約を結び、その後マクスーン団長の元でオルオンに都合のよい工作を続けた。
「遅いぞ、お前たち」
彼らの助けで難なく拘束を解いたオルオンは、剣を拝借して自らの手を切りつけた。
オルオンの滲みでた血が、ぽたり、と床に落ちる。
それは床に描かれた模様のレヴィアタンのシジルに染みわたり、そして暗黒の光を放った。
「レヴィアタン、契約成立だ」
オルオンの宣告が地下牢に響く。
それは、怪物ヨルムンガンド召喚という悪夢の、再来の合図でもあった。
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