あなたが一番嫌いなものは存じておりますのでそれをたくさんあなたにお届けいたしましょう

第十四話

　夏休みを利用して私は北海道旅行を計画しました。
出発の前々日の夜、私は大学のサークルの仲間と一緒に飲み会を開きました。メンバーは全部で五人でした。みんな二十歳前後の若い連中で、全員同じ学科に所属しています。
その夜は楽しく盛り上がりました。私はお酒が大好きなので、いつもより多く飲んでしまったと思います。でもそれは他のメンバーも同じでした。
そのあと私たちはカラオケに行きました。そして私は調子に乗って歌いまくったあげくに、かなり酔っぱらってしまったのです。
カラオケが終わった後、私は他の四人の友達と別れて一人で帰りました。そして家の近くの公園を通りかかった時、私は突然誰かに声をかけられたのです。
「君、大丈夫かい？」
声のした方に振り返ると、そこには私と同じくらいか少し年上の男の人が立っていました。その人は白いシャツを着ていて、黒いズボンを穿いています。髪の毛は短めで、顎髭を生やしていました。
「えっ！？ だっ、誰ですか！？」
私はびっくりして後ずさりしました。だってこんな時間に、しかも知らない男の人に話しかけられるなんて初めてのことだったのですから。
「驚かせてごめんね。実は僕は君のことを知っているんだ。前に一度会ったことがあったから」
彼はそう言って微笑みかけました。私は戸惑ってしまいました。
「はあ……」
「でも今はそれよりも先にすることがあるみたいだよ。早く家に帰った方がいいよ。じゃあ、気をつけて帰ってね」
それだけ言うと、彼の姿は夜の闇に消えてしまいました。
そしてその話を帰ってから家族に話すと両親がアルバムを見せてくれました。
「これって……」
写っていたのはその時見た男の人が生まれたばかりの私を抱いている姿でした。
「彼は俺の大学時代の友人、これを撮ったあとすぐ交通事故で死んだんだよ……」