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139話

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「なぁニエ、今回ばかりはさすがに――」

「私は大丈夫! ですっ!」

「仕方ない……アンジェロ、ニエを頼むぞ」

「ワン!」

 アルフレッドさんが出した提案、それはエリクシールが普通の草なのであれば、その根か種を探せばいいということだった。

 草の根分けて探せというがその根を探すほど大変なことってないんじゃない……?

 確かに草は種か根が残っていればそこからまた成長するが、穢れが溢れてるなかで探すのは至難の業だろう。

「リッツさん、僕も残ります。自分のしたことくらい終わらせておきたいですから」

「絶対無理はするなよ。もう不死じゃないんだからな」

 せっかく呪いも解けたんだ。

 これからはリヤンと一緒に新しい人生が始まるんだからな。

「それじゃあ――アル、一人でも欠けたらわかってるわね?」

「ちゃんと船まで送り届けるさ」

 これで決まりだな。

 残るのは俺と師匠、ニエとアンジェロにウムトだ。

 ウムトのスキルがあれば探すのも楽になるし師匠がいれば戦力も申し分ない。

「リッツさん、絶対帰ってきてくださいね……」

「もちろんだ。ルルのこと頼んだぞ」

 ティーナたちに別れを告げ俺たちは奥へ戻る。

 すでに穢れが蔓延し始めた泉の中央ではあの男が立っていた。

「また戻ってくるとは死に急ぎたいようですね」

「リッツは右、ウムトは左よ」

 師匠を中心に分散してエリクシールを探す。

 男の相手はその都度すませればいい。

「私を無視するとはいい度胸ですね。ですがこれをみてもまだその調子でいられますか?」

 男の周りを大量の穢れが包み込む。

 もう怪物だなありゃ……。

 その怪物を相手に抑えている師匠もおかしい気がするが黙っておこう……。

「ウムト、そっちはどうだ?」

「こっちはないようです。そちらのほうは?」

「こっちもなしだ」

「リッツ様、アンジェロがエリクシールの気配を見つけたといってます」

「何、本当か?」

「ワフッ」

 アンジェロがみたのは泉の中央だった。

 元々エリクシールの生えていた場所、だがその手前では男が穢れをまき散らし暴れている。

「あそこを通るのは危険すぎるな……」

「リッツ様、大丈夫です! アンジェロにはあれが!」

「……仕方ない。俺も囮になるからアンジェロはその隙にいけ。ニエは危ないからできるだけ下がってくれ」

「アンジェロ頑張るのよ」

「ワン!」

 小さくなったアンジェロは忍び足で敵の横に回り込む。

「師匠、加勢します」

「助かるわ。……リッツ、手を抜いておきなさい」

「えっ? わかりました」

 どういうことだろう……とりあえず言われた通りにしておくか。

「加勢に来たところで、不死である私を相手にどう戦うおつもりですか」

「お前だって勝てない相手にどうするつもりだよ」

 一応建前だけでも意気込んでおかないとな。

 アンジェロは無事に通過できたみたいだ。

「おや、気づいておりませんか? 私の力は穢れと共に上がり続けるのです。すぐにあなた方を越えますよ」

「だったらその前に止めてやる!」

 よし、あとはほどほどに攻撃をしよう。

 よくみたら師匠も当たる直前に攻撃を緩めている。

 何度か死闘っぽいふりを続けているとアンジェロが地面を掘り出す。

 初めてあったときと同じで相変わらずの勢いだ。

「さぁそろそろ終わりも近づいてきたようですね!」

「くっ、なんて力だー」

「ぷっ……」

 師匠、口元を必死に隠してますけどこれくらい我慢してください。

 男の背後ではアンジェロが何かを見つけ口にくわえる。

 ウムトに目をやるとアンジェロのくわえた物を確認して頷いた。

「師匠、どうやら根がみつかったみたいです。でもこれからどうするんですか?」

「多分だけどエリクシールは穢れを栄養にしていたと思うの。あなたのスキルで根から成長を促せば元に戻るんじゃないかしら」

「確かに一理ありますね。やるだけやってみます」

「作戦会議は終わりましたか? それじゃあ死んでください!」

 この程度の攻撃なら俺でも余裕だ。

 わざと食らったふりをしてあっちにいこう。

「ぐわぁー」

「リッツ! よくも……!」

「無能な弟子を持ったおかげであなたも苦労しましたね」

「……なんだと?」

 師匠ストップ!

 もう少し時間を稼いで!!

 必死にジェスチャーで合図すると察したのか師匠は深呼吸した。

「これがエリクシールの根か、すぐに植えてみよう」

 俺が植えた草は成長促進の効果がでる。

 だが何も変化は起きなかった。

「ダメみたいだな……。ウムト、何か方法はないか」

「リッツさん、どうやら根には霊水が必要みたいです」

「霊水って……」

 瀕死になれって、そんな役誰かにさせるわけにもいかない。

 仕方ない、ここは一度瀕死経験のある俺がやるか。

「リッツ様、私がやりますよ」

「ニエ……ダメだ。危険すぎる」

「私でも役に立てるはずですから。それに、リッツ様は死に際でも泣きませんからね!」

「いや、そこはなんとか――お、おい待て!」

 ニエは振り返ることなく男の前に立つ。

「私が相手です!」

「古の民か、何を企んでるか知りませんが消えてもらいましょう」

「待てニエ! 下がれ!」

 男が放った穢れがニエに当たる寸前、人影が横切り穢れを打ち消した。
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