ダンタリオンと勇者

小栗とま

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オズワルド王国の章

68 闇の力(パブロの視点)

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「っ…………」

 衝撃に倒れた俺の目の前で、巨大なヨルムンガンドがうねり暴れている。
 俺の手錠は壊れ、ダンタリオンたちを閉じ込めていた檻ももう只の鉄くずだ。

(精霊の丘がっ――!!)

 壊れた建物の向こうに、ヨルムンガンドに喰い荒らされた精霊の丘が見える。
 それから、精霊魔法を失った騎士団員や聖職者たちが、力なく倒れている惨事も見て取れた。

 これでは、オルオンの作戦通りだ。
 精霊の丘は破壊され、精霊魔法は失われてしまった。

「エレナ……っ!」
 
 エレナは、カルロスは、皆は無事だろうか。
 俺とダンタリオンたちは、ヨルムンガンドが破壊した一帯に助けに向かおうとした。しかし、この巨大な蛇が行く手を阻み、身動きが取れない。

「ま、魔法が使えないぞ……!!」
「何故ヨルムンガンドが……!?」

 伯爵たちが慌てふためくのも無理はない。
 ひと際取り乱しているのは、マクスーン団長だ。

「な、なんだこれは!?どうなってる!!私の神聖な魔法が、精霊魔法が使えないではないか!」

 地団太を踏んでそう喚くマクスーンにとどめを刺すように、ヨルムンガンドが襲い掛かる。

「うわああああっ」

 マクスーンが逃げ惑うが、彼を守るべき側近の精鋭部隊は微動だにしない。

「おい、おまえら!なぜ助けない!!おい!!」

 ヨルムンガンドがマクスーンの足を噛みつけ、そのままその全身を丸のみにする。
 その残酷な瞬間を、精鋭部隊の面々はただ見つめていた。

「くそっ、くそおおおおおおっ!!」

 ヨルムンガンドに呑み込まれて、その生命力の大半を吸い取られたマクスーンはぐったりとした状態で吐き出された。

(ど、どういうことだ?
 ――第1魔法騎士団の精鋭部隊は、どうして動かない?)

 そんな疑問が浮かぶ。
 この場面を目撃した伯爵たちとカイザー国王陛下も、同じように思ったに違いなった。

「ククク…ククク…」

 そして、ヨルムンガンドの影から現れた人物――「作戦通り」とでも言いたげに悦に浸る男は、見たくもない奴だった。

「オルオン……っ」

 いったいどうやって脱獄したのか。
 その答えは、オルオンの周りを囲む、マクスーン団長の側近部隊を見れば明らかだ。

「おまえらっ……全員、オルオンの手下か」

 マクスーン団長を見殺しにした部隊と、オルオンの傍を囲む部隊が合流する。彼らは共に、マクスーン団長の側近である第一魔法騎士団の精鋭部隊だ。

「――くっ!!」
 
 俺はどうしようもできない悔しさに唇をかんだ。

 マクスーン団長の号令で伯爵会議が開かれたのも、こいつらが伯爵を煽った結果だったのだろう。
 俺や他の伯爵たちの動きを封じることで、オルオンが再び契約し、そしてヨルムンガンドを召喚する機会を作るために――。

「勇者パブロ、絶望の味はどうだ?」

 闇の魔力により視力を取り戻したオルオンが、俺を見付けてじりじりと近寄ってくる。

「……っ」
「いや、まだ足りないか」

 オルオンは、ヨルムンガンドに合図を出した。
 俺を殺せという命令だったのか、怪物は獲物を見るような鋭い目線を向けた。

「君には派手に死んでもらわないといけない。アイツへの見せしめだ」
「……」

(アイツ――?)

 困惑する俺の前に、ヨルムンガンドが大きく口をあけて迫っていた。

「――!!」

 直ぐに逃げきれない俺は、一瞬、死を覚悟する。
 でも、俺は目の前に、ある人の気配を感じた。








(あとがき)
 マクスーン団長はケツあごです。


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