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49話

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 森を抜けると人気のない丘の向こうに風で煽られたテントがバタバタと音を出していた。

「おい、誰かいないか!」

 何度か声を掛けるが返事はなくテントの中にも人影はない。念のため辺りに危険がないか確認し遠くで待機させていたティーナたちを呼ぶ。

「見た感じ襲われた形跡はない。物資の少なさからみても長居する気はなかったようだ」

「お兄様たちはなぜわざわざこんな遠くへ来たのでしょうか?」

「憶測だが何かを追ってきたようにもみえる。アンジェロ、匂いはまだ残ってるか?」

 アンジェロは辺りを調べるが首を振る。

「そうか……匂いはここで途切れているらしい。何か手がかりになるものを探そう」

 手分けして探しているとティーナが小さな丸い箱を持ってきた。

「リッツさん、これなんかどうでしょうか」

 中を開けると蝋のような物が入っている。

「樹木の油を固めたもので鎧の錆止めや艶を出したりするために使うものなんです。お兄様が鎧の手入れでよく使用していましたので、もしかすると追えるんじゃないかと思って」

「アンジェロ、この匂いを辿れそうか?」

 匂いを嗅いだアンジェロは鼻をすんすんさせながら進むとこちらを振り返った。

「ワン!」

「よし、先に進んでみよう」

 アンジェロの横を走りながら山頂付近の森を進むと一瞬だけキラリと何かが反射する。

「アンジェロ、ストップ! ……今、何かが見えた」

「魔物でしょうか……?」

「わからない、念のため二人はアンジェロに乗ったままでいてくれ」

 俺は先ほど目についた場所へ向かう。

「――お、おい!?」

 目の前で倒れていた兵に声をかけるがすでに事切れている。手に持った武器は欠けており、鎧には大きな傷があった。

 大型の魔物か? それにしては争った形跡が少なすぎる……。

 万が一に備え俺は足早に戻った。

「リッツさん、どうでした?」

「兵を見つけたがすでに手遅れだった。見た感じ魔物に襲われたみたいだったからここからは更に用心しよう。アンジェロ、少しでも何か気配を感じたら止まってくれ」

「ワフッ」

 できる限り視界のいい場所を進み、洞窟が見えてくるとアンジェロが止まる。

「あそこか……ん? これは」

 地面をみると点々とした赤黒いものが洞窟まで続いていた。

「――お兄様、まさか……!」

「俺が見てくる、だがここも安全とは言えない。すぐに逃げられるようアンジェロからは降りないでくれ。ニエ、ティーナのこと頼んだぞ」

「リッツ様もお気をつけて」

 洞窟へ入ると座り込む人影を見つける。

「……だ、誰だ!?」

「レブラント家から捜索を頼まれてきた、君がティーナの兄貴か?」

 明かりが残る方へ歩いてきた男は立派な鎧を着ていたが、片腕だけはボロボロになり肉腫のようなものが生えていた。
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