【完結済み】私達はあなたを決して許しません

asami

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 わたしは、かつて「光の令嬢」と呼ばれた。美しい金色の髪、柔らかな白い肌、そして透き通るような青い瞳。すべてが完璧だったはずなのに、婚約破棄の知らせを受けた瞬間、私の世界は崩れ去った。皇太子、アキラ様が私を捨てた理由は、妹のユリに心を奪われたからだと囁かれた。



「お姉さま、私たちの未来を考えれば、これが一番の選択よ。」ユリの言葉は、まるで冷たい刀のように私の心を貫いた。彼女の目には、私を見下す冷酷な光が宿っていた。その瞬間、私は彼女の笑顔が醜いものに変わるのを感じた。



「お前も、アキラ様を奪った罪を知っているだろう?」私は彼女に向かって吐き捨てた。だが、ユリは微笑みを浮かべ、ただ一言こう返した。「私には、あなたが持っていなかったものがあるから。」



その言葉は私の心に暗い影を落とした。私が持つものは全て捨てられ、代わりに妹が選ばれたという現実。私の中で何かが切れた瞬間だった。







夜が深まるにつれ、私の心の中に渦巻く怒りは次第に冷静な計画へと変わっていった。復讐を果たすためには、まずは自分を変えなければならない。私は、心の奥に潜む暗い魔女のような自己を解放することにした。



「ユリ、私が教えてあげる。光の令嬢はもういない。」そう呟きながら、私は古い書物を手に取った。そこには、呪いの言葉や禁断の儀式が記されていた。私の心が求めるのは、復讐。そして、再び光を取り戻すことだった。



ある晩、月が満ちた晩に、私は静かな森の奥に行き、儀式を執り行った。冷たい風が私の背筋を撫で、暗い影が私を包み込む。私の声は呪文のように響き渡り、森に住む悪しき存在を呼び寄せた。



「私の願いを叶えたまえ。アキラ様とユリに、私の苦しみを味わわせて。」声を上げた瞬間、森がざわめき、何かが私の周囲を包むように現れた。それは、私が求めた復讐の力だった。







復讐の力を手に入れた私は、日々を過ごす中で、アキラ様とユリに近づく機会をうかがった。彼らは私を忘れ去ったかのように、幸せそうに振る舞っていた。しかし、私の心の中では復讐の炎が燃え続けていた。



ある夜、アキラ様が城の庭でユリと一緒にいるのを見かけた。彼らは互いに微笑み合い、楽しそうに会話を交わしていた。私はその姿を見て、心が引き裂かれるような痛みを感じた。やがて、私の心に新たな恐怖が芽生え始めた。彼らの幸せを壊すことで、本当に自分が満たされるのかという疑念だ。



その日以来、夢の中に怪しげな影が現れ始めた。それは私の心にささやきかけ、「復讐がすべてを解決するわけではない」と告げる。しかし、私の心は闇に覆われ、恐怖の声を無視してしまった。







月が再び満ちる頃、私はついに決行の時を迎えた。城に忍び込み、アキラ様とユリの部屋に向かう。心臓の鼓動が耳に響き、恐怖と期待が交錯する。私は静かにドアを開け、部屋の中へと滑り込んだ。



「お姉さま?」ユリの声が目の前で響く。彼女は驚き、戸惑っている様子だ。私はその一瞬の隙を見逃さず、彼女の手に呪いをかけた。すると、彼女の目に恐怖が映り、次第に身体が痙攣し始める。



「アキラ様、助けて!」ユリの叫び声が響く。しかし、アキラ様は動けない。彼もまた、私の復讐の力に囚われてしまったのだ。無力感と恐怖、そして私の心の中に渦巻く喜びが交錯する。



だが、その瞬間、私の心に浮かんできたのは、私自身がこの行為に飲み込まれていく恐怖だった。復讐の代償として、私は自らも暗闇に飲み込まれていくのかもしれない。







気がつくと、私は真っ暗な空間に立っていた。アキラ様とユリの姿は消え、周囲にはただの静寂が広がっている。私は己の選んだ道を悔い始めた。復讐の先に待っていたのは、さらなる孤独と恐怖だったのだ。



「私を解放して!」私は叫んだ。しかし、返ってくるのは、やはり静寂だけだった。私はこのまま、闇に閉じ込められてしまうのだろうか。



その時、心の奥からかすかな声が聞こえた。「光を求めるなら、闇を受け入れなさい。」その言葉が心に響き、私は初めて自分自身を取り戻すことに決めた。



復讐を手放し、過去を受け入れることで、私は新たな光を見つける。妹と皇太子への復讐がもたらしたものは、むしろ自分自身を見失わせる暗闇だったのだ。私は、もう一度自分を取り戻すための旅に出ることにした。闇から光へと、再び歩き出すために。
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