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128話 ミレイユサイド
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【ブレーオア】の城内地下、その奥には重罪人が処刑される日を待つ専用の牢がある。
本来であれば判決が下って三日も待たない内に刑が執行されるため、常に空き部屋となっているのが常識だったが、アルフレッドが入れられてからすでに一月以上が経とうとしていた。
「来るとは思ったが少し早い気もするな」
「アル、知ってることを全部話しなさい」
「そう急ぐこともないだろう。聖者は……アイツはどうなった?」
「あなたが他人を気に掛けるなんてどういう風の吹き回し?」
「…………」
「まぁいいわ。彼は今頃【カルサス】の王様とゆっくりお茶でもしてるんじゃないかしら」
「どういうことだ」
「言葉通りの意味よ。若い者同士、気が合うのかもしれないわね」
「まさか【カルサス】の王は【エナミナル】に恨みがあったというのか……。俺の目も曇ったもんだな」
「うちの弟子が問題ばかり持ち込むから代わりに話し相手になってくれてるのよ。あの子、妹の前ではあれだけどあの年でかなり頭がキレるでしょ」
「そんな夢物語を聞きたいんじゃない。話す気がないのであれば俺もお前に教えることは何もないぞ」
「あら、私がそんな面倒なことをするとでも思ってるの?」
「…………どうやら俺の知らないことがあったらしいな」
ミレイユからみてもアルフレッドが持つ先見の明は目を見張るものがある。
しかし、それを以てしてもリッツの行動は読めないだろう。
あの村で生き残りがいたということ事態、アルフレッドの人生で数えるほどしかないミスの一つなのだ。
「いいわ、教えてあげる。その代わり今度は私に協力しなさい」
「負けた俺に選択の余地はない、好きにしろ」
◇
「ミレイユ様、そろそろお時間です。これ以上は――」
「わかった、すぐに出るわ」
ミレイユが去った後もアルフレッドはしばらく考え込んだまま動かなかった。
――――
「悪いんだけどちょっと寄り道してってもいいかしら」
「それは構いませんが……いったいどちらへ?」
「書庫で確認したいことがあってね。すぐに終わるから待ってて」
いくらミレイユとはいえ城を出た身、本来であれば『ヴェーダ』を捕らえた功績はあっても気軽に罪人と会い、城内を歩き回るなどあってはならない。
それを可能にしたのは『紅蓮の風』がしてきたこれまでの功績とそのカリスマ性にある。
ミレイユたちが出て行ってからというもの、ブレーオア内の犯罪は日に日に増加。
騎士団による王への不信、そして『ヴェーダ』による他国への攻撃、いつ崩れてもおかしくない現状を維持できているのはミレイユがいるからにほかならなかった。
書庫についたミレイユは奥に置いてある石碑をみる。
『いつの日かこの呪縛を解く者が現れることを願わん』
ミレイユは石碑を裏返した。
『神獣に選ばれし者よ、聖域にて決断を下せ。我々はそれを以て答えとする』
(まったく、建前と本音がめちゃくちゃじゃないのよ)
アルフレッドは穢れある世界こそが表の世界であり現世が裏なのだと信じていた。
ならば太古の時代、リヤンがいっていた『アーティファクトを作り混沌の世界を生き抜いた人類』がやってきたことはなんだったのだろう。
「……考えても仕方ないわね」
本来であれば判決が下って三日も待たない内に刑が執行されるため、常に空き部屋となっているのが常識だったが、アルフレッドが入れられてからすでに一月以上が経とうとしていた。
「来るとは思ったが少し早い気もするな」
「アル、知ってることを全部話しなさい」
「そう急ぐこともないだろう。聖者は……アイツはどうなった?」
「あなたが他人を気に掛けるなんてどういう風の吹き回し?」
「…………」
「まぁいいわ。彼は今頃【カルサス】の王様とゆっくりお茶でもしてるんじゃないかしら」
「どういうことだ」
「言葉通りの意味よ。若い者同士、気が合うのかもしれないわね」
「まさか【カルサス】の王は【エナミナル】に恨みがあったというのか……。俺の目も曇ったもんだな」
「うちの弟子が問題ばかり持ち込むから代わりに話し相手になってくれてるのよ。あの子、妹の前ではあれだけどあの年でかなり頭がキレるでしょ」
「そんな夢物語を聞きたいんじゃない。話す気がないのであれば俺もお前に教えることは何もないぞ」
「あら、私がそんな面倒なことをするとでも思ってるの?」
「…………どうやら俺の知らないことがあったらしいな」
ミレイユからみてもアルフレッドが持つ先見の明は目を見張るものがある。
しかし、それを以てしてもリッツの行動は読めないだろう。
あの村で生き残りがいたということ事態、アルフレッドの人生で数えるほどしかないミスの一つなのだ。
「いいわ、教えてあげる。その代わり今度は私に協力しなさい」
「負けた俺に選択の余地はない、好きにしろ」
◇
「ミレイユ様、そろそろお時間です。これ以上は――」
「わかった、すぐに出るわ」
ミレイユが去った後もアルフレッドはしばらく考え込んだまま動かなかった。
――――
「悪いんだけどちょっと寄り道してってもいいかしら」
「それは構いませんが……いったいどちらへ?」
「書庫で確認したいことがあってね。すぐに終わるから待ってて」
いくらミレイユとはいえ城を出た身、本来であれば『ヴェーダ』を捕らえた功績はあっても気軽に罪人と会い、城内を歩き回るなどあってはならない。
それを可能にしたのは『紅蓮の風』がしてきたこれまでの功績とそのカリスマ性にある。
ミレイユたちが出て行ってからというもの、ブレーオア内の犯罪は日に日に増加。
騎士団による王への不信、そして『ヴェーダ』による他国への攻撃、いつ崩れてもおかしくない現状を維持できているのはミレイユがいるからにほかならなかった。
書庫についたミレイユは奥に置いてある石碑をみる。
『いつの日かこの呪縛を解く者が現れることを願わん』
ミレイユは石碑を裏返した。
『神獣に選ばれし者よ、聖域にて決断を下せ。我々はそれを以て答えとする』
(まったく、建前と本音がめちゃくちゃじゃないのよ)
アルフレッドは穢れある世界こそが表の世界であり現世が裏なのだと信じていた。
ならば太古の時代、リヤンがいっていた『アーティファクトを作り混沌の世界を生き抜いた人類』がやってきたことはなんだったのだろう。
「……考えても仕方ないわね」
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