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番外編
新婚夫妻は誘惑中
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バジルが初めて本格的にメリッサを抱き始めてから、丸一日以上が経過した頃。
(……一度、止めたほうが良さそうですね)
繋がったまま、グッタリと蛇尾に背を預けている彼女を眺め、バジルは内心で呟いた。
丹念に慣らした甲斐あって、メリッサの身体は交わりの最中、ラミアと同程度の耐久性を保持しているようだ。
水の一滴も口にしていないのに、衰弱している様子はなく、二本の雄を交互に受け入れ続けている秘所も、充血こそしているものの腫れてなどはいない。
ただ、肉体的には大丈夫でも、長時間の強烈な性感は、人間には刺激が強すぎるのだろう。
瞳は惚けきり、焦点があっていない。赤みを増した半開きの唇は、もうかなり前から喘ぎと吐息以外を零さなくなっていた。
やはり中断しようと、バジルは決断する。
ラミアの雄は、よほどの事がないかぎり、一度始めた交わりを中断することはない。その『よほどの事』とは伴侶の身を案じた時である。
埋め込んだ雄を抜こうとすると、ビクリとメリッサが身を震わせた。
「安心してください。今回はもう止めますから」
「……ぅ?」
掠れた呻き声があがり、蕩けきっていた瞳が、いぶかしそうにバジルを見上げた。
つい先ほど体の中に精を放たれ、またもう片方になったばかりだ。不思議に思ったのだろう。
「やはり、メリッサは辛そうですからね」
汗で張り付いた前髪を払い、額に軽く口づける。
バジルを受け入れる熱い体内は、時間が経つほどより居心地良く、どうにも離れがたい。
しかし、メリッサが苦痛を感じているのでは意味が無いのだ。
子を成さない魔物にとって……他の種族がどうかまでは知らないが、少なくともラミアにとって、交わりとは伴侶への神聖な愛情表現。
だからこそ、非常に名残惜しいが身体を離そうとした、その途端。脱力しきっていたメリッサの二本足が、バジルの腰にきゅっと絡みついた。
「っは……へい……き……です、から……」
しなやかな脚に動きを封じられ、バジルは困惑する。
「無理をしなくても良いのですよ」
だが、メリッサは火照った頬に幾筋も涙を零しながら、ふるふると首を振った。
「ぁっ……わたし……にんげん、だけど……バジルさん……大好き……」
震えながら伸ばされる彼女の両腕は、まるで力が入っていないのに、バジルは動けなくなってしまった。
されるがままに、触れるだけの拙い口づけを受ける。
「……メリッサ、そんな風に誘ってはいけませんよ。交わり中、ラミアの雄は呆れるほど理性が乏しくなるのです」
どうしようもなく上擦ってしまう声で、バジルは言い聞かせる。
本当に、呆れてしまうほど欲望に忠実となってしまう。伴侶を愛していればいるほど、その誘惑も強烈で理性を剥ぎ取られる。
口元には勝手に笑みが浮び、声は自分でも白々しいと思うほど、心の篭っていないものだった。
「ほら、もう辛いのでしょう?」
軽く揺すりあげると、メリッサは喉を逸らして甘い苦しそうな声をあげる。
結合部から濡れ音とともに、混ざり合った互いの体液が溢れた。
「あっ! あぁ……はぁっ……だいじょうぶ……だから、お願い……」
「ねぇ、言わないでください。酷く抱きたくはないのです……」
建て前の嘘を吐きながら、メリッサのほっそりした顎を掴むと、熱い息を零す唇は、バジルの望んでいた言葉を紡いでくれた。
「……もっと、して」
***
「――と、まぁ。このような経緯で、前回はつい調子に乗って無理をさせてしまいました。すみません、今回は気をつけます」
蜜期の夜。
バジルはあまり悪いと思っていないようなニコニコ顔で、そう告げた。
―― そういえば、そんなことを言っちゃった気がする……!!
すっかり消し飛んでいた記憶を呼び覚まされ、メリッサはベッドの隅で丸まって枕を頭に被り、真っ赤になった顔を隠した。
そろそろ夏も終りに差し掛かり、薬草園では秋の虫が鳴き始めていた。
ラミアの蜜期は、正確に何月何日とは決まっていないらしいが、三ヶ月に一度、季節の移り変わる時期の周辺に行うそうだ。
前回は結局、二日どころか丸三日も睦みあい、その後メリッサはさらに丸一日も起き上がれなかった。
薬草園の手入れは、バジルがきちんとしてくれたので問題なかったが、さすがに今夜からの蜜期へ警戒心を持ってしまう。
「あ、あの、私も悪かったですけど……今回は本当に、お手柔らかに……」
チラっと枕の下から目線を覗かせて訴えると、嬉々とした表情でバジルが頷いた。
「ええ。十分に気をつけて優しくいたします」
しっかりと掴んでいた枕は、無数の傷痕を浮ばせた手にあっさりと奪い取られ、頬や首筋に愛しそうな口づけを何度も落とされた。
「ですからメリッサも、あまり誘惑しないでくださいね。私の理性が切れてしまうほど……」
抱きしめられて耳朶を甘く噛まれながら、狡猾な低い声が、そそのかすように囁く。
白々しい忠告に、メリッサは冷や汗をかいた。
そういえば蛇王は、七つの国の王たちを口先一つでそそのかしたのだと思い出す。
大国に脅えていた王達を、誘惑し仲間に引き入れ、思いのままに動かした、狡猾な不死の蛇王さま。
だから今回もメリッサは、きっと彼に誘惑されるまま、自ら誘惑の言葉を囁いてしまうのだろう。
何より、互いに誘惑しあう、蜜のように甘いこんな期間を、メリッサ自身も幸せだと思ってしまうのだから。
終
(……一度、止めたほうが良さそうですね)
繋がったまま、グッタリと蛇尾に背を預けている彼女を眺め、バジルは内心で呟いた。
丹念に慣らした甲斐あって、メリッサの身体は交わりの最中、ラミアと同程度の耐久性を保持しているようだ。
水の一滴も口にしていないのに、衰弱している様子はなく、二本の雄を交互に受け入れ続けている秘所も、充血こそしているものの腫れてなどはいない。
ただ、肉体的には大丈夫でも、長時間の強烈な性感は、人間には刺激が強すぎるのだろう。
瞳は惚けきり、焦点があっていない。赤みを増した半開きの唇は、もうかなり前から喘ぎと吐息以外を零さなくなっていた。
やはり中断しようと、バジルは決断する。
ラミアの雄は、よほどの事がないかぎり、一度始めた交わりを中断することはない。その『よほどの事』とは伴侶の身を案じた時である。
埋め込んだ雄を抜こうとすると、ビクリとメリッサが身を震わせた。
「安心してください。今回はもう止めますから」
「……ぅ?」
掠れた呻き声があがり、蕩けきっていた瞳が、いぶかしそうにバジルを見上げた。
つい先ほど体の中に精を放たれ、またもう片方になったばかりだ。不思議に思ったのだろう。
「やはり、メリッサは辛そうですからね」
汗で張り付いた前髪を払い、額に軽く口づける。
バジルを受け入れる熱い体内は、時間が経つほどより居心地良く、どうにも離れがたい。
しかし、メリッサが苦痛を感じているのでは意味が無いのだ。
子を成さない魔物にとって……他の種族がどうかまでは知らないが、少なくともラミアにとって、交わりとは伴侶への神聖な愛情表現。
だからこそ、非常に名残惜しいが身体を離そうとした、その途端。脱力しきっていたメリッサの二本足が、バジルの腰にきゅっと絡みついた。
「っは……へい……き……です、から……」
しなやかな脚に動きを封じられ、バジルは困惑する。
「無理をしなくても良いのですよ」
だが、メリッサは火照った頬に幾筋も涙を零しながら、ふるふると首を振った。
「ぁっ……わたし……にんげん、だけど……バジルさん……大好き……」
震えながら伸ばされる彼女の両腕は、まるで力が入っていないのに、バジルは動けなくなってしまった。
されるがままに、触れるだけの拙い口づけを受ける。
「……メリッサ、そんな風に誘ってはいけませんよ。交わり中、ラミアの雄は呆れるほど理性が乏しくなるのです」
どうしようもなく上擦ってしまう声で、バジルは言い聞かせる。
本当に、呆れてしまうほど欲望に忠実となってしまう。伴侶を愛していればいるほど、その誘惑も強烈で理性を剥ぎ取られる。
口元には勝手に笑みが浮び、声は自分でも白々しいと思うほど、心の篭っていないものだった。
「ほら、もう辛いのでしょう?」
軽く揺すりあげると、メリッサは喉を逸らして甘い苦しそうな声をあげる。
結合部から濡れ音とともに、混ざり合った互いの体液が溢れた。
「あっ! あぁ……はぁっ……だいじょうぶ……だから、お願い……」
「ねぇ、言わないでください。酷く抱きたくはないのです……」
建て前の嘘を吐きながら、メリッサのほっそりした顎を掴むと、熱い息を零す唇は、バジルの望んでいた言葉を紡いでくれた。
「……もっと、して」
***
「――と、まぁ。このような経緯で、前回はつい調子に乗って無理をさせてしまいました。すみません、今回は気をつけます」
蜜期の夜。
バジルはあまり悪いと思っていないようなニコニコ顔で、そう告げた。
―― そういえば、そんなことを言っちゃった気がする……!!
すっかり消し飛んでいた記憶を呼び覚まされ、メリッサはベッドの隅で丸まって枕を頭に被り、真っ赤になった顔を隠した。
そろそろ夏も終りに差し掛かり、薬草園では秋の虫が鳴き始めていた。
ラミアの蜜期は、正確に何月何日とは決まっていないらしいが、三ヶ月に一度、季節の移り変わる時期の周辺に行うそうだ。
前回は結局、二日どころか丸三日も睦みあい、その後メリッサはさらに丸一日も起き上がれなかった。
薬草園の手入れは、バジルがきちんとしてくれたので問題なかったが、さすがに今夜からの蜜期へ警戒心を持ってしまう。
「あ、あの、私も悪かったですけど……今回は本当に、お手柔らかに……」
チラっと枕の下から目線を覗かせて訴えると、嬉々とした表情でバジルが頷いた。
「ええ。十分に気をつけて優しくいたします」
しっかりと掴んでいた枕は、無数の傷痕を浮ばせた手にあっさりと奪い取られ、頬や首筋に愛しそうな口づけを何度も落とされた。
「ですからメリッサも、あまり誘惑しないでくださいね。私の理性が切れてしまうほど……」
抱きしめられて耳朶を甘く噛まれながら、狡猾な低い声が、そそのかすように囁く。
白々しい忠告に、メリッサは冷や汗をかいた。
そういえば蛇王は、七つの国の王たちを口先一つでそそのかしたのだと思い出す。
大国に脅えていた王達を、誘惑し仲間に引き入れ、思いのままに動かした、狡猾な不死の蛇王さま。
だから今回もメリッサは、きっと彼に誘惑されるまま、自ら誘惑の言葉を囁いてしまうのだろう。
何より、互いに誘惑しあう、蜜のように甘いこんな期間を、メリッサ自身も幸せだと思ってしまうのだから。
終
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