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最後の恋1
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大君が家を出たのは朝方早くのことだった。家族を起こすことなく、夕方には戻ることだけを書き置きして遠く離れた宇佐美邸へ足を向けた。
35年前、ついに一度も訪れることは無かった場所。その場所の前を大君はただ何度か通過し、様子を伺った。ようやく決心しチャイムを鳴らそうとした時、玄関を開けて出て来たその女性を大君は35年前の瑞樹と錯覚した。
「あ、おはようございます。何か、ウチにご用ですか?」
「あ、いえ。……実は、瑞樹さんがいらっしゃればと思い伺ったのですが」
「母のお知り合いの方ですか?」
「ええ。古い友人とでも言いますか」
「友人、ですか?」
「はい、喜屋武と申します」
女性は明らかに訝しげな目で大君を見たが、直ぐに笑顔で答えた。
「聞いてきます。少々お待ち下さいね」
女性がそう言い残して家の中に戻ると、そうしない内に今度は初老の女性が出てきた。その女性は一目大君を見るなり大きく目を見開き、やがて大粒の涙を幾つも零した。
「大君くん、どうして、いるの?」
「やっぱり。瑞樹だったか」
「嘘でしょう?どうして、どうして昔のままなの?」
「ちょっと、訳があってね」
お互いに暫く言葉を失ったが、やがて大君は家の中に通された。
35年前、ついに一度も訪れることは無かった場所。その場所の前を大君はただ何度か通過し、様子を伺った。ようやく決心しチャイムを鳴らそうとした時、玄関を開けて出て来たその女性を大君は35年前の瑞樹と錯覚した。
「あ、おはようございます。何か、ウチにご用ですか?」
「あ、いえ。……実は、瑞樹さんがいらっしゃればと思い伺ったのですが」
「母のお知り合いの方ですか?」
「ええ。古い友人とでも言いますか」
「友人、ですか?」
「はい、喜屋武と申します」
女性は明らかに訝しげな目で大君を見たが、直ぐに笑顔で答えた。
「聞いてきます。少々お待ち下さいね」
女性がそう言い残して家の中に戻ると、そうしない内に今度は初老の女性が出てきた。その女性は一目大君を見るなり大きく目を見開き、やがて大粒の涙を幾つも零した。
「大君くん、どうして、いるの?」
「やっぱり。瑞樹だったか」
「嘘でしょう?どうして、どうして昔のままなの?」
「ちょっと、訳があってね」
お互いに暫く言葉を失ったが、やがて大君は家の中に通された。
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