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第3章
スイカズラ
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椎名葉月《しいなはづき》は、幼いときから女のような名前だとからかわれていた。
葉月自身もロボットや戦隊モノよりも、プリキララやぬいぐるみのほうが好きだった。
葉月には、幼きときに姉がいた。
その名も、柊深冬だ。
葉月がまだ三歳の頃に両親は離婚し、深冬は父親に引き取られた。
幼き頃のことだが、葉月にとっては、どうしようもないことで選択を迫られた辛さを味わう出来事だった。
葉月は、深冬が可愛いものが好きな葉月のためにあげた人形やぬいぐるみを大事にしていたが、ある日母親にぬいぐるみや人形を捨てられた。
葉月は泣きじゃくるが、母親はそんな葉月に『男の子なんだから、ぬいぐるみとか持っちゃ笑われるわよ』という。
葉月は、その日から好きなものを好きだといえなくなった。
そのまま葉月は中学生になり、隣町に引っ越すことになった。
どこか懐かしい香りがし、引っ越しの準備をよそに懐かしい香りを嗅ぎながら、辿り着いた先は『柊深冬』と書かれた墓標の隣に咲くダフォディルだった。
みふゆ。
懐かしい響きの名をつぶやいたら、葉月はすべてを思い出した。
─なぜ、僕は深冬のことを今までずっと忘れていたんだ、そう自身を責める葉月のもとに『そう責めるでない』というしわがれた声が聞こえた。
その声の主は、『お主、ずっと此の娘に逢いたかったのだろう』といい、黒いダフォディルを葉月に見せた。
意味が分からない。だって、それは花じゃないか、と葉月は困惑する。
葉月の胸中を察した声の主は、『それが、今の深冬じゃよ』という。
嘘だろ、と思わず出た言葉と一緒に葉月は涙を流す。
同時に深冬をこんな姿に変えたやつを葉月は許せなかった。
『娘をこのような姿に変えたのは、ブラッド・リリー─早乙女小百合だ。その少女を殺めれば、お主の願いをなんでも叶えてやろう』
声の主は、そう葉月に悪魔のように囁く。
葉月は、声の主の悪魔の囁きに従うことにしたようだった。
『宜しい。では、スイカズラの蜜を吸うと契約は完了する』
そういい、スイカズラを差し出してきた。
葉月は、スイカズラを吸った。
懐かしい想い出を、胸に秘めながら。
─だって、スイカズラは。
『フフフ、変化をしたようだな』
そういわれ、スイカズラの花のスカートに頭にはスイカズラの花をつけていた。
頭といえば、髪が長くなっていた。
体も、いつもの葉月じゃないような、まるで女の子のようなふわふわ柔らかい身体になっていた。
『そりゃそうじゃ。お主を、女体にしたからな』
そう声の主は高笑いしながら、いった。
女の子になるのはともかく、ずっと着てみたかったフリフリヒラヒラの服に葉月は思わず、はしゃいでしまった。
やっと、好きなものを好きっていってもいいんだって思うと、はしゃがずにはいられなかったのだろう。
それから葉月は、─ブラッド・リリーこと早乙女小百合を探し続けた。
なかなかそれらしき少女が見当たらなかったが、数日探し続けて、やっと、見つけた。
真っ白なカサブランカのような美しい少女が、深冬を殺した女だ。
殺意を胸に抱きながらアイアン・スイカズラに変化し、彼女を背後から襲った。
すると、彼女は葉月の武器である鋏を受け止め、彼女もブラッド・リリーに変化した。
『やっと、見つけたよ!ねえ、深冬を殺した気分は、どうだった?僕は、最悪な気分だよ!』
葉月は、そう言い放ち蔓をブラッド・リリーに絡ませた。
そして、そのままブラッド・リリーを縛り上げ、動きを封じた。
『ねえ、君が深冬に味あわせた苦しみを、今ここで君に味あわせてあげる』
そういい、ブラッド・リリーの爪に毒針を入れた。
『ああああああああー!!』
ブラッド・リリーは苦しみ叫んだ。いい気味だ、と葉月は毒づく。
『その程度じゃ、深冬の苦しみなんか味わったことにならないよ』
ブラッド・リリーの顎を指でクイッとあげた。
そのまま、ブラッド・リリーの口に百合の毒を調合した薬を口に入れた。
『いたいいたい!!』
ブラッド・リリーは白目を剥いたまま、悶苦しむ。
ブラッド・リリーなんて名乗っているのに、百合の毒に冒されるなんて皮肉だよね、と嘲笑いながらブラッド・リリーにある提案をする。
『このままじゃ、君は毒で死んでしまうね。それは、嫌だよね?』
つづけて、『僕から提案があるんだけど。君が僕に命乞いをして、深冬を殺したことを土下座しながら謝ったら命を助けてあげる。だが、君が謝らなかったら君はこのまま毒に侵されながら僕が君の貞操を奪う。純潔を誇る百合が犯されたら、君はどうなるか知っているだろう?』
案の定、彼女は血の気が引いた顔をしていた。
契約した花の花言葉を裏切る行為をしたら、契約者は契約を反故にしたことになる。
─つまり、契約した花に呪い殺されるのだ。
契約を期限にまで果たせなくても黒き花と成り果て呪いながら生きながらえるが、契約を反故にしたらしたらで花によって呪い殺されるのだ。
どのみち、一度契約したら幸せなんか待っていない。
それでもかまわない、と葉月は思う。
深冬の仇を取れるなら、ほかの些細なことなんか、もうどうでもいい。
葉月は、深冬に報いること以外すべてを捨てたのだ。
『‥ら、ない』
ブラッド・リリーがなにかいっている。
『なんて?』
葉月がそう聞き返すと、ブラッド・リリーはキッと睨みつけ、『あやまらない!!!』と叫んだ。
『は?この期に及んでなにをいっているんだ』
葉月は苛立ち、ブラッド・リリーの首元に鋏を向けたそのとき。
ブラッド・リリーは、葉月の鋏を手に取り、奪い、蔓を切り裂き、そして─葉月の体を真っ二つに切り裂いた。
─ああ、僕も、ここまでか。
深冬、ごめんね。僕は、最後まで役立たずで、本当にごめんね。
そうだ、深冬。覚えてる?
まだ両親がいた頃、僕たちが家族だった頃にね、パパとママに内緒でふたりで秘密基地のスイカズラを吸いにいったよね。
そのときの深冬が、『内緒だよ?』ってウインクしながら深冬が吸っていたスイカズラを僕にくれたよね。
あれが、僕のファーストキスだったんだよって君は知っていた?
─深冬、ずっと君のことが好きだったよ。
葉月は、薄れゆく意識の中で深冬との想い出を振り返っていたのだった。
─気付いたら、葉月は真っ黒に染まったスイカズラに成り果てていた。
『フフフ、今度はスイカズラか。そのほうが綺麗だな、椎名葉月』
そういいながら摘もうとしている黒いローブの女。
やはり、こいつが、この一連の事件の犯人か。許せない、と小百合はいまいましげに見ていた。
『姿を表せ、魔女!』
小百合は勢い良く飛び出し、彼女のローブのフードを剥いだ。
『お、かあ、さま‥‥?』
魔女は、小百合の最愛のお母様だった。
葉月自身もロボットや戦隊モノよりも、プリキララやぬいぐるみのほうが好きだった。
葉月には、幼きときに姉がいた。
その名も、柊深冬だ。
葉月がまだ三歳の頃に両親は離婚し、深冬は父親に引き取られた。
幼き頃のことだが、葉月にとっては、どうしようもないことで選択を迫られた辛さを味わう出来事だった。
葉月は、深冬が可愛いものが好きな葉月のためにあげた人形やぬいぐるみを大事にしていたが、ある日母親にぬいぐるみや人形を捨てられた。
葉月は泣きじゃくるが、母親はそんな葉月に『男の子なんだから、ぬいぐるみとか持っちゃ笑われるわよ』という。
葉月は、その日から好きなものを好きだといえなくなった。
そのまま葉月は中学生になり、隣町に引っ越すことになった。
どこか懐かしい香りがし、引っ越しの準備をよそに懐かしい香りを嗅ぎながら、辿り着いた先は『柊深冬』と書かれた墓標の隣に咲くダフォディルだった。
みふゆ。
懐かしい響きの名をつぶやいたら、葉月はすべてを思い出した。
─なぜ、僕は深冬のことを今までずっと忘れていたんだ、そう自身を責める葉月のもとに『そう責めるでない』というしわがれた声が聞こえた。
その声の主は、『お主、ずっと此の娘に逢いたかったのだろう』といい、黒いダフォディルを葉月に見せた。
意味が分からない。だって、それは花じゃないか、と葉月は困惑する。
葉月の胸中を察した声の主は、『それが、今の深冬じゃよ』という。
嘘だろ、と思わず出た言葉と一緒に葉月は涙を流す。
同時に深冬をこんな姿に変えたやつを葉月は許せなかった。
『娘をこのような姿に変えたのは、ブラッド・リリー─早乙女小百合だ。その少女を殺めれば、お主の願いをなんでも叶えてやろう』
声の主は、そう葉月に悪魔のように囁く。
葉月は、声の主の悪魔の囁きに従うことにしたようだった。
『宜しい。では、スイカズラの蜜を吸うと契約は完了する』
そういい、スイカズラを差し出してきた。
葉月は、スイカズラを吸った。
懐かしい想い出を、胸に秘めながら。
─だって、スイカズラは。
『フフフ、変化をしたようだな』
そういわれ、スイカズラの花のスカートに頭にはスイカズラの花をつけていた。
頭といえば、髪が長くなっていた。
体も、いつもの葉月じゃないような、まるで女の子のようなふわふわ柔らかい身体になっていた。
『そりゃそうじゃ。お主を、女体にしたからな』
そう声の主は高笑いしながら、いった。
女の子になるのはともかく、ずっと着てみたかったフリフリヒラヒラの服に葉月は思わず、はしゃいでしまった。
やっと、好きなものを好きっていってもいいんだって思うと、はしゃがずにはいられなかったのだろう。
それから葉月は、─ブラッド・リリーこと早乙女小百合を探し続けた。
なかなかそれらしき少女が見当たらなかったが、数日探し続けて、やっと、見つけた。
真っ白なカサブランカのような美しい少女が、深冬を殺した女だ。
殺意を胸に抱きながらアイアン・スイカズラに変化し、彼女を背後から襲った。
すると、彼女は葉月の武器である鋏を受け止め、彼女もブラッド・リリーに変化した。
『やっと、見つけたよ!ねえ、深冬を殺した気分は、どうだった?僕は、最悪な気分だよ!』
葉月は、そう言い放ち蔓をブラッド・リリーに絡ませた。
そして、そのままブラッド・リリーを縛り上げ、動きを封じた。
『ねえ、君が深冬に味あわせた苦しみを、今ここで君に味あわせてあげる』
そういい、ブラッド・リリーの爪に毒針を入れた。
『ああああああああー!!』
ブラッド・リリーは苦しみ叫んだ。いい気味だ、と葉月は毒づく。
『その程度じゃ、深冬の苦しみなんか味わったことにならないよ』
ブラッド・リリーの顎を指でクイッとあげた。
そのまま、ブラッド・リリーの口に百合の毒を調合した薬を口に入れた。
『いたいいたい!!』
ブラッド・リリーは白目を剥いたまま、悶苦しむ。
ブラッド・リリーなんて名乗っているのに、百合の毒に冒されるなんて皮肉だよね、と嘲笑いながらブラッド・リリーにある提案をする。
『このままじゃ、君は毒で死んでしまうね。それは、嫌だよね?』
つづけて、『僕から提案があるんだけど。君が僕に命乞いをして、深冬を殺したことを土下座しながら謝ったら命を助けてあげる。だが、君が謝らなかったら君はこのまま毒に侵されながら僕が君の貞操を奪う。純潔を誇る百合が犯されたら、君はどうなるか知っているだろう?』
案の定、彼女は血の気が引いた顔をしていた。
契約した花の花言葉を裏切る行為をしたら、契約者は契約を反故にしたことになる。
─つまり、契約した花に呪い殺されるのだ。
契約を期限にまで果たせなくても黒き花と成り果て呪いながら生きながらえるが、契約を反故にしたらしたらで花によって呪い殺されるのだ。
どのみち、一度契約したら幸せなんか待っていない。
それでもかまわない、と葉月は思う。
深冬の仇を取れるなら、ほかの些細なことなんか、もうどうでもいい。
葉月は、深冬に報いること以外すべてを捨てたのだ。
『‥ら、ない』
ブラッド・リリーがなにかいっている。
『なんて?』
葉月がそう聞き返すと、ブラッド・リリーはキッと睨みつけ、『あやまらない!!!』と叫んだ。
『は?この期に及んでなにをいっているんだ』
葉月は苛立ち、ブラッド・リリーの首元に鋏を向けたそのとき。
ブラッド・リリーは、葉月の鋏を手に取り、奪い、蔓を切り裂き、そして─葉月の体を真っ二つに切り裂いた。
─ああ、僕も、ここまでか。
深冬、ごめんね。僕は、最後まで役立たずで、本当にごめんね。
そうだ、深冬。覚えてる?
まだ両親がいた頃、僕たちが家族だった頃にね、パパとママに内緒でふたりで秘密基地のスイカズラを吸いにいったよね。
そのときの深冬が、『内緒だよ?』ってウインクしながら深冬が吸っていたスイカズラを僕にくれたよね。
あれが、僕のファーストキスだったんだよって君は知っていた?
─深冬、ずっと君のことが好きだったよ。
葉月は、薄れゆく意識の中で深冬との想い出を振り返っていたのだった。
─気付いたら、葉月は真っ黒に染まったスイカズラに成り果てていた。
『フフフ、今度はスイカズラか。そのほうが綺麗だな、椎名葉月』
そういいながら摘もうとしている黒いローブの女。
やはり、こいつが、この一連の事件の犯人か。許せない、と小百合はいまいましげに見ていた。
『姿を表せ、魔女!』
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