ダンタリオンと勇者

小栗とま

文字の大きさ
70 / 76
オズワルド王国の章

67 表と裏(パブロの視点)

しおりを挟む



「ホップウェルか」

 覚えていろよ、とでも言いたげに睨むマクスーン伯爵の視線をかわして、ホップウェル伯爵は皆々に静かに語り掛けた。

「今王国は大きな混乱の中に居ます」

 伯爵は話を続ける。

「息子は勇者の任務を終えた後、オーサー辺境伯領で戦っている第二騎士団の援護に向かいましたが――今だ、良い知らせは届きません」

(ロミオが……!)

 ロミオの姿をみていないと思っていたが、彼は父さんが団長を務める第2魔法騎士団の援護に向かっていたらしい。

「サタンとの契約者であり、オーサー辺境伯領を王国から閉ざしていたグレゴリー・オーサー。彼との戦いに、まだ決着がついていないのです」

 ホップウェル伯爵がそう言う通り、グレゴリーの正体も目的もわからないまま、オーサー辺境伯での戦いが続いている。

「その中で、宰相ネロ殿と勇者ユリウスが伝説の怪物ヨルムンガンドを召喚し、王都を襲う計画があることが露呈しました。
 このような不明瞭な状況下で、勇者パブロの罪だけを問うことはできません」

 ホップウェル伯爵の言葉に、その他の伯爵も同調した。
 これが気に食わないのは、当然、マクスーン伯爵だった。

「君たちは何もわかっていないようだな。勇者でありながら悪魔と契約したパブロ・フルームは断罪されなければならない!なんのために、我が第1魔法騎士団が日々、ミュルクを市中から懸命に駆除していると思っている?」

 ミュルク狩りを続けている第1魔法騎士団の団長でもあるマクスーン伯爵は、そのことを議題に上げて話し始める。

「 精霊に愛されていない奴らミュルクは、闇に手を染めるより他、力を得る術をしらない劣等種なんだ!奴らを奴隷にすることでこの王国を浄化してきた私の努力をないがしろにするつもりか!」

 マクスーン伯爵はそう怒鳴り散らした。

「それにだ、パブロ・フルームはオルオンが白状したところによると……出生に問題があるようだな。かの闇使い、グレゴリー・オーサーの息子だとか?」
「……!」

 マクスーンの言葉で蒸し返された俺の出生は、俺に更なる疑いの目を向けさせる要素になってしまう。

「ミュルクの血を引いているのなら、闇に惹かれても仕方がない。
 精霊魔法を授かったのも、何かの間違いだったのだろう」
「……っ!」

 マクスーンのニタニタと歪んだ口が、彼の顔から浮かんで見える。

(くそっ……)

 頭がガンガンしてきた俺は、ゆっくりと深呼吸をしてみた。
 そうして少しの冷静さを取り戻せば、次第にこの状況にある違和感を覚え始める。

(王国が大変な時に――マクスーン団長はどうして俺一人にここまでこだわる?)

 俺とダンタリオンたちが拘束されて一番得をする人物は誰だ。
 ――それを考えた時に、異様な熱量で開かれたこの伯爵会議の、真実を垣間見た気がした。

「……闇使いは、精霊使いのふりをすることもできます。
 オルオンもユリウスもそうだったように」

 俺の口から、言葉が出ていく。

「なら、例えミュルクでなくたって――
 王国のどこに、闇使いがいたっておかしくないですよね?」

 挑発的な言葉に、伯爵たちがどよめく。
 俺はそのまま思いの丈をぶちまけることにした。

「自分が無罪だと言い切れますか?マクスーン団長」

 俺の問いかけに、彼は怒りに顔を真っ赤にした。

「お前は私を愚弄するつもりか!?」

 その直情的な姿を見れば、彼はオルオンほど策士ではないと感じた。

 きっと他人の罪に夢中で、自分の手元に転がっている罪はおざなりにしているのだろう。
 そんな嫌な予想の答え合わせをするように、事件は起こった。
 
「この音は――!」

 カイザー国王陛下が立ち上り、皆に警戒を呼びかけた。

 ドンという大きな爆発音と、けたたましく怪物が叫ぶ声が聞こえる。
 ここからそう遠くない場所――精霊の丘の方からだ。
 
 そして次の瞬間には、この講堂の壁も破壊された。

「――っ!!!」

 崩れる瓦礫を縫って現れたのは、伝説の怪物ヨルムンガンド――触れるもの全ての力を奪いとる大蛇だった。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

処理中です...