あなたの隣で愛を囁く

ハゼミ

文字の大きさ
8 / 21

ピンクの痰

しおりを挟む
 カズくんは、人工呼吸器が外れて、状態が落ち着いたとの事で、リカバリールームから大部屋に移された。
 酸素は2Lカヌラではあったが、自分で廊下を歩くこともできたし、ゼリー食も食べられる様になった。
 やっとこれで、手術を始められることが出来る・・・

 数日、私もカズくんもそんな先が見通せる穏やかな日々を過ごしていた。


 そんな穏やかな日が3日ほど経った面会でのこと。
 私がカズくんの病室へとやってくると、咳をしているカズくんのがいた。
 気のせいか、少しいつもよりも元気がなく、肩で息をしている。
 酸素も2Lから4Lに上がっていた。
 ふと、目を落とすと、ゴミ箱には沢山のティッシュが捨ててあり、その中の一つにピンク色の痰がついていた。
「カズくん、これはいつから?!」
 私がカズくんにチョット不安げに聞く。
「朝から痰が多いいんだよ」
 カズくんは多分、何も分かっていないのだろう。
「看護師さんは知っているの?」
「いや、知らないと思う」
 私は、すぐさまナースコールをすると、看護師さんが部屋にやってきた。
「どうされました?」
「すみません、これなんですが・・・」
 私がゴミ箱に入ったピンクの痰がついたティッシュを看護師さんに見せると、看護師さんはチョットびっくりした様な表情を見せた。
 そして、看護師さんはすぐに部屋を出ていった。
「何?、なんか変なの?」
 カズくんはキョトンとした顔で私に聞いてくる。
 私は、カズくんの指先をを見る。やっぱり、少し爪の色が白っぽかった。
「多分、これから検査になると思うよ」
 私がそう言っていると、先ほどの看護師さんが車椅子を持ってやってきて、CT検査を今からやりに行きますと、言ってきた。
カズくんは、急な事ではあったが、素直に車椅子に乗ると検査へと向かった。
 
 部屋に残された私は、その間、ずっと不安だった。
 まさかと思うけれど、もしかしたらまた再びがカズくんの体の中で起きているのではないか・・・
 嫌な予感。
 それしか私の頭には浮かんでこなかった。

 それからしばらくしてカズくんは看護師さんに車椅子を押されて、部屋に車椅子で戻ってきた。
 「なんでもないよ、大丈夫だよ」
 そういうカズくんの言葉が、虚しく私の耳に響く。
 しかし、そんなカズくんを嘲笑う様に、血液検査や痰培養の検査など、次々と検査がやってくる。
 
 そして1時間後。
 呼吸器の医師が急いそとやってきた。
「検査の結果、カズさんの肺に水が溜まっています。すぐに抗生剤とステロイド剤の投与を始めます。」
 と、言ったのです。
 やっぱり、私のは当たりました。
 カズくんは更に酸素も5Lに上げられ、結局リカバリールームへと再び戻ることとなりました。



 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...