漆黒の影～情報屋になって暗躍します〜

新しい仲間

憂鬱な門出

「グレイ、お前を勘当する。明日にはこの家を出ていけ。」

俺はアールグレイ・トラキア。魔法の名家トラキア家の次男として生まれたが、俺は回復魔法しか使えない。大魔法使いもしくは賢者にまでなると言われ、もてはやされて育てられた。しかし15歳の鑑定の儀で回復魔法しか使えないと分かると、両親の期待を裏切ったと言われ見放された。俺は回復魔法しか使えない代わりに、本来は直せないような怪我でも治る強力な回復魔法を使える。だが、それ言っても信じてくれる人はいなく、ついに今日伯爵家を勘当された。

見送りに来てくれる人は居るはずもなく餞別の金貨30枚とともに家の門をくぐる。

(もはや一周回って清々しいな)

そんな気持ちで家を出た。

(とりあえず冒険者ギルドにでも行くか。働けるとこはそこぐらいしかないしな。)



「すまない。冒険者登録をしたいのだか。」

ギルドに着いたので、冒険者登録をすることにした。

「分かりました。こちらに記入をお願いします。」

名前：アールグレイ
魔力量：100
使用魔法：回復魔法

「はい登録が完了しました。こちらが、冒険者カードです。再発行にはお金がかかるのでなくさないでくださいね。」

冒険者登録が無事に終わったので良かったが、俺は戦えない。俺には仲間が必要だ。だが、回復魔法しか使えない俺を入れてくれるパーティなんてないだろう。普通、どのパーティもポーションを使う。ポーションはそれなりに手ごろな価格で手に入るため、わざわざ人を雇おうなんて考えるやつはいない。なら、俺がどうやってパーティを組むか。そう、奴隷を買うのだ。それくらいしか出来ることはない。

（そうと決まれば早速奴隷商館にいこう。）

途中の屋台で串焼きを買いながら奴隷商館に向かう。ちなみにこの国の通貨は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、光金貨、虹金貨だ。平民は一生の間、光金貨以上を目にすることはないだろう。まあそれは置いといて。
奴隷商館に着いた。

「いらっしゃいませ。担当の者が参りますので、しばらくお待ちください。」

そう言われ対応室へ通された。しばらく待つと、扉が開いた。

「お待たせいたしました。私、当商館のオーナー、チャールズと申します。早速ですがお客様、本日はどのような奴隷をお探しですか？」

「戦闘が出来る奴隷を探している。冒険者として働けるものが良いな。」

「かしこまりました。お連れしますので少々お待ちください。」

それから何人か奴隷が連れてこられたが俺が欲しいような奴隷はいなかった。

「他にはいないのか？」

「いるにはいるのですが....。エリスという名前なのですが、病気にかかっておりまして。なんでも王都で有名な治癒師でも治せなかったとか。というわけであまりお勧めできません。」

「...とりあえず見せてくれるか？」

「ですが....。わかりました。商品を連れて参ります。見た目が酷いので気分を害されても責任は負いかねますよ。」

「分かった。」

連れてこられたのは金髪碧眼エルフの美女。

（ふむ、エルフか。エルフの使う精霊魔法は便利だな。病気も俺の魔法なら治せるだろうし買うのは有りだ。）

「おいお前、魔法は使えるか？」

「はい。使えます。」

しばらく悩んだ結果。この奴隷を買うことに決めた。

「よし、こいつをもらおう。」

「本当によろしいのですか？購入された後は返却できませんが。」

「ああ、大丈夫だ。」

「分かりました。値段の方は病気という事で安くしておきます。金貨20枚でどうでしょう？」

「分かった。それでいい。」

こうして奴隷を買った俺は初の仲間を得た。その後、宿をとり部屋に着いたところで俺は口を開く。

「いいか、エリス。今から俺の魔法でお前を治す。体の力を抜け。」

「魔法でですか？失礼ですがそれは不可能なのでは？」

エリスは怪訝な顔な顔をして尋ねる。そらそうだ。有名な治癒師でも直せなかった病気をいきなり治すなんて、ふつう怪しいやつか頭のおかしい奴だと思われても仕方がない。何をされるか不安なのだろう。まあ、エリスは奴隷という身分で逆らえないからどうしようもないが...。

「いや、俺の魔法は特別なんだ。実際にやってみたほうが早いだろう。」


「いくぞ」


「うっッッ...。」

瞬間、部屋中が眩い光で満たされた。

「…う、嘘。体が軽くなってる…。」

(ほ、本当に治ったの!?どんなすごい治癒師でも直せなかったのに…)

「これでわかったか？お前にはこれから働いてもらう。女将が持ってきた飯を食ったら、今日はもう休め。」

「ご飯まで頂けるのですか？」

「死なれると困るからな。」

「有難うございます。病気まで治していただいて...。私エリス、この命が尽きるまで誠心誠意使えてまいります。」

「当たり前だろう。お前は俺の奴隷なんだ。」

まあ病気が治って何よりだ。これでパーティが組めるな。


こうして俺の冒険者生活は始まった。