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シーズン後半
第14話「プレッシャー」
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『俺達はいつだってここに居る! 共に行こう! 頂上へ!』
サポーター自由席にあの横断幕が掲げられるようになってから、多喜城FCはまた勢いを取り戻していた。
とは言え、簡単に連勝街道まっしぐらとなるほどJ3は甘くはない。それでも連敗すること無く地道に勝ちを積み重ね、37節終了時には、また首位に返り咲いていた。
「上位チームの勝敗にもよりますけど、次の試合で勝てば優勝が決まるかもしれないんですよ!」
胸の前で両手を握り合わせ、うっとりと夢見るような表情でそう言った伊達 雫の本日何度目かの言葉に、次の対戦相手、現在J3で下位に沈んでいる浦安FCのスタッツに何かを書き込んでいた清川監督は、全く目も上げないまま「あぁ」と気のない返事を返した。
「相手は3連敗中の下位浦安ですし、これは期待が膨らみますね!」
緩む口元を押さえるように両手を頬に添えながら、彼女はそう続けた。
しかし、同じく「あぁ」と気のない返事しか返さない清川に、ちょっとムッとした雫は、早くも数社から打診のあった『J3優勝セール』の書類をトントンとまとめると、清川に向き直った。
「2位の鬼怒川デモニーオも、3位のビアンコーレ盛岡も上位陣との対決ですよ。多喜城の一人勝ちになる展開だってあり得ない話ではないじゃないですか!」
やっと顔を上げた清川は、大きく溜息をつくと凝り固まった首を回した。
椅子から立ち上がり腰を伸ばす。クラブハウスにある椅子の中ではかなり上等な部類に入る清川用の椅子だが、集中して仕事をこなす清川の腰には大きな負担になっていた。
「優勝したら良い椅子買ってくれよ」
清川の最近の口癖になったこの言葉をこぼすと、腰をトントンと叩きながら窓際まで歩く。
ポケットからタバコを取り出し窓を開くと、少ししか開いていない窓の隙間から、東北地方特有の身を切るような冷気が一気に部屋の中に流れ込んだ。
「キヨさん、タバコなら喫煙所で吸ってください!」
選手やスタッフに釣られるように、いつのまにか清川のことを「キヨさん」と呼ぶようになっていた雫は、飛びそうになった書類を慌てて抑える。肩をすくめて窓を閉めた清川は、ポケットにタバコを戻し、もう一度ため息を付いた。
「……どうしたんですか?」
風で乱れた髪を耳にかけながら、暖房で少し上気した顔を傾けて雫が問いかける。
トレーニングルームから聞こえる選手たちの声に耳を傾けながら、清川は窓の外を見つめた。
「最近のあいつら、すこし舞い上がってるとは思わんか?」
雫には清川の言う「あいつら」が選手たちのことであろうことはすぐに分かった。
開幕前からJ3優勝を公言して憚らない多喜城FCではあったが、実際に優勝の可能性が高まったここ数週間、選手たちの背中には確かに焦りのような安堵のような、なんとも言えない感情が見え隠れしているように、雫も感じていたのだ。
「でもそれは、ある程度しかたのないことじゃないんですか? 優勝はともかく、J2への昇格は決まったようなものですし……」
「そこだ」
雫の言うとおり、本来なら入れ替え戦がある所、J2のチーム数増加の年に当たる今年は、J3上位2チームが自動昇格する事になっている。
残り3試合を3連敗でもしない限り、多喜城FCの昇格は決まったようなものだと思われていた。
しかし、その状況が選手に僅かな気の緩みを忍び込ませている。例え3部リーグであろうとも、優勝争いがそんな気持ちで勝ち抜けるほど甘いものではないことは、清川は嫌というほど良く知っていた。
「まだ決まっても居ねえのに、あいつらはもう昇格を決めたような気持ちで居やがる。優勝争いと言うプレッシャーから逃げるために、昇格出来れば最低限の格好はつくと、戦う前から言い訳を考えている。そんな選手が一人でも居たら、勝てる試合も勝てねぇんだ。Jリーグってのはそう言うもんさ」
「……じゃあ、それを言ってあげてください! キヨさんから……監督から教えてもらえれば、選手だって――」
「そんな簡単な事じゃねぇんだ」
雫の言葉を清川は笑って遮る。その笑いは諦めと自嘲が入り混じった、複雑な表情を作り出していた。
「誰に言われたって治せやしねぇ。何しろ、自分で分かってやってる事だからな。……分かっていてなお、逃げる方を選んだんだ。……いや、逃げる方を選ばざるをえない、そうしなければ心が潰れてしまう。……そんなギリギリの状況になる前に、俺があいつらの気持ちを鍛えてやれなかった。そういう事だ」
ブルーヒーターにかけられたヤカンから勢い良く立ち上る湯気の音と、隣の部屋から聞こえる選手たちのトレーニングする声だけが、しばらく部屋を満たした。
見るともなしに練習場へ視線を向け、窓に額をくっつけた清川の、目前のガラスが白く曇る。
「……まぁいいじゃねぇか、3試合のうち1試合でも勝ち点を取れれば昇格だ。上手くいきゃあ優勝もできる。……去年ぶっちぎりの最下位だった俺らには出来過ぎた結果ってやつだ」
窓枠に手をつき、額を窓にくっつけたままそう呟く清川の背中に、いつの間にか歩み寄っていた雫が寄り添い、そっと手を回した。
「ええ、そうですね。本当に……十分すぎる結果です。……でも、キヨさんまで諦めないでください。だって、約束してくれたじゃないですか、J3で優勝するって。選手たちはみんな、そのキヨさんの言葉を信じてここまで来たんです。キヨさんが諦めなければ、必ず優勝できます。……私が保証します」
背中をギュッと抱きしめる雫の温もりを感じ、その温度で心の中の頑なな何かが溶けてゆく感覚に、清川は目を瞑る。
――柄にもなく弱気になっていた。
清川は親子ほども年の離れたこの女の子に励まされている自分を恥じた。
そっと雫の手を外すとゆっくり振り返り、彼女の頭に軽く手を載せる。
先ほどまでの諦めや自嘲のないまぜになったものとは違う、自信と照れが入り混じった笑顔を見せると、清川は雫の髪をくしゃくしゃと掻き回した。
「……そうだな、俺が諦める道理はねぇ。……約束もしちまったからな」
それだけ言うと、清川は真っ直ぐに前を見つめてトレーニングルームへと向かう。
部屋に残された雫は手櫛で髪を直し、思わずとってしまった自分の行為を思い出しては顔を真赤にして、ただその場に立ち尽くした。
迎えたJ3第38節。
清川の予想は悪い方に当たった。
下位に沈む浦安が挽回の切り札として夏の移籍市場で獲得した元韓国代表FWの得点を、全員守備で守りきられての敗戦。
なんとか首位は守ったものの、引き分けで勝ち点を1つ加えた2位の鬼怒川デモニーオとの勝ち点差は2。3位のビアンコーレ盛岡は勝利したため、勝ち点差は3と詰め寄られる。
選手たちの焦りはピークに達していた。
「サッカーは点を取らなきゃ勝てないんだよ? アリオス」
浦安のファール覚悟のマンマークに苦しみ、無得点に終わったアリオスが肩を落として座り込んでいるのを見下ろしながら、山田が吐き捨てるように言った。
「ヨシヒロが守備しないからあんなミドル食らうんだろ」
まだ日本語がよく分からないアリオスに変わって、DFの仁藤が山田に食って掛かる。
攻守に渡りほとんど走らない山田の独特なプレースタイルには、一部選手から不満が出ていた。それでも山田の戦術眼と確かなテクニックに裏打ちされた攻撃は、多喜城の武器になっている。
その事を理解していてもなお、事ここに至っては吹き出す不満を止められなかった。
仁藤と山田の言い争いは殴り合いにまで発展し、それぞれが森とバリッチに引きずり倒されるまで収まることはなかった。
さらにその翌週。J3第39節アウェイ能登戦、多喜城の勝利を信じて宮城県から遥々石川県まで、勝利とJ2昇格を信じて集まった多喜城サポーターは、なんと800人を越えた。
『俺達はいつだってここに居る! 共に行こう! 頂上へ!』
掲げられた横断幕に答えるべく、奮闘した多喜城FCは、しかし今日も勝利を上げることは出来なかった。
山田と仁藤の険悪なムードがチーム内に広がり、お互いを信頼出来ないチームに勝利をつかむ事など出来るはずもない。
試合終了後の情報で、同時開催だった鬼怒川も盛岡も勝利した事が知らされると、チーム内の不協和音は決定的なものとなった。
最終節を前にして、首位だったはずの多喜城は、次節の直接対決の相手である鬼怒川デモニーオに勝ち点で逆転される。3位のビアンコーレ盛岡にも勝ち点では追いつかれ、首位と勝ち点差1、なんとか得失点差で2位と言う厳しい状況になっていた。
そんな情報を知った後でも、キャプテンの森に率いられ、選手はサポーターに頭を下げに行く。
悪戯がバレた小学生のように、とぼとぼとアウェイ席の前に並び深く頭を下げた選手たちに投げかけられたのは、大音量のチームチャントだった。
罵声を浴びるものと思っていた選手たちは驚いて一斉に顔を上げる。
そこには、今日の敗戦に、遠のいたJ2昇格に涙を流しながらも「信じてるぞ!」「ホームで勝とう!」と言う言葉をかけてくれるサポーターが居た。
選手全員が、示し合わせたわけでもなくもう一度深く頭を下げる。
自分たちの足元を見つめ、ただじっと頭を下げ続ける選手たちに向かって、サポーターから何度も何度も「多喜城FC! 多喜城FC!」とチームチャントが投げかけられたのだった。
サポーター自由席にあの横断幕が掲げられるようになってから、多喜城FCはまた勢いを取り戻していた。
とは言え、簡単に連勝街道まっしぐらとなるほどJ3は甘くはない。それでも連敗すること無く地道に勝ちを積み重ね、37節終了時には、また首位に返り咲いていた。
「上位チームの勝敗にもよりますけど、次の試合で勝てば優勝が決まるかもしれないんですよ!」
胸の前で両手を握り合わせ、うっとりと夢見るような表情でそう言った伊達 雫の本日何度目かの言葉に、次の対戦相手、現在J3で下位に沈んでいる浦安FCのスタッツに何かを書き込んでいた清川監督は、全く目も上げないまま「あぁ」と気のない返事を返した。
「相手は3連敗中の下位浦安ですし、これは期待が膨らみますね!」
緩む口元を押さえるように両手を頬に添えながら、彼女はそう続けた。
しかし、同じく「あぁ」と気のない返事しか返さない清川に、ちょっとムッとした雫は、早くも数社から打診のあった『J3優勝セール』の書類をトントンとまとめると、清川に向き直った。
「2位の鬼怒川デモニーオも、3位のビアンコーレ盛岡も上位陣との対決ですよ。多喜城の一人勝ちになる展開だってあり得ない話ではないじゃないですか!」
やっと顔を上げた清川は、大きく溜息をつくと凝り固まった首を回した。
椅子から立ち上がり腰を伸ばす。クラブハウスにある椅子の中ではかなり上等な部類に入る清川用の椅子だが、集中して仕事をこなす清川の腰には大きな負担になっていた。
「優勝したら良い椅子買ってくれよ」
清川の最近の口癖になったこの言葉をこぼすと、腰をトントンと叩きながら窓際まで歩く。
ポケットからタバコを取り出し窓を開くと、少ししか開いていない窓の隙間から、東北地方特有の身を切るような冷気が一気に部屋の中に流れ込んだ。
「キヨさん、タバコなら喫煙所で吸ってください!」
選手やスタッフに釣られるように、いつのまにか清川のことを「キヨさん」と呼ぶようになっていた雫は、飛びそうになった書類を慌てて抑える。肩をすくめて窓を閉めた清川は、ポケットにタバコを戻し、もう一度ため息を付いた。
「……どうしたんですか?」
風で乱れた髪を耳にかけながら、暖房で少し上気した顔を傾けて雫が問いかける。
トレーニングルームから聞こえる選手たちの声に耳を傾けながら、清川は窓の外を見つめた。
「最近のあいつら、すこし舞い上がってるとは思わんか?」
雫には清川の言う「あいつら」が選手たちのことであろうことはすぐに分かった。
開幕前からJ3優勝を公言して憚らない多喜城FCではあったが、実際に優勝の可能性が高まったここ数週間、選手たちの背中には確かに焦りのような安堵のような、なんとも言えない感情が見え隠れしているように、雫も感じていたのだ。
「でもそれは、ある程度しかたのないことじゃないんですか? 優勝はともかく、J2への昇格は決まったようなものですし……」
「そこだ」
雫の言うとおり、本来なら入れ替え戦がある所、J2のチーム数増加の年に当たる今年は、J3上位2チームが自動昇格する事になっている。
残り3試合を3連敗でもしない限り、多喜城FCの昇格は決まったようなものだと思われていた。
しかし、その状況が選手に僅かな気の緩みを忍び込ませている。例え3部リーグであろうとも、優勝争いがそんな気持ちで勝ち抜けるほど甘いものではないことは、清川は嫌というほど良く知っていた。
「まだ決まっても居ねえのに、あいつらはもう昇格を決めたような気持ちで居やがる。優勝争いと言うプレッシャーから逃げるために、昇格出来れば最低限の格好はつくと、戦う前から言い訳を考えている。そんな選手が一人でも居たら、勝てる試合も勝てねぇんだ。Jリーグってのはそう言うもんさ」
「……じゃあ、それを言ってあげてください! キヨさんから……監督から教えてもらえれば、選手だって――」
「そんな簡単な事じゃねぇんだ」
雫の言葉を清川は笑って遮る。その笑いは諦めと自嘲が入り混じった、複雑な表情を作り出していた。
「誰に言われたって治せやしねぇ。何しろ、自分で分かってやってる事だからな。……分かっていてなお、逃げる方を選んだんだ。……いや、逃げる方を選ばざるをえない、そうしなければ心が潰れてしまう。……そんなギリギリの状況になる前に、俺があいつらの気持ちを鍛えてやれなかった。そういう事だ」
ブルーヒーターにかけられたヤカンから勢い良く立ち上る湯気の音と、隣の部屋から聞こえる選手たちのトレーニングする声だけが、しばらく部屋を満たした。
見るともなしに練習場へ視線を向け、窓に額をくっつけた清川の、目前のガラスが白く曇る。
「……まぁいいじゃねぇか、3試合のうち1試合でも勝ち点を取れれば昇格だ。上手くいきゃあ優勝もできる。……去年ぶっちぎりの最下位だった俺らには出来過ぎた結果ってやつだ」
窓枠に手をつき、額を窓にくっつけたままそう呟く清川の背中に、いつの間にか歩み寄っていた雫が寄り添い、そっと手を回した。
「ええ、そうですね。本当に……十分すぎる結果です。……でも、キヨさんまで諦めないでください。だって、約束してくれたじゃないですか、J3で優勝するって。選手たちはみんな、そのキヨさんの言葉を信じてここまで来たんです。キヨさんが諦めなければ、必ず優勝できます。……私が保証します」
背中をギュッと抱きしめる雫の温もりを感じ、その温度で心の中の頑なな何かが溶けてゆく感覚に、清川は目を瞑る。
――柄にもなく弱気になっていた。
清川は親子ほども年の離れたこの女の子に励まされている自分を恥じた。
そっと雫の手を外すとゆっくり振り返り、彼女の頭に軽く手を載せる。
先ほどまでの諦めや自嘲のないまぜになったものとは違う、自信と照れが入り混じった笑顔を見せると、清川は雫の髪をくしゃくしゃと掻き回した。
「……そうだな、俺が諦める道理はねぇ。……約束もしちまったからな」
それだけ言うと、清川は真っ直ぐに前を見つめてトレーニングルームへと向かう。
部屋に残された雫は手櫛で髪を直し、思わずとってしまった自分の行為を思い出しては顔を真赤にして、ただその場に立ち尽くした。
迎えたJ3第38節。
清川の予想は悪い方に当たった。
下位に沈む浦安が挽回の切り札として夏の移籍市場で獲得した元韓国代表FWの得点を、全員守備で守りきられての敗戦。
なんとか首位は守ったものの、引き分けで勝ち点を1つ加えた2位の鬼怒川デモニーオとの勝ち点差は2。3位のビアンコーレ盛岡は勝利したため、勝ち点差は3と詰め寄られる。
選手たちの焦りはピークに達していた。
「サッカーは点を取らなきゃ勝てないんだよ? アリオス」
浦安のファール覚悟のマンマークに苦しみ、無得点に終わったアリオスが肩を落として座り込んでいるのを見下ろしながら、山田が吐き捨てるように言った。
「ヨシヒロが守備しないからあんなミドル食らうんだろ」
まだ日本語がよく分からないアリオスに変わって、DFの仁藤が山田に食って掛かる。
攻守に渡りほとんど走らない山田の独特なプレースタイルには、一部選手から不満が出ていた。それでも山田の戦術眼と確かなテクニックに裏打ちされた攻撃は、多喜城の武器になっている。
その事を理解していてもなお、事ここに至っては吹き出す不満を止められなかった。
仁藤と山田の言い争いは殴り合いにまで発展し、それぞれが森とバリッチに引きずり倒されるまで収まることはなかった。
さらにその翌週。J3第39節アウェイ能登戦、多喜城の勝利を信じて宮城県から遥々石川県まで、勝利とJ2昇格を信じて集まった多喜城サポーターは、なんと800人を越えた。
『俺達はいつだってここに居る! 共に行こう! 頂上へ!』
掲げられた横断幕に答えるべく、奮闘した多喜城FCは、しかし今日も勝利を上げることは出来なかった。
山田と仁藤の険悪なムードがチーム内に広がり、お互いを信頼出来ないチームに勝利をつかむ事など出来るはずもない。
試合終了後の情報で、同時開催だった鬼怒川も盛岡も勝利した事が知らされると、チーム内の不協和音は決定的なものとなった。
最終節を前にして、首位だったはずの多喜城は、次節の直接対決の相手である鬼怒川デモニーオに勝ち点で逆転される。3位のビアンコーレ盛岡にも勝ち点では追いつかれ、首位と勝ち点差1、なんとか得失点差で2位と言う厳しい状況になっていた。
そんな情報を知った後でも、キャプテンの森に率いられ、選手はサポーターに頭を下げに行く。
悪戯がバレた小学生のように、とぼとぼとアウェイ席の前に並び深く頭を下げた選手たちに投げかけられたのは、大音量のチームチャントだった。
罵声を浴びるものと思っていた選手たちは驚いて一斉に顔を上げる。
そこには、今日の敗戦に、遠のいたJ2昇格に涙を流しながらも「信じてるぞ!」「ホームで勝とう!」と言う言葉をかけてくれるサポーターが居た。
選手全員が、示し合わせたわけでもなくもう一度深く頭を下げる。
自分たちの足元を見つめ、ただじっと頭を下げ続ける選手たちに向かって、サポーターから何度も何度も「多喜城FC! 多喜城FC!」とチームチャントが投げかけられたのだった。
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